私は時間を無駄にするのが大嫌いな性格だ。
今日も陽は昇り、沈んで行く。
人生はたった80年しかない、私たちが人生を楽しめる時間はせいぜい4,000週間くらいだ。
私が私でいられる時間はとても限られている。
残りの人生、何をして楽しもうか。
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【丼ぶりと定食】
あなたは今、お腹が空いている。
食堂に入り、メニューを開くと丼ぶりと定食が並んでいる。
みなさんはどちらを選ぶだろうか?
定食を注文すると、ご飯と味噌汁、お豆腐、漬物、そしてサバの塩焼きや焼肉がお盆に乗って運ばれてくる。なかなか豪華な見た目だ。
まず、あなたは少しお茶を飲んで箸を持つ、おっとお豆腐に醤油をかけようか。
そしたら行儀よく茶椀を持っておかずをつかみ、箸を移動して口に入れる。
おいしい、いい味だ。そしてあなたはすかさず箸を移動してご飯をつかむ。
ご飯をつかんだら、また箸を移動して口に入れる。
マジでどうでもいい話だが、定食を頼むとやたらと無駄が多い...笑
箸を移動させておかずをつかむのに1秒、箸を移動させて口に戻すのに1秒。
箸を移動させてご飯をつかむのにさらに1秒、箸を移動させて口に戻すのにさらに1秒。
腕を動かして食べ物を取るたびに箸を移動させるのが面倒だ。
一方で丼ぶりはどうだろう?
丼ぶりは文字通り、ご飯の上におかずが乗っていて効率的だ。
箸をいちいち移動させずに、一度におかずとご飯を同時に食べることができるからだ。
何と合理的な食べ方だろうか、私は迷わず丼ぶりを選ぶ。
昔、お金がない学生の頃、本当は定食が食べたいのに、丼ぶりとの差額わずか50円がもったいなくて食べることができなかった。
社会人になって仕事をするようになって、今度は箸を移動する時間がもったいなくて、私は結局丼ぶりを食べるという選択肢に至った。
1秒でも早く食べ終えて、さっさと仕事に戻りたいのだ。
今でも定食をゆっくり食べている人を見ると、優雅な人生だなぁと羨ましくなる。
きっと、お金も時間もゆったりとした感覚で楽しめる人なのだろう。
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【超効率的仕事術】
中学生か高校生くらいだったと思う。
初めて買ったパソコンがIBM社のThink Padだった。今は中国のLenovo社にブランドごと売却されてしまったが、私はThink Pad一筋で、今でもノートPCもデスクトップPCも同メーカーの商品を使い続けている。
Think Padのいいところは人差し指で真ん中の赤いボタンをマウス代わりに使えるので、いちいち右手をマウスに持ち替えてスクロールする手間が省けるところだ。
右手をマウスに持ち替えるのに1秒、キーボードに戻るのに1秒。
ノートPCはともかく、デスクトップPCで仕事をするときは、わざわざスクロールのたびに右手をマウスに持ち替える必要があるため、時間効率が非常に悪い。
その点、Think Padの赤いボタンは効率的で、私にとってはなくてはならない存在なのだ。
1分1秒を争うビジネスの世界、資本主義は「より早く!」「より遠くへ!」が求められるシビアな世界だ。
私が1日でもっとも長くいる場所はパソコンデスクの前であり、キーボードは私にとって最も長い時間を過ごすパートナーである。
したがって、最も効率のよい相棒を選ぶのは当然のことである。
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【漁師とコンサルタント】
人生にとって最も大切なものは時間である。
お金は失っても取り戻せるが、時間は一度失ったら取り戻すことはできない。
その意味で、私は時間の金持ち、時間の貧乏という概念があっても良いと思う。
仕事に追われれば追われるほど、何か大切なものを見失ってしまうような気がする。
『漁師とコンサルタント』という、何とも面白いジョークがある。
資本主義を強烈に皮肉った話でとても面白い。
メキシコの海岸沿いの小さな村に、MBAをもつアメリカのコンサルタントが訪れた。ある漁師の船を見ると活きのいい魚が獲れている。***
コンサルタントは聞いた。「いい魚ですね。漁にはどのくらいの時間かかるのですか?」
「そうだな、数時間ってとこだな。」
「まだ日は高いのに、こんなに早く帰ってどうするのですか?」
「妻とのんびりするよ。一緒にシエスタを楽しみ、午後にはギターを弾きながら子供と戯れ、夕暮れにはワインを傾けながら妻と会話を楽しみ、それで、寝ちまうよ。」
それを聞いてコンサルタントはさらに質問をした。「なぜもう少し頑張って漁をしないのですか?」
漁師は聞き返した。「どうして?」と。
「もっと漁をすれば、もっと魚が釣れる。それを売れば、もっと多くの金が手に入り、大きな船が買える。そしたら人を雇って、もっと大きな利益がでる。」
「それで?」と漁師は聴く。
コンサルタントは答える。「次は都市のレストランに直接納入しよう。さらに大きな利益がうまれる。そうしたら、この小さな村から出て、メキシコシティに行く。その後はニューヨークに行って、企業組織を運営すればいいんだよ。」
「そのあとはどうするんだ?」漁師はさらに聞いた。
コンサルタントは満面の笑みでこう答えた。「そこからが最高だ。企業をIPOさせて巨万の富を手に入れるんだ。」
「巨万の富か。それで、そのあとはどうするんだい?」と漁師は最後に質問した。
「そしたら悠々とリタイヤさ。小さな海辺の町に引っ越し、家族とのんびりシエスタを楽しみ、午後にはギターを弾きながら子供と戯れ、夕暮れにはワインを傾けながら妻と会話を楽しむ。のんびりした生活を送れるのさ。」
漁師はため息をつき、やれやれ、という顔で一言を付け加えた。
「・・・・そんな生活なら、もう手に入れているじゃないか。」
『漁師とコンサルタント』より
【効率化のワナ】
丼ぶりと定食のメニューが並んでいれば迷わず丼ぶりを選ぶ、その理由は1秒でも早く食べ終えて、仕事に戻ることだった。
仕事に戻ったら戻ったで、業務を極限まで効率化する。人間がこれまで苦手としてきた継続・反復といった事務作業をすべて自動化すれば仕事の業務効率は飛躍的に向上する。
今まで8時間かかっていた作業を1時間でできれば、8時間労働であれば8倍の仕事をこなせるようになるわけだ。
しかし、実際に私が体験したのは真逆の結果だった。
yudypon@yudypon業務効率化と過剰最適化はかえって仕事を増やす...
2023/01/12 02:59:22
仕事を効率化し、極限まで最適化するとたしかに仕事そのものは減る。
問題はここからで、空いた時間のリソースを使って別の仕事を始めると、かえって仕事が増えることになる。
たしかに、8時間かかる仕事を1時間に短縮できたものの、空いたリソースを使って別の仕事をすると、延々と仕事量が増えてしまうのだ。
これでは収入は増えるが、人生にとって大切なことを失ってしまう。そう、時間だ。
漁師とコンサルタントの話のオチではないが、すでにそれなりに理想とする生活を手に入れている場合、効率化によって空いた時間は、むしろ「無駄」を楽しむことに人生の時間を使ったほうが良い人生になるのだろう。
効率化の本質とは「無駄」を楽しむためのものである、という結論だ。
そう、空いた時間は「無駄」を楽しむために使おう。そのほうが人生は優雅なものになるはずだ。
こうして今日も、Think Padのキーボードを叩きながらブログを更新している。
効率化した時間を使って、今日こそは優雅に定食を食べに行こう。