柱の裏の落書き

ひまつぶしにぶつぶつ書いてみる

破産請負人


うーん、、、困った。

何というか、普段まったくと言っていいほど落ち込まない私だが、よくない法則を見つけてしまったかもしれない。

一般論として、理論的根拠があるわけではないし、なぜかよく当たる経験則のことをアノマリーという。

これは、『ある法則・理論からみて異常であったり、説明できない事象や個体等を指す。科学的常識、原則からは説明できない逸脱、偏差を起こした現象を含む。』とされる(Wikipediaより)

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例えば、株式投資をしたことがある方は「Sell in May, and go away(5月に株を売って市場から離れろ)」という言葉を聞いたことがあるかもしれない。投資家は、夏になるとなぜ株価が下落するのか合理的な説明ができないものの、そういった現象が一定の確率で存在することは確からしい、と一般的には認知されている。

「Sell in May, and go away」というフレーズのあとには「Don't come back until St. Leger day.(9月の第2土曜日である「セント・レジャー・デー」までは株式市場に戻ってくるな)」という言葉が続く。つまりは「9月後半になったら株式投資を再開せよ」という格言だ。

4月天井で5月に売ってバカンスに出かけ、8月に底をつけて9月に市場に戻って取引を再開する。

みんながその法則を信じれば理屈で証明できないことも一定の規則性を持つようになる、ということだろうか。

知らんけど...。


会話の終わりに「知らんけど」の一言をつけ加えることで、この先起こりうるあらゆる可能性を排除せず、また同時に自身の発言リスクを事前に回避する、ミラクルでハイブリッドの属性を持つこの言葉は、関東出身の人間にとっては標準語では置き換えられない表現である。

***

【統計的異常値】

確率・統計上あり得ないことは、実は現実社会でも時々起こりうる。

案外、無意識のうちに皆さんも気づいていない何かしらの法則や規則性に支配されているかもしれない。

先日、ある起業家の方と食事をしていた時に偶然気づいたことがある。

誰かと食事に行くときはたいてい「ご飯代はいつも誰かにおごってもらっている」と(笑)

我ながら図々しい野郎だ。

富裕層相手に商売をしていると、クライアントは当然ながら非常に裕福な方が多く、言い換えれば私は彼ら/彼女たちにささやかな餌代を恵んでもらいながら生き延びている乞食野郎だともいえる。

クライアント「あ、会計済ませておきました。いったん外に出ましょうか」

さすができる人間はスマートだ、私がトイレに行ってウォシュレットで性的興奮を楽しんでいるスキにひと仕事終わらせてしまうのだから。心の中の本音は「やられた」という気持ちだ、潔く負けた気分になる。

さらにどういうわけか昔から高飛車な女性にモテるというミラクルな先天的才能に恵まれているため、何だかんだでけっこうおごられ体質
(ようはヒモ気質)なのかもしれない。

高飛車な女「あ、会計面倒くさいから一緒に払っておいたよ。」

いい歳こいて、オンナにカネを出させておきながら高飛車な女とは何という無礼な言葉使いだろうか笑

それはそうと、金持ちからの餌代と女性からの献金によって私の体は日々アップデートし続けているのだ—


***

カネは天下のまわりもの

思うに、損得勘定なく誰かのために気持ちよくお金を使える人というのはやはり見ていて恰好がいいものだ。

それはイケメンや美人だとか、小綺麗な服を着ているといった表面的な魅力ではなく、振る舞いそのものがスマートなのだ。

今まで多くのヒトに餌を恵んでもらいながら生き延びて来た超絶ヒモ気質の私が思い出せるかぎりにおいて、彼ら/彼女たちはその後大きく事業や会社を成長させたり、、、ある産業や科学技術、あるいはアートや芸能の世界において、成功への階段を駆け上がって行ったように記憶している。

思うに、彼ら/彼女たちは、お金そのものが人から人へ移動することで初めて商品やサービス、ひいては価値が生まれ、そこから社会全体が豊かになることを無意識のうちによく知っているのだろう。

ここで、私の名誉のために一言だけ言わせてもらおう、私も払う時は払うし、そして、、、それはたいてい割り勘である(笑)。


***

破産請負人

上記は、なぜかわからないし理論的に説明できないが、そのような結果をもたらしたというアノマリーの一例である。

その一方で、逆のパターンを検証してみたところ、なかなかヘビーな結果が出てしまった。

結論先行でいえば、不名誉なことに真逆の結果が出てしまったということだ。


本来であれば「ある」データをもとに、確率・統計を正確に計算し、偶然の発生確率を抑えるためには膨大なサンプルデータ(標本)が必要である。

ただし、さすがに私も数千人、数万人と食事に行った経験はないので、私のデスクの引き出しにある名刺を適当に選んで、さらに顧客データベースと併せてランダムに150人程度を抽出してみた。その中で過去10年以内に一緒に食事をしたのは92人。私は自分を引きこもりニートだとばかり思っていたが、数えてみるとリアルでお会いしている方は想像以上に多い。

なお、ここでは食事に行った回数や金額は問わないものとし、シンプルに私が誰かに何かをおごったと記憶している人だけを抽出した。

マックでバリューセットをおごった人、吉野家で牛丼をおごった人から超高級料理や、ひいてはカジノの掛け金をおごった人まで様々である(どうでもいいが、我ながら驚異的な記憶力である)。

ここで唯一ラッキーなのは、使用したサンプルデータが一般人ではなく、事業家や著名人など自分が表に出て生計を立てている方々ばかりなので、ネットでググれば動向がわかるし、その後どうなったのか追跡がしやすいことだ。

結果、私がおごった人数は22人、うち15人がその後3年以内に、19人がその後4年以内に経済破綻や何等かの精神的不調をきたしていたことがわかった(うち特定できなかった方が2人)。

15/22*100=68%

19/22*100=86%

さすがに100%ではないが、それでもかなりの高確率ではないだろうか。

もっとも、これはサンプル数が絶対的に少ないし、たまたま偶然が重なった結果かもしれない。

これはある意味で私と食事に行くことは究極の丁半博打に近く、それは正規分布でいえば必ず異常値が出る特異的なゲームであるともいえる。

イメージとしてはパチンコ玉を上から落とすと、必ず、両端のどちらかに玉に落ちてしまうようなもので、中心や平均という概念が存在しない。

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あくまでも仮説にすぎないが、

X: 私にご飯をおごった人は、その後成功した。
Y: 私が飯をおごった人は、その後破綻した。

もし彼ら/彼女たちの成功と失敗の原因が私にあるとしたら、私は成功請負人である一方、破産請負人という不名誉な烙印を押されてしまうことになる。

今度から食事に行った人たちに、「私に
ご飯をおごればあなたは成功するでしょう、そうでないとあなたは4年以内にかなりの確率で破綻します」という何だか新興宗教の教祖のような仕事ができそうな勢いだ(笑)。これはこれで一生食うのに困らない人生かもしれない。

これを言ってしまうと、なんだか食事の最中におごってくださいと言っているように聞こえてしまうので、さすがに私の人間性が問われるだろう。

言ったら言ったで相手に会計を払わせるプレッシャーを与えてしまうだろうし、言わなければ言わなかったで、「なぜそれを先に教えてくれなかったのだ」と後で攻められてしまうかもしれない。どちらに転んでも、私にとっては食事中にこの話題を出すのは不利でしかなく、この心理的な
駆け引きは難しい

そもそも食事中にポーカーゲームで探り合いはしたくないし、純粋に食事を楽しみたいではないか。

いちおう、念のために補足しておくと、複数回食事に行って交互に出しあったり割り勘をしていた人たちは可もなく不可もなくという結果だった。

うーん、謎だ。この違いは何なのだろうか?

きっと、これは私が原因と結果をもたらしたわけではなくて、成功する人は成功するし、そうでない人はそうでない運命にあったということなのだろう。

確率や統計は学問として非常に面白いが、どのデータを選ぶのかによって結果は異なるし、そもそもデータが雑すぎると正しい結果が反映されているかも不明確だし、どの部分を切り取って見せるかによっていくらでもデータを改ざんすることができるという問題点もある。


これ以上深堀りしても、結局のところ因果関係がよくわからない。

たまごが先か、ニワトリが先か、という禅問答から抜け出せなくなりそうだ。


ただし、大事なことを見落としている。この説明でいくとひとつだけ究極の疑問が残る。

まだ検証していないことがひとつ残っている。

解明しよう。


私は独りでいるときは自分の食事代は自分におごってもらう。

何とも変な日本語だが、ようは自分の食事代は自分で払う。

ただ、月末になると毎月
毎月生活費が足りずにカツカツになる。

これが起こる理由は明確で理論的に説明が可能だ。

「毎月、このくらい残しておけば次の給料日までは持つだろうな」、私は毎月20日くらいになると残っているお金を全額投資にまわしてしまう。

これは非常にいい習慣だ、
15年くらい続けていたらたしかに一定以上に総資産は雪だるま式に増えた。やはり複利の効果は絶大だ。

一方で、毎月、月末になるとお金がすっからかんになる。
マジで社員に頭を下げてお金を借りることもある。。。笑

これはたぶん上記のアノマリーではなく、それはおそらく私の習慣そのものに原因があるのだろうけど。

***

おそらく誰かとの食事で、私が相手を破産させないための最良の方法は割り勘であり、かつ私がどうしても相手におごってあげたい時は、相手から少額だけ出してもらうようなやり方をするのが良いのだろうか。

もしくは、私が事前にこのブログのリンクを相手にチャットして読んでもらうのが良いのか。

まぁ、いずれにせよ私はご飯を食べさせてもらう代わりに彼ら/彼女たちにとって有益な情報を提供したり、できる範囲で仕事を手伝うなど、埋め合わせをして帳尻を合わせたほうが良いのかもしれない。

このもどかしい気持ちを匿名ブログにブツブツ書いている私の心理状況をぜひお察しいただければ幸いだ笑


最後に、、、

この解決策を考えてくれたあなたに、

私が謝礼としてお腹いっぱいご飯をご馳走します。

フフフ。

プロレタリア2.0


いたずら好きのトム・ソーヤ少年は、ある夏の日、母親代わりのポリーおばさんから罰として課せられた命令で塀のペンキ塗りをしなければならないことになった。

その塀は長さがなんと30メートル近くもあって、子ども一人で塗るのは大変な重労働だ。夏の盛りだというのに河に泳ぎには行けず、1日中、トムは炎天下で汗水垂らしてハケを動かし続けなければならない。

そこへ友だちがやってくると、トムは一計を案じてペンキ塗りがいかにも楽しい仕事であるかのように振る舞い、もったいらしくハケを運び、一歩下がってはその成果を眺め、仕事に集中しているふりをした。

それを見ていた友人たちも次第に興味を惹かれ、ついにたまらなくなって声をかける。

「おいトム、僕にも少しやらせてくれないか?」

トムはいろいろともったいをつけながら、ペンキ塗りがいかに難しい仕事であることを説明すると、友人たちはますますその仕事がしたくなって、ついにはボールやリンゴをあげる代わりに仕事をさせてくれないかと頼み込む。

トムはしぶしぶと仕事を代わり、友人たちは喜び勇んでペンキ塗りを始める。

こうして、トムは通りがかる友人を捕まえてはペンキ塗りの仕事に引き込み、仕事をさせてあげた代わりにみんなが大事にしているおもちゃのたぐいをせしめる。


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たしかに、ペンキ塗りはそれが強制された仕事でなく自発的にする仕事であれば、とてもやりがいのある仕事だろう。

ウィリアム・モリスの言う「心身の楽しい活動」としての仕事や、カール・マルクスの言う「第一の生命の欲求」としての労働は、実は私たちの誰もが一度は経験したことがあるに違いない。

だからこそ、私たちはこのストーリーにどこか共感を覚えるのだ。

***

【疎外された労働からの解放】

冒頭のトム・ソーヤのペンキ塗りの話では、少年たちは、大切にしていた私有財産をトムに支払ったうえで、労働する権利を与えられる。

これは私たちがよく知っている、労働の対価として報酬を得る資本主義制度とは完全に真逆の原理だ。

労働がひとたび交換価値(報酬)に置き換えられると、それは疎外された労働となってしまい、そういう世界では「第一の生命の欲求」としての労働は存在することができない。

かつてマルクスが描いたユートピアは、交換価値の存在しない世界であり、したがって、交換価値の媒介となる貨幣も、それが流通する市場も存在しない世界である。

「ここでは、生産物に支出された労働がその生産物の価値として、すなわちその生産物に備わった物的特性として現れることもない」

カール・マルクス『ゴータ綱領批判』


ここでいう、「生産物の価値」とは、生産物の交換価値のことであって、交換価値がなくなれば、ものを交換しようにも交換することができない。というよりも、市場における交換そのものがなくなれば、交換価値という概念そのものが消滅することになる。

労働の疎外論をもとに考えると、疎外された労働には経済的側面と心理的側面とに分けられる。

経済的側面とは「それが搾取された労働であること」を意味し、心理的側面とは「労働に充実感や幸福感を感ずることができない労働であること」を意味する。

存在こそが意識を規定するという唯物論の支配する世界では、心理的側面は経済的側面によって規定され、後者を変えないかぎり、前者も変わらないというのがマルクスの主張だ。

この理屈で言えば、資本主義経済においてはすべての労働者は疎外感から解放されないということにならざるを得ないだろう。

しかしながら、現代の資本主義社会、特にここ数年間においてはその原則が当てはまらなくなってきているように思う。そのような疎外された労働が必然的に疎外感を生むかどうかは甚だ疑問だからだ。

例えばYoutuber、TickTocker、オンラインサロン経営者などなど、最近こういった新しい業種の人と話す機会が増えたように思う。ひと昔前はこのような職業は存在していなかったし、私の理解が追いつけない職業で成功した起業家は他にもどんどん出てくる。

こうした新しいタイプの起業家たちと話していると、自然と私も時代のトレンドを把握できるし、何よりビジネスモデルが刺激的だ。
ら/彼女たちに話を聞いてみると、ファンに仕事をさせて、おまけにお金までせしめるらしい(笑)

特にオンラインサロンはサブスク課金型(毎月会費が入ってくるような仕組み)なので、顧客
は会費を支払う代わりに、仕事も引き受けてくれるのだ。これは一種のブランドマーケティングの成功例だが、ファンはその人(有名人・著名人)と一緒に仕事をすること自体に価値を見出し、その人の仕事に携われることに喜びを感じるのだという。

まさにトム・ソーヤのペンキ塗りの発想と一緒で、労働する権利が一種の商品価値を持っており、消費者参加型ビジネスが見事に成立している点が非常に興味深い。

このように現代では、労働の意味するところが変わってきているように思う。また、それに伴い、「お金」や「賃金」、ひいては「働き方」そのものに対する価値観も変わってきているのではないだろうか。


***

【お金の価値は確実に低下している】

伝統的な経済学の考え方に基づけば、本来お金とは「交換価値」そのものから始まった。

お金の対価として商品(有形)やサービス(無形財)を交換する世の中では、お金がなければ何も手に入らないし、何もできないのが当然だった。だから欲しいものがあれば、私たちはお金を増やすしか選択肢がなかった。

ところが、シェアリング・エコノミー(共有経済)の普及により、今はそこまで多くのお金がなくたって、商品やサービスはひと昔前と比べれば手に入れやすくなったし、それは言い換えれば、交換価値を独占していたはずのお金は、次第にその地位が低下してきたともいえる。

カーシェアリングサービスを使えば、私たちは自分で車を所有することなく、使いたい時に誰かが駐車場に停めてある車を時間単位で共有することができる。GrabUberなどの配車サービスのアプリを使えば1クリックで車を呼び出して、そのまま指定した目的地まで運んでくれる。

あなたの住んでいる住居だってルームシェアハウスに引っ越せば、独り暮らしをするよりも家賃をずっと安く抑えられるだろう。

ちょっと背伸びをしてブラフ(ハッタリ)をかましたい時は、パーティーに行く前に高そうなブランド品のバッグを借りて、後でこっそりと返却することだってできる。

友人と一緒に旅行に行くときは、AirBnBのアプリで豪華な別荘を予約すればいい。もはやリゾート会員権は時代遅れだ。たとえば120万円する豪邸だって、友人5人で予約すれば一人4万円で王様気分になれる、あとはInstagramFacebookリア充してますよというアピール写真を投稿すれば作業完了だ14万円の宿泊費が高いか安いかは人によるが、ちょっと贅沢すれば届く範囲ではある。

ひと昔前、私たちは「カネを稼ぎ、おカネを貯めて、モノを買って所有する」ことが常識であった。一方で、現在私たちが暮らしている社会は、「必要なときにモノを借りて、不要になったら返却する」という、いわば間接所有の価値観に移行しつつあるように思う。

これを会計学の概念で表せば、固定費(モノを買って所有)から変動費(モノを借りて不要になったら返す)へバランスシートの大幅シフトが起こっているということになるだろう。

このように20世紀がモノを所有する「独占の時代」だったと定義するならば、今私たちが生きている21世紀は「共有の時代」と言えるのかもしれない。

必要なものは必要な時に不要な人から手に入れる、そして不要になったら返すか、次に必要としている人に譲渡する。それが現代社会のスマートな生き方だ。日本のサービスでいえばメルカリやヤフオクがこれに当てはまるだろう。

かつてはお金がある人のところに情報が集まり、権力が集中していた。中世ヨーロッパであれば生活の中心はいつも教会だったし、中央集権的な象徴である教会は絶対的な権力を持っていたはずだ。

それが20世紀になると、教会に変わってマスメディアが権力を持つようになり、私たち一般庶民は彼らの印象操作によって作られた情報を一方的に浴び続け、それを物事の判断基準とするしかなかった。

ところが、21世紀初頭、インターネットの登場により双方向通信のマルチメディア社会が到来、情報が民主化の方向へ進み、お金持ちもそうでない人も大量の情報を瞬時にパソコンやスマホから得られるようになった。

その意味で、インターネットの登場は-誤解を恐れずに言えば-、反体制的な革命だったといえるだろう。それはマスコミ一辺倒による情報の独占状態を切り崩し、情報の民主化を成し遂げたのだから。

今はひと昔前に比べてお金がそれほどいらなくなる時代になりつつあるし、あるいはTwitterInstagramなどSNSのフォロワー数そのものが資産価値を持ちはじめ、それ自体が財産となる時代に移行しつつあるのかもしれない。

それは言い換えれば、情報そのものがお金や権力を集めてくる時代であり、情報自体が面白ければお金や権力がなくてもあっという間にSNSでフォロワーによって拡散する。今やSNSのフォロワーを多く持っている人が一種の信用創造の主体となりつつある。

ダイヤルアップ回線しかなかった時代、パソコンやインターネットがここまで普及し、ひいてはスマホ1台で何でもできる時代が来るなんて誰が想像できただろうか?

お金の価値は私たちが気づかないうちに確実に低下している、それはお金に代わる様々な交換価値が出現したことによるものであり、私たちがそれまで持っていた既存の価値観を揺さぶりつつあるのだ。

***

【堕落する労働者たち~スキルシェアリングがもたらす未来~】

クラウドソーシング(=Crowd(群衆)とSourcing(業務委託)を組み合わせた造語)と同様の概念であるが、「スキルシェアリング」という何とも革新的なサービスがある。これは、個人がもつ専門的な知識や技術、いわゆるスキルをインターネット上で商品のように売買できるサービスのことをいう。

このサービスの本質は個々の持つスキルと時間の切り売りであり、ゆえに「お金を払って、時間を買
」と「時間を売って、お金をもらう人」との間でマッチングが行われ、市場取引が成立する。

例えばあなたはとても忙しいビジネスパーソンだとしよう、11秒でも無駄な作業を減らして本業に集中したいとする。

商品やサービスを開発して利益を上げることに集中したいあなたは、効率を最優先して非生産的な時間を少しでも削減したいと思うはずだ。

デスクの前でひたすら集中して仕事がしたいあなたは、わざわざ外食に行くのが億劫になるかもしれない。
Grab FoodUber Eatsのアプリをダウンロードして、食べたいものを注文しよう。時間が空いているドライバーさんが登録しているから、あなたに代わって食べ物や飲み物を運んでくれるだろう。

さて、あなたは本業に集中しよう。

いちいち売れた商品をリスト化して帳簿を作成するのが面倒くさければ、集計や経理が得意な人を
スキルシェアのマッチングサイトで探せば、すぐに仕事を手伝ってくれる人を見つけ出すことができる。

仮に、商品やサービスの売り方がわからなければ、営業が得意な人をスキルシェアのマッチングサイトで探せば、すぐに販売を手伝ってくれる人を見つけ出すことができる。

さらには、商品やサービスの作り方がわからなければ、商品開発が得意な人をスキルシェアのマッチングサイトで探せば、すぐに開発を手伝ってくれる人を見つけ出すことができる。

スキルシェアは非常に素晴らしいサービスだ、このサービスを有効活用したあなたは負担が減り、少しばかり余裕ができた。あなたには商品やサービスを代わりに作ってくれる人がいて、商品やサービスを代わりに売ってくれる人がいて、集計や経理を代わりにやってくれる人がいて、あなたは管理だけをすればいい。

あなたはやがて管理すらも面倒に感じるようになるかもしれない。今度は管理が得意な人をスキルシェアのマッチングサイトで探せば、すぐにあなたに代わる管理者を見つけ出すことができる。これであなたは自由の身だ。

晴れてあなたは自由な時間とそれなりのお金が入ってくるようになった。スキルシェアを極めようと思えば、努力せずとも無駄な作業をどんどん誰かに任せ、非生産的な時間を短縮できることを遂に発見したのだ!

しかし、ここで思考を停止せずによく考えてみてほしい。この話は何かがおかしい。

このサービスには致命的なパラドクスがあって、「全員が誰かに仕事を委託する」という前提に立つと、どこかのタイミングで誰もが努力をしなくなる日がやってくる。
スキルシェアを極めるということは、裏を返せばスキルを習得する行為や努力を放棄することである。そして結果として私たち人類は退化する。

だってどう考えてもおかしいじゃないか(笑)

はじめから帳簿管理ができず、商品の売り方がわからず、商品の作り方もわからず、自分で工夫して努力することを一切せず、業務管理を放棄するようなビジネスパーソンがたくさんできてしまったら、それは早かれ遅かれ社会全体がおかしくなってしまうだろう。

誰かの力を必要以上に借り過ぎてしまうと、実は全員が誰かに依存するようになり、結果としてその合成期待値はマイナスリターンをもたらす、という恐ろしい結末が待っているようにも思う。

もっとも、私はスキルシェアという概念を否定しているわけではない、むしろ肯定的だ。仕事は一人で小さく初めても、ずっと続けていくと、ある一定の規模に達した後、自分だけではどうにもならなくなるタイミングがやってくる。

その時に一緒に仕事をしてくれる仲間(それは共同経営者や従業員、外注先など)とチームで仕事をしていくのと、やっていることの本質は同じなのだから。ようは本業以外のこと、面倒くさいことを、それを好きな人に任せる。その考え方には賛成だ。

だけど心配ない、もうすぐ人類は働かなくなる生き物(狩りをしない動物)になる日が来るかもしれない。堕落した私たち労働者(プロレタリア)に代わって、機械が代わりに仕事を引き受けてくれる。

...かもしれない。

***

【仕事を奪われる労働者たち~シンギュレーション~】

労働者と機械の関係が根本的に変化する時代、機械とは労働者の生産性を向上させるための道具である。

しかし近い将来、機械が労働者そのものへと変わろうとし、労働者の能力とテクノロジーの進化による人間と機械との逆転現象(シンギュレーション)は2049年頃までに起こると言われている。

機械が代わりに仕事を引き受けてくれるということは、裏を返せば機械が人間から仕事をどんどん奪っていくことを意味する。

機械が人間から仕事をどんどん奪っていくということは、それだけ多くの人間が収入を得られなくなることを意味する。

AIやロボットの能力が人間に近づくにつれ、毎年様々な仕事に就いている人類が順番に収入を失うからだ。


そこに訪れるのは、これまで想像もできなかったような社会の姿であり、人々の生き方ではなかろうか。
21世紀前半の現在に生きる私たち人類は、ちょうどそれに向けた大きな転換期の始まりの時代を生きているのだと考えることができる。

そして国の中に収入を得られない人、収入が減る人の数が大幅に増えればデフレが起こった大不況になる。仕事の消滅は最終的にディストピア(破滅的な未来)をもたらすだろう

一方で、仮に、今この瞬間に完全に同等の能力を持ったロボットが人類と同じだけの数、突然出現した場合、このロボットたちが私たち全員の仕事を代わりに引き受けてくれたとしたら世の中はどうなるだろう?

実は人間の仕事を突然出現したロボットが全部肩代わりしてくれた場合には、世の中は今まで通り問題なく回っていくのだそうだ。国の経済全体を合計した指標であるGDP(国内総生産)も減らず、仕事の肩代わりは最終的にユートピア(理想的な未来)をもたらすだろう。

さて、私たちの前にはどちらの未来がやってくるのだろうか?

***

近年、先進国ではベーシックインカム(Basic Income)をめぐる議論が活発に行われている。ベーシックインカムとは、社会的な地位や所得水準の違い、年齢、性別に関係なく、全ての人に対する所得保障として、「一定金額の現金を支給する制度」のことをいう。

国民国家がこれからも継続するという条件において、-それは財源をどうするかなど複雑な議論はあるにせよ-、この制度が導入された場合、私たちは少なくとも必要最低限の生活が保障され、「労働の放棄」という選択肢が与えられることになる。

・もし働かなくても生活できるとしたら、それでもあなたは働くのか?
・もし働かなくても生活できるとしたら、あなたは何のために働くのか?


いったい労働の対価として得る報酬とは何なのか、また私たちは何のために働くのか、これらの問いに対する回答はみんな違うだろう。

そろそろ、労働することの意味について、私たちは真剣に考える時が来たのかもしれない。

このテーマについては、またいずれ続きを書きたい。

**
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参考: 木原武一 (著)『ぼくたちのマルクス』筑摩書房、1995年)

(参考: 松本大 (著)『お金の正体』宝島社、2019年)

(参考: 鈴木貴博 (著)『仕事消滅~AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること~』講談社+α新書、2017年)

(参考: 堀江貴文 (著)『多動力』幻冬舎、2018年)

米中新冷戦の行方③~令和の役、尖閣防衛にカミカゼは吹くか~


あなたが消火器の訪問販売員だったとしたら、民家や集合住宅を回ってどうやって営業をするだろうか?営業活動には適切な段取り、そして顧客の財布のヒモを緩めるための感動的なシナリオが必要だ。

最も簡単で効率的な方法がマッチポンプ方式だろう、ただしこれはまともな人間がやると、売上成績と倫理観の狭間でもがき苦しみ、やがて精神が崩壊するかもしれない。

まずは近所に放火魔をたくさん配置して治安を悪くし、次に消防服を来て消火器の営業にいく。あなたの仕事は、この消火器がいかにお客様の身の安全を守ってくれる商品であるかを親身になって説明することだ。

ただし、あなたは商品を売って終わりなので、残念ながら優秀なビジネスパーソンとは言えない。そこで、万が一火事が起こった時に、-ある一定の条件さえ満たしていれば-、あなたも消火活動に参加するという特約(特別契約)をオプションとして提案してもいいだろう。これだと消火器を売ったお金(一時収入)だけでなく、毎月定額の保険料(継続収入)が入ってくる。

もっとも、治安が悪くなりすぎて契約した全部の家が本当に燃えてしまうと、加入者全員を助けることができなくなってしまい、サービスを提供できなくなる。また、サービス内容に不満を持って加入者がいなくなってしまうと今度は定額費用の入金が途切れてしまう。

本音を言えば、放火魔には火をつけるふりだけしてもらって、実際には何もしないでもらいたい。そうすれば保険会社には保険料(売上)だけが入ってくるし、保証金(経費)を支払う必要はないので、売り上げがそのまま利益になるのだから。

警察や警備会社は事件があるからこそ職業として存在する。ウィルス・セキュリティー対策ソフト会社はハッカーがいるからこそ商売になる。私たちが住んでいる社会は、絶妙な需要と供給のバランスの上に成り立っているのだ。

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【ビジネスとしての安全保障】

2021年1月、アメリカは共和党のトランプ政権から、民主党のバイデン政権に引き継がれた。政権発足後、東アジアの防衛力強化のために首脳会談ではじめに指名した同盟国、それは日本だった。



バイデン大統領と日本の菅首相はいったいどんな会談をしたのだろうか?菅首相は「日本は防衛費を高め、アジア地域における責任を持つ!」といった趣旨のことを記者会見で話しているのがニュース報道で流れていた。

日本はいつだってアメリカにとっては非常に良いオトモダチ(商売相手)だ。中国、北朝鮮など、日本の周辺には必ずしも民主主義という基本的価値観を共有できない国家がいくつかある。アメリカは安全保障条約(継続課金型の保険商品)によってオトモダチを守らないと信用問題にかかわる。アメリカにとって、太平洋の反対側に位置する日本は地政学的にも営業活動がしやすい場所だといえる。オトモダチの家(日本)の周りには火薬庫があるような状態だから、きっと消火器をたくさん欲しがるに違いない。

覇権国家アメリカの重要な任務は、自らが率先して世界中に火種を蒔き(国どおし敵を作らせ)、そして自らの手で消火活動(治安維持)をすることだ。理想的なのは消火器(ミサイルや航空機)を売りつつ、火事(戦争)が起こる直前で放火(軍事衝突)を止めることが望ましい。こうすれば軍事国家であるアメリカは安定した販売ルートを構築し、継続的に商品(武器)を輸出し、安定収入(機器のメンテナンス費用や安全保障費)が継続課金されるという素晴らしいビジネスモデルが完成する。

つまりアメリカの本質的な仕事は、放火魔の配置と消防署員の配置を一人二役でこなすということだ。ここで、アメリカが日本に武器を売る場合、どのような営業活動が有効かを考えれば、アメリカは中国や北朝鮮を煽りまくり、太平洋周辺の治安を悪化させることだ。当然ながら、中国や北朝鮮もアメリカに対して抗議する。

この時、アメリカにとって太平洋の防波堤となるのが日本だ。日本にとってはたまったものではないが、アメリカにとってはモノを売るための環境整備が整う。あとは契約書を持参し署名をもらえれば契約は成立する。

(ダッテエイギョウシタラゼッタイニショウヒンヲカッテクレルンダカラネ)

時々、ふと思うことがある。この世界は予め計画されたもので、誰かが書いた台本通りに歴史が進んでいると考えたらどんなに気が楽なことだろうか、と。そして、そのシナリオはドキドキするストーリーだけれども、最後はハッピーエンドで終わるという展開だ。ただ、時には台本通りにいかず、筋書のないドラマも存在する(こともあるらしい)。

おそらくバイデン大統領は念を押すように菅首相にこういったのではないか?

「台湾の次は日本の番ですよ、尖閣はおたくの国の領土ですよね?今の状況理解してますか?」

(コンカイハスコシヤリスギタカモシレナイ、ニホンハガンバッテジブンノクニヲマモッテクダサイネ)

***

【平和ボケ国家、日本】

日本人は水と安全は昔から無料(タダ)だと思っている、何とも平和ボケした幸せな人たちだ。私も日本人なのでこの感覚がどういうものかよくわかる。そして幸か不幸か日本人は性善説で物事を考える人が多い(ように感じる)。

今でも日本の田舎を旅行すれば無人販売機という常識では考えられない仕組みがあって、畑に置いてある小さな箱にお金を入れて、好きな野菜を選んで持ち帰ることができる。誰も見ていないし盗もうと思えば簡単に盗める、にも関わらずみんなきちんとお金を入れて帰る。つまり野菜を売る農家の人たちも、野菜を買う人たちも絶対に盗まないというある種双方の究極の信頼関係によってこの仕組みは成り立っている。

私は世界中いろんな国を旅したが、こんなミラクルな仕組みはこれまで見たことがない。お天道様が見てるから、という理由で日本人は悪さをしないのだそうだ。これは日本人が世界に誇れる民度の高さだと言える。

しかし、今回はそれが裏目に出るかもしれない。

中国は核心的利益である「香港」を併合し、間もなく「台湾」の併合を本格的に始めると言われている。「台湾」が終われば、最後に残っているのは「尖閣」だ。これらをうまいこと手中に収められなければ海洋航路が封じられ、一帯一路構想が夢で終わってしまうのだから中国も必死だ。

尖閣諸島位置関係図
出典:海上保安庁「尖閣諸島の位置関係」より

中国から見れば台湾も尖閣も同じように見えるだろう。台湾は何もしなければ早かれ遅かれいずれは中国に併合される。これは尖閣も同じだ、もっと言えば沖縄も同じように映っているだろう。 

地図を見る限り、台湾は日本と明らかに地政学上つながっており、日本の南西に位置する不沈空母の役割を果たす。台湾が陥落すれば尖閣だけでなく、沖縄まで併合される可能性がある。

また、東シナ海を通る台湾海峡は日本にとって重要なシーレーン(海洋航路)だ。台湾海峡が封鎖されたらタンカーが通れない、そうなると石油などのエネルギー資源、食料などを輸入に依存する日本にとっては死活問題となる。中国は台湾を併合できれば、日本を攻略できる最も重要な軍事拠点が手に入ることを意味する。 

だから台湾問題というのは台湾だけの問題ではなくて尖閣、ひいては日本そのものの安全保障問題でもある。台湾から日本の与那国島まで距離にして100km程度しかない、これは対岸の火事ではない。

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出典:東洋経済ONLINE「「逆さ地図」で見る、中国にとって邪魔な日本」より(一部画像修正)

地図にプロットした赤い点は台湾・尖閣周辺の米軍基地がある場所を示している。時計と反対周りに左から韓国の西沢基地、日本の長崎県佐世保基地、日本の沖縄基地、そしてフィリピンのルソン島にあるスービック基地だ。

中国がもし本当に台湾・尖閣を併合しようとしたら、まさかいきなり台湾本土に軍事侵攻してくるとは考えにくい。中国の立場で考えれば、戦略としてアメリカや日本が介入するのを防ぐほうが先だ。もしくは尖閣を先に取ってしまい、軍事拠点化すれば台湾には本土と尖閣の2方向から侵攻できるようになる。尖閣は幸いにも無人島なので、明らかに台湾よりは取りやすいだろう。

どちらが先になったとしても、アメリカの軍事機能を低下させるためには、沖縄基地を先に攻撃したほうが中国にとっては都合がいい。 

韓国は北朝鮮との関係があるので台湾・尖閣に兵を集中できない運命にある。もし南方向に在韓米軍を集中させると韓国本土は北方面の防衛が手薄になるため、バックアタックで北朝鮮が韓国に攻めてくるチャンスを与えてしまうことになる。在韓米軍が去った後、韓国軍だけで北朝鮮からの侵略に対抗できるだけの力があるだろうか。

フィリピンはドゥテルテ大統領が親中派に傾いている。本音はどうだかわからないが、2019年から南シナ海の開発を中国と共同で進める方向で一致しているし、新型コロナウィルスのワクチンも中国の支援を受けなければならない状況にある。本音はどうだかわからないが。

そうなると消去法でアメリカ軍の動きを封じる場合、沖縄もしくは日本の西海岸にある佐世保あたりの空港や軍事施設を破壊してから台湾・尖閣を一気に取りに来ると考えるのが普通だろう。

現に南シナ海を先に取ったのは明らかにアメリカの動きを封じるためだろうし、南シナ海の軍事施設はほぼ完成状態にあり、アメリカの第一列島線の侵入は阻止できるくらいのレベルにまで至っている(南シナ海の軍事施設の完成を急ぐあまり、アメリカ軍の動きを封じるためにコロナウィルスを生物兵器としてばら撒いた、と考えるのは行き過ぎだろうか。偶然にしては、だいぶタイミングが良すぎる)。

(ワクチンヲジゼンニヨウイシトイタカラ、カンセンガカクダイシタラマワリノクニニアゲヨウカナ。キットオトモダチガフエルハズ)

一方で中国としては、たかだか対岸にある台湾を攻略するためだけに、わざわざアメリカや日本を巻き込みたくないという思惑もあり、ここで中国は相反する矛盾に陥る。なにせ、本当に軍事衝突を起こしてしまうと、アメリカは本土攻撃は免れるが、中国は本土から近すぎるため一定の被害が生じることが予想される。

もし中国本土が攻撃されたとなれば、それは中国共産党のメンツにかかわる大問題となる。終身国家主席という前代未聞の地位獲得を目指す習近平政権にとっては大きな痛手となるだろう。

現在、中国は大量の鉄を備蓄しており、間もなく備蓄が完了する見込みだ。戦争には大量の鉄が必要ということを考えると、これは軍事侵攻開始の予兆だともいえる。

***

【日米安全保障条約第5条

2010年、中国の漁船と日本の海上保安庁の巡視船に衝突し、日本では大きなニュースになった。たしかこの事件が、「尖閣」という領土問題を日本人が意識し始めるきっかけになったと記憶している。



日本政府は尖閣諸島を日本固有の領土であると主張している。



中国政府は尖閣諸島を中国固有の領土であると主張している。



私はアメリカと中国をなるべく中立的な立場で比較しているので、政治的な論争には加わらない方針だ。ただし、日本人の立場でいえば、尖閣は当然日本の領土であってほしいと願っている

とはいえ、尖閣諸島は現在無人島であり、日本政府は本気で尖閣諸島を守る気があるのかと疑問ではある。国際社会の常識から考えれば、領有権を主張している無人島があったとして、公務員を済ませたり行政の標識を掲げたりしていないとなると、それはどう考えても実質支配する気がないとみなされるだろう。

私がたまたま知らずにその島を見つけたら、すぐに誰かを移住させ、家や標識を建ててあっという間に実行支配してしまうかもしれない。

(私は海外在住者のため、長いこと日本に住んでいないが)日本人である私がそう思っているくらいだから、アメリカなどの諸外国も同じように、日本政府は一体何を考えているのか不思議でしょうがないだろう。まさに日本の常識は世界の非常識である。

さて、日本から見ればこの家(いちおう日本政府の領土と仮定して)は保険契約に加盟しているらしい。保険の特約(日米安保条約)を見る限り、施政権による実行支配がないと、安全保障サービスの適用対象外になるようだ。施政権とは信託統治において、立法・司法・行政の三権を行使する権限のことをいう。

第五条

 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

外務省の解釈には以下のように書いてある。

第5条

 第5条は、米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である。

 この条文は、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している。

 第5条後段の国連安全保障理事会との関係を定めた規定は、国連憲章上、加盟国による自衛権の行使は、同理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの暫定的な性格のものであり、自衛権の行使に当たって加盟国がとった措置は、直ちに同理事会に報告しなければならないこと(憲章第51条)を念頭に置いたものである。

外務省ウェブサイト「日米安全保障条約(主要規定の解説)」より

赤い部分が保険契約の特例を意味していて、「我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には」というのがアメリカ軍が介入するための条件となっているらしい。

その家(尖閣)の玄関には鍵をかけず、いやむしろドアが開けっぱなしの状態であって、その家には表札もかかっていないし、侵入者を守る防衛柵も設置していない、立ち入り禁止という看板もない。一見すれば簡単に家の中に入れそうではあるが、どう考えてもそんなはずはない。

中国は中国で違った意味で日本を恐れているに違いない。例えが適切かどうかはさておき、隙あらばと狙っている泥棒が家主の様子を伺っている場合を想像してみてほしい。本当に平和ボケして無警戒なのか、もしくは何かの戦術(トラップ)なのか判断ができないからだ。

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有事の際にアメリカ軍は本当に介入するのか?

中国はいざとなったらアメリカが出てくると面倒くさいので、どうするか様子見をしながら併合の機会をうかがっている(さっさと海洋ルートを完成させて気兼ねなく貿易商売をやりたい)。

台湾は親日国家であり、いざとなったらオトモダチの日本が台湾と一緒に戦ってくれると思っているらしい(ボクたちはとても仲の良いオトモダチだから)。

日本は親米国家であり、いざとなったらオトモダチのアメリカが日本の代わりに戦ってくれると思っているらしい(高い保険料を支払っているのだから特約を使う時がきた)。

アメリカは保険会社であり、いざとなったらさすがに自分たちの領土は自分たちで守るに違いないと思っているらしい(保険料を払ってもらってはいるが、さすがに自分の家が火事になったらそりゃあ自分で消火器を使って何とかするだろう)。

イギリスやフランスなどの同盟国は日本と同様、アメリカに高い保険料を支払っており、いざとなったらアメリカは特約に基づいて本当に軍事介入するのかを疑っているらしい(このまま高い保険料を支払い続けてもよいものか様子を見よう)。

アメリカの言い分はこうだ、「日本が台湾を守らない=アメリカが日本を守らないのと同じことである」。

バイデン大統領が就任早々に対面の首脳会談で日本を選んだのは言うまでもなく対中戦略を見据えたものであり、東アジアは日本が中心になって守れ、という強いメッセージであることは間違いないだろう。

(ウリアゲハホシイケドケイヒハハライタクナイ、ダッテマルゴトリエキニナルンダカラネ)

もっともアメリカが台湾や尖閣に介入せずに見捨ててしまうと、今度は他の同盟国との信頼にかかわることになる。アメリカはアメリカで立場が非常に難しく、最前線には出ずに後方支援くらいをするにとどめるのではないだろうか。

いずれにせよ、シグナルを発し続けなければ中国の進行は止められない。

日本はかつてロシアに北方領土を占領され、韓国には竹島を実行支配され、何もできずにいる。また、アメリカは現在のところ、これらについて何のアクションも起こしていない。

そう考えると、尖閣有事が発生しても結局は実行支配されて終わってしまう気がするのは私だけだろうか?

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民主主義の逆用 

中国としてはなるべく武力を行使せずに穏便に「④台湾」と「⑤尖閣」を手中に収めたいと考えている。結局のところ、戦わずして敵に勝つことが最もコストパフォーマンスが良いのだから。

私はいずれ台湾・尖閣が占領されてしまうと考えているが、当面の間はソフトパワーによる軍事侵攻が続くと予想している。それはすなわちサイバー攻撃だ。

21世紀を迎え、世界がグローバルする中で先進国どおしが武力衝突することはイメージしにくい。そうなると、陸・海・空よりも近代的な戦争はサイバー空間が主戦場となるだろう。

たとえばロシアが2004年のソチオリンピック終了直後にクリミア併合に向けて行動を開始したことは記憶に新しい。

ロシアはクリミアを併合するにあたり、選挙という民主主義の仕組みをうまく使った。民主主義は住民選挙によって過半数を取得すれば民意を持って政治を動かすことが可能となる制度だ。ロシアは事前にロシアに投票する住民をクリミアに集結させ、その上で住民投票を行った。ウクライナとロシアどちらにつくのがよいか?という選挙で親ロシアが過半数を取れば、それはすなわち民意によって軍事侵攻せずともクリミアを併合できることになる。

おそらく中国はこの手法を相当研究していると思われる。たとえば沖縄の選挙で圧倒的多数の尖閣放棄を主張する住民を終結させ、その上で住民投票を行ったら、尖閣は軍事侵攻せずに民主主義のルールに基づいて中国領土に併合することができてしまうことになる。

ちなみに中国は台湾に対してこの方法を試したが、自由を奪われた香港のニュースを見た台湾の人たちは当然ながら民主主義を支持する政権を支持し、結果として中国の挑戦は失敗に終わった。中国はサイバー能力のレベルが格段に上がり、その能力は今やアメリカを凌ぐとも言われている。仮に選挙結果をサイバー攻撃で中国有利に書き換えることができたら、と想像するとなんとも恐ろしいことが起こりそうだ。

東京オリンピックが無事に終わり、現在開催中のパラリンピックもまもなく閉会式を迎える。来年2月には北京での冬季オリンピックが控えている。冬季オリンピックが終わった後の中国は何を考えているのだろうか?そして冬季オリンピックは西側諸国のボイコットや中国国内のデルタ株(変異型コロナウィルス)の蔓延で中止が危ぶまれてもいる。冬季オリンピックが中止になった場合、その導火線はさらに短くなるのかもしれない。

中国は核心的利益である「①ウイグル」に対して、「同化政策」「大量虐殺」を行い、「②南シナ海」に対しては「人工島の建設」「フィリピンやベトナムとの衝突」を行い、「③香港」に対してはイギリスの作った「選挙制の形骸化」を行った。残る「④台湾」と「⑤尖閣」に対してはどのような手段で取りにくるのだろうか?

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【令和の役、尖閣防衛にカミカゼは吹くか】

アメリカ軍のシミュレーションによれば、東シナ海有事(令和の役と名付けた)が発生した場合、台湾・尖閣いずれも防衛に失敗するという結果が出ているらしい。世界最強のアメリカ軍でさえ、敵国本土を目の前にした局地戦には戦力的には不利、という結論なのだろう。

(チュウゴクガキケンダトイワナイト、ボウエイヨサンガモラエナインダモン)

日本の歴史を見る限り、国土の西側から大規模な侵略を受けたのはおそらく元(当時の中国)との戦争が初めてのことだろう。元寇と呼ばれるこの出来事は「文永の役」「弘安の役」という二度の襲撃に対し、日本にはカミカゼが吹いて日本が防衛に成功したと伝えられている。

元は三度目の襲来を計画したものの、中国大陸南部での反乱などがあり、日本への襲来は延期となり、さらに総帥であったフビライの関心が国内の平定やベトナム遠征へと関心が大きく変わり、そのうちフビライの死を以て、この計画は完遂せずに終わったという。

カミカゼとはたまたま発生した暴風雨や台風のことを神聖化した表現であり、(時の執権・北条時宗の指揮能力の高さ、鎌倉武士たちの必死の防衛があったことは言うまでもないが)それは外部要因によって日本は救われたとも考えられている。

興味深いのは、当時のフビライが日本侵略と同時に国内での反乱を鎮圧するのにも苦慮していた状況が現在と重なるところだ、もしかしたら国外進出どころではなくなってしまったのかもしれない。現在の中国共産党も、東シナ海への海洋進出を図ると同時に、国内に反乱分子が多すぎて、とうとう第二次文化大革命に乗り出したことからも、当時と状況が重なっているようにも見える。

中国では最近、中国を侮辱する書籍などの出版禁止、台湾歌手の歌を禁止、教科書を改訂し習主席の思想などを取り入れた教育制度への改革など、中国共産党を内部から壊そうとする勢力に対して警戒していると思われる政策を矢継ぎ早に実行している。



真の敵は内側にありということか、社会主義や共産主義の宿命はいつも外からの攻撃ではなく、内側からの裏切りによって終焉する。今回はどういう結末になるのだろうか?

*

アメリカが選択した究極の丁半博打

中国は現在、中国人民元の巨大経済圏を作るべく、一帯一路構想を急ピッチで進めている。そんな中、アメリカが一帯(陸のシルクロード)の要所であるアフガニスタンからの撤退を表明、中国は待ってましたと、ここぞとばかりにアフガニスタンの支援にまわった。

なお、アフガニスタンはイギリス統治、旧ソ連の統治を得てアメリカが統治。誰が試してもうまく統治できない特殊な地域だ。アメリカはこの面倒な地域を中国に押し付けたとも考えられる。

中国は外交慣例上、反政府勢力を認めない方針であり、一方でアフガニスタンを陥落させたタリバン政権は共産主義を認めない方針を取っている。両者が協力関係を築いたのは何とも不思議なめぐり合わせだ。

どう考えても両者のイデオロギーは矛盾に満ちている、どこかで何かが起こりそうな嫌な予感がする。


中国は一帯一路の要所であるアフガニスタンを何とか平和に維持したい思惑があり、タリバン政権をうまいこと内陸部の国境警備隊にしたいと考えているようだ。中国にとってみれば過激派のタリバン政権と敵対するよりも支援にまわったほうが、内陸(一帯)国境付近の治安が維持でき、心置きなく海洋進出(一路)に集中できるからだ。

一方でタリバン政権にとってみれば、支援金という名目で中国からお金がどんどん入ってくるのだから大歓迎というわけだ。万が一、中国に反発する国家があろうものなら直ちに中国はタリバンに警備を外注化し、反発する国家にテロリストを送り込むことだってできるだろう。考えただけでも恐ろしいシナリオだ。

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出典:Wikipedia「アフガニスタン=中国国境」より

しかしその一方で、中国にはタリバンを絶対に敵に回したくないという思惑も見え隠れする。アフガニスタンの北東部(ワハーン回廊)は中国とわずかに国境を接しており、中国側の国境は新疆ウイグルにつながっている。ここはかねてからウイグルへの密輸ルートとして使われているのではないか、という懸念も出ている場所だ。

なお、中国が弾圧している「ウイグル」はイスラム教を信仰しており、タリバン政権も言うまでもなくイスラム教原理主義者の集まりだ。イスラム勢力がこのルートを使って各種の情報交換、物資の密輸などをしていてもおかしくはない。

中国はチャンスと思ってアフガン支援に回っているのか、ピンチと思ってアフガン支援に回っているのかは不明である。中国にとっての最大の恐怖はタリバンが反中勢力にまわってしまうことだ。ウイグル人を弾圧した中国にとって外部からのイスラム過激派の流入は何としても防がなければならない。

ある日突然、タリバンが迫害・弾圧・同化政策に苦しむ同胞(ウイグル民族=イスラム教徒)を救出すべく、ウイグル解放に向けて宣戦布告(ジハード)をしようものなら、中国には西側からイスラム過激派のテロリストたちがウイグルを経由してどんどん国内に流入することになる。中国にとって、この最悪の事態は何としても避けなければならない。

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ツイッターで#中国分裂を調べたところ、すでに削除済だが、何とも物騒な画像が出てきた。。。

もしこんな事態が本当に起きてしまうと、ウイグルは独立を宣言する。そうなると、待ってましたとばかりにチベットにも飛び火し、香港にも飛び火して国内動乱で手が付けられなくなるだろう。これでは1991年のソ連崩壊と同じ運命を辿ることになる。



そうなると中国にとっては内陸部の鎮圧で海洋進出(台湾・尖閣問題)どころではなくなってしまう。このタイミングでバイデン政権が批判を覚悟でアフガニスタンから撤退したのは何故か?と考えるとある仮説が浮かび上がる。

アメリカにとってはタリバン(イスラム過激派)と中国がお互いをつぶし合うのはメリットがある。一方で、情勢を読み間違えれば反中国で協力している同盟国には警備員として多数のイスラム過激派が流入し、同盟国の治安悪化を招いてしまうリスクがある。

アメリカ軍は意図的なのか、それとも撤退を急いでいたために時間がなかったのか、アフガニスタンに大量の最新兵器を残してきており、それらは当然ながらタリバンの手に渡っている。これは諸刃の剣、アメリカにとっては究極の賭けだといえる。

このように、アメリカとタリバンの間に何かの密約があるとすれば、東アジアに位置する日本にとっては、中国の内陸問題が発生すると戦わずして尖閣の防衛ができる。ただし、それはまた別の地域の多大な犠牲の上に成り立つことでもあるのだ。

現在、アメリカ軍のアフガニスタン撤退は不自然なほどに急ピッチで進められている。それは裏を返せば、「それ以外のどこかの地域」に兵力を集中させなければならない事態が水面下で起こっている、ということのシグナルかもしれない。

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究極の経済制裁・ドル決済の停止

もし、アメリカが中国を本気で潰そうとした場合、最後の最後に行使する切り札はドル決済の停止だろう。これは極めて有効な作用がある一方で、強烈な副作用も生じるため、いわば経済の核兵器ともいえる。ちなみにソ連はこれをやられたことで息の根を止められ、崩壊に至ったと言われている。

例えばA国とB国が貿易取引をする場合、必然的に国際決済通貨を介して行われる。いうまでもなく、現在の世界の基軸通貨はアメリカドルである。言い換えれば、「国際決済の大部分はアメリカ国内で、アメリカドル建て」で行われている。

このような国際決済を各国が自国通貨で交換しようとすると、膨大な組み合わせの為替交換が発生し、コストが膨らんでしまう。それは文字通り費用面の手数料でもあり、事務処理の手間でもあり、何しろ交換相手を探すのにも時間がかかる。A国からB国の通貨を直接交換するということは、B国からA国の通貨に同じ金額を交換する相手を探さなければならず、金額が大きな取引をしたい場合、なかなか大変な作業だ。

一方で、基軸通貨の発行国であるアメリカは、すべて自国通貨建てで簡単に実施できる。なぜなら自国通貨がアメリカドル(米ドル)なのだから笑。これは自国通貨が基軸通貨となっているアメリカだけに与えられた特権だ。

どういうことかというと、基軸通貨を使うことを前提とすれば、それぞれの取引で基軸通貨と自国通貨の間の交換を行うだけで済むことになる。

A国の会社からB国の会社への支払いが米ドルで決済される場合、代金は最初にA国の通貨から米ドルに交換された後、今度はA国の取引先銀行からB国の取引先銀行へと支払われる。その際、決済を行う銀行同士が、通常は決済通貨の発行国の銀行口座を介して決済資金の付け替えを行う(これをカバー取引という。当たり前だが、まさか膨大な紙幣をA国からB国に物理的に送りつけるわけではない笑。銀行の決済は電子上のデータでプラスマイナスを調整するだけで完結する)。

つまり、「A国の取引先銀行がアメリカに持っている銀行口座」から「B国の取引先銀行がアメリカに持っている銀行口座」に資金が支払われることで取引が成立する(この役目を果たす銀行をコルレスバンク=中継銀行という)。簡単に言えばA国とB国の取引はアメリカにある銀行内で完結するということだ。

コルレス
出典:Dijima~出島~「海外送金の方法と手数料の比較 | 国際送金の基本的な仕組みを解説」より

このように多くの国際決済は実は米ドルを介して行われている、だからアメリカは基軸通貨であるドルの地位を守るために、そう簡単には覇権を中国に引き渡すことはしたくないのだ。

米ドルを中心とする現在の外国為替市場では毎日相当額の取引が行われているため、取引の板が厚い。「A国の通貨⇒米ドル」「米ドル⇒B国の通貨」、A国とB国の取引は米ドルとの交換相手を見つけるだけでいいため、取引相手を探すのが非常に簡単だ。

アメリカ政府は、アメリカ国内の銀行やその他金融機関の取引情報を厳しく管理している。つまり米ドルを介した国際決済は国内の決済システムを通じて、すべて米国政府に把握されているのだ。つまりドル決済の禁止とは事実上「貿易決済の禁止」と同じ意味を持つことになり、これをやられた瞬間に中国の一帯一路計画は頓挫し、そもそも中国の国内経済と一帯一路経済圏が一瞬で崩壊する。

現在、中国で米ドルに交換できる唯一の場所は香港である。だからこそ、先日の香港基本法の付属文書である半外国制裁法の改正を見送ったのだろう。中国共産党はある致命的な問題を見落としていた。中国人民元は米ドルのペッグ通貨(連動通貨)であり、人民元の信用の屋台骨が米ドルである、ということを。米ドルにとってみれば、人民元はいわばこども銀行券のようなものなのだ。



先日、中国がタリバン政権を支援することを発表したまではいいが、タリバン政権はそもそも国連の経済制裁の対象となっている。万が一、中国の銀行がタリバン政権に支援金を送金をしようものなら、中国の銀行は制裁リストに基づき、ドル決済が禁止されることになるだろう。中国は送金が完了した瞬間に経済制裁を受け、タリバン政権は中国からの支援金を受け取った後、ウイグル解放の資金として活用する。アメリカはここまでのシナリオをセットにしたうえでアフガニスタンからの撤退を決めたのだと思う。これでアメリカにとっては海と陸からの中国挟み撃ち準備が完了する。

なお、中国が一帯一路を急ピッチで西へ西へと進める最大の理由は、中国が独自の経済圏を持っていないことへの焦りでもあるだろう。中国の通貨である人民元は中国共産党によって為替が管理されているため、人民元は国際的な信用がなく、人民元で取引をしたい人よりも米ドルで取引をしたい人のほうが圧倒的に多い。だからといって人民元の管理をやめてしまうと中国はその瞬間に資本主義経済に変わってしまい、中国共産党は存続危機に陥るという二律背反のジレンマに苦しむことになる。

もっとも、アメリカが中国に対して本当にドル決済の禁止をやってしまったら(トランプ政権は実施する準備をしていたらしい)中国崩壊という作用をもたらす一方で副作用が甚大になるだろう。報復として今度は中国が保有している大量のアメリカ国債を売却すれば、金融市場が大混乱に陥り、世界恐慌に発展しかねないからである。そうなると、日本も尖閣どころの話ではなくなる。

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アメリカや日本から見れば、傍若無人に振る舞う中国は何としても弱体化させる必要があると考えている。しかし、その一方で何としても崩壊させないようにする必要があると考えている。中国が強くなりすぎても問題だし、弱くなりすぎてもそれはそれで別の問題を抱えることになる。

世界がグローバル化して経済が密接にリンクしてしまった以上、中国崩壊のシナリオは、当時のソ連のような副作用では済まないだろう。これまで起きたチャイナショックの事例は、比較的小規模なものであったが、それでも世界が風邪をひいたくらいの影響を及ぼした。

ソ連が崩壊した後、覇権争いをしていたライバルのアメリカもどんどん弱体化していった。万が一、中国が崩れるとアメリカや日本も連鎖的に崩れる危険があるということだ。そう考えると、競争には良くも悪くもライバルの存在が必要不可欠ということなのかもしれない。

そうなれば、次に覇権を狙うのは中国を南北から挟み込むロシアかインドか、もしくは、、、かつての覇権国イギリスにとっては思いがけないチャンスが巡ってくることになるかもしれない。

さて、カミカゼはどこに吹くのだろうか?

米中新冷戦の行方②~東シナ海の不沈空母、台湾へ~


中国は来たる2027年に人民解放軍創設100周年を迎える。中国はそれまでに核心的利益をすべて手に入れ、次の世界覇権の地位を確立しようとしている、と言われている。

中国の主張する核心的利益とは全部で5つあり、それは「ウイグル」、「南シナ海」、「香港」、「台湾」、そして「尖閣」だ。現在、香港の陥落が間近に迫っており、まもなく5つのうち、3つは作業完了(ミッション・コンプリート)となる見込みだ。

中国は「香港」を陥落させたら、次はいよいよ残る2つ「台湾」と「尖閣」の奪取に向けて本格的に舵を切るだろう。

 

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【2022年10月に迫る共産党大会】

来年2022年には共産党大会が開催され、このままいけば習近平国家主席は3期目に入る予定だ。

中国共産党は憲法を書き換え、国家主席の任期2期10年を撤廃、さらに国家主席には「七上八下」の不文律があり、68才以上なら退くのが慣例となっている。これらの問題を本当にクリアできてしまうと、習近平氏はいよいよ「終身国家主席」という前代未聞の独裁権力を手に入れることになる。

先日、中国は第二次文化大革命を発動した。これは中国を侮辱する書籍などの出版禁止、台湾歌手の歌を禁止、教科書を改訂し習主席の思想などを取り入れた教育制度への改革など、中国共産党を内部から壊そうとする勢力に対して警戒していると思われる政策を矢継ぎ早に実行している(中国では9月から開始される予定の外国人学校が再開できずに、多くの外国人教師が失業し、社会問題となっていると聞く)。

ここで問題となるのが、終身国家主席に就任するために政治的正当性、つまり圧倒的な実績が必要になる。

来年2022年の2月には北京での冬季オリンピックの開催が予定されているが、これは中国共産党のメンツにかけて必ず成功させてくるだろう。もっとも、新型コロナウィルスのデルタ株が蔓延する中国国内で本当に開催できるかは疑問である。中国はおそらく東京オリンピックが無開催で実施できたことについて、相当オペレーションの研究をしている頃だろう。現に、開催半年前にも関わらず、まだチケットの販売が行われていないことからも明らかだ。

また外部的要因として国外に目を向ければ、アメリカはウイグル自治区での同化政策や大量虐殺を理由に中国をジェノサイド認定しているため、参加をボイコットする可能性が高く、そうなると当然ながらヨーロッパも人権の話になるため、同じく参加をボイコットする可能性が高く、参加国が集まらないという外部的要因で開催ができない可能性が生じる(日本はどうするのだろうか?)※

※ 北京冬季オリンピックが開催できないとなると、次の開催地はアジアの代替候補を探さざるを得なくなる。そうなると、アジアで冬季オリンピックが開催できる国は思いつくかぎり2つしかない。ひとつは韓国の平昌、もうひとつは日本の札幌のどちらかだ(札幌は2030年の開催候補地でもある)。

もし上記のとおり、北京で冬季オリンピックが開催できないとなると、これは中国共産党にとっては大きな打撃を受けることになり、必然的に手柄を確保するためには国外に目を向けざるを得ず、そうなると、残っている最後の切り札(解決策)は「台湾併合」しかないことになる。



ここでもし、台湾併合に成功したら習近平氏は毛沢東や鄧小平を超える終身国家主席にふさわしい人物ということになるだろう。毛沢東は中華人民共和国を建設した際に台湾問題(2つの中国問題、中華人民共和国と中華民国がそれぞれ自分たちが政党な中国であると主張している状態)を解決しないまま中途半端に建国したわけであり、圧倒的な手柄と実績をもとに終身国家主席の座に就くためのお膳立てが整うことになる。

「台湾併合」、それは偉大なる建国の父である毛沢東でさえ成し得なかった前代未聞の快挙となる。



独裁主義は政権内部に独裁者を脅かすだけの対抗勢力が存在しないかぎり、政権はかなり安定することになるが、一方で独裁者個人が死亡した場合はすべてが終了する。 一党独裁制は、その歴史を見る限り、最後には必ず崩壊の道を辿っている。果たして今回はどうだろうか?

***

【2022年11月に迫るアメリカの中間選挙】


昨年の大統領選挙で民主党のジョー・バイデン氏が勝利、共和党のトランプ大統領から政権交代が起こった。

アメリカのメディアがトランプ降ろしを必死に画策し、民主党有利に世論を誘導した最大の原因は思うに、トランプ氏が4年間で一度も公共事業をしなかったからではないかと考えている。アメリカの公共事業とは、もちろん戦争だ。巨大な軍事・防衛産業を擁するアメリカは定期的に戦争を起こし、戦闘機やミサイルを世界に売り捌かないと輸出産業が潤わないという、何とも表現しがたい構造的な問題がある。

9.11以降、アメリカはテロとの戦いにシフトしていったことからも明確であるが、21世紀のグローバル化の進展とともにアメリカは”国家”VS”国家”の戦争をすでにやめている。しかし、”国家”VS”テロリスト”の戦いは勝敗がつかないことから、戦争が長引くほど消耗戦に突入し、アメリカ自身の国力がどんどん削がれていくことに気づき始めている。アメリカはもはや世界の警察ではなく、不毛な戦いはしないのだ。

なぜならば勝敗のつかないテロとの戦いに勝利したところで賠償金や領土などの戦利品を受け取れず、経済的メリットがないからだ。そこでアメリカはここ数年間の軍事戦略を見る限り、それは曖昧な仮想敵ではなく、明確に国家との戦いにシフトしてきている。明確な敵国とはもちろん覇権を争う中国に他ならない。

先日、アメリカ軍はアフガニスタンからの撤退を正式に決定した。常駐するアメリカ軍、政府への支援などでこれまでに延べ2兆ドル(≒220兆円)以上にも及ぶ莫大な税金が使われていたと試算されており、「そんな他国を援助する資金があるなら国内問題の解決に使え!」というアメリカ国内の不満が高まっているためだという。撤退まであと1か月に迫った米軍が手薄状態の中、過激派組織タリバン派が一気に巻き返しを図り、政権を奪還したことは、ここ数日のニュース報道でも流れているとおりだ。

台湾は(正式には国家承認はしていないものの)西側諸国と価値観を同じくする民主的な地域である。また、台湾は先進国の基幹産業を支える精密な半導体の世界トップレベルの供給地でもあり、万が一台湾防衛に失敗するとなると、それはアメリカのみならず、ひいては同盟国の基幹産業が一斉にストップしてしまいかねない産業リスクを抱えている。

精密な半導体は世界でも2か国しか供給できないと言われており、いずれも東シナ海周辺に位置している。ひとつは「台湾」、そしてもうひとつは「韓国」である。これら2か国は中国の近隣に位置しており、アメリカにとっては半導体の供給安定の観点からも地政学上、防衛する必要がある地域でもある。

このように台湾問題の本質は、民主主義の防衛であると同時に、半導体集積地としての防衛戦略でもある。これはアメリカの同盟国との信頼関係にも関わる非常に大きな問題である。



台湾は地政学上、島全体そのものが巨大な空母の役割を果たし、東シナ海の防衛の観点から、アメリカにとっては最前線に位置する軍事拠点であることは言うまでもない。この巨大な空母(台湾島)を中国に奪われてしまった場合、アメリカは東シナ海における軍事的支配力を失い、これまでのパワーバランスが崩れることを意味する。それはアメリカにとって二流国への転落の始まりを意味し、世界覇権がアメリカから中国へと移行する歴史的な転換点となることを意味している。

もっともアメリカは地理的に台湾から遠く離れており、アメリカだけでは戦うことは不可能だ。したがって、当然ながら台湾防衛には同盟国のサポートが必要不可欠となる。そこで最重要パートナーとなる同盟国が、いったいどこの国であるかは地図を眺めながら想像してみてほしい。

現在、民主党バイデン政権の支持率は低下傾向にあり、このまま何の実績も上げられないとなると来年2022年11月に実施される中間選挙で負けてしまう可能性も取り沙汰されている。そうなると仮想敵国を設定し、国内の不満を国外に背けなければならないという戦略にシフトせざるを得ないだろう。仮想敵国とはもちろんアメリカの世界覇権を脅かす中国である。

アメリカ民主党は圧倒的な手柄と実績をもとに次の中間選挙に備えなければならないという、引くに引けない内政事情があるのだ。

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【海のシルクロードのボトルネックとなるもの】


中国は三国志の時代からその史実を読むとわかるとおり、大陸内部からの外敵とのせめぎ合いを繰り返してきた歴史がある。地政学ではこれを大陸国家(ランドパワー)と呼んでいる。

海からの侵略があった初めてのケースは、1839年のアヘン戦争だ。この戦争に敗北した清国(中国)はその結果、香港島、そして対岸にある九龍半島も大英帝国(イギリス)の植民地として割譲させられた。

その後、1894年に起きた朝鮮半島の覇権をめぐる日本との日清戦争にも敗れ、台湾を日本に割譲した。中国側の視点に立てば、尖閣もこの時までは中国の領土だったのだから、さっさと返還せよということなのだろう。

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出典:東洋経済ONLINE「「逆さ地図」で見る、中国にとって邪魔な日本」より(一部画像修正)

上記は逆さ地図と呼ばれるもので、中国側から海洋方向を見た視点である。これを見るかぎり、中国から見た海域は海洋航路を完成させるためには非常に障害物が多く存在していることがわかる。これらの周辺諸国や小さな島々は中国にとってみれば邪魔な存在だ(黄色は中国の主張する核心的利益、赤線は中国の主張する第一次列島線と呼ばれる軍事防衛ライン)。

地図の左側からぐるっと右側まで見渡すと、左から朝鮮半島、その上に日本列島、手前には沖縄から続く尖閣諸島があり、最前線には台湾があり、右上には南シナ海の対岸にフィリピン、そして右端にはベトナムの領土があるため、想像以上に太平洋の大海原に進出が困難なことがよくわかる。

台湾と尖閣は目と鼻の先にあり、何としてでも自国の領土にしないと自由な航行が不可能である。思うに連日のように中国漁船が尖閣周辺の海域に領海侵入をしているのは軍事基地を作られないように妨害している、とみることもできる。

アメリカの視点で見ると、台湾と尖閣はそれ自体が空母の役割を果たし、中国の海洋進出への動きを封じ込めることが可能となる。地理的に遠く離れたアメリカにとっては本土から軍を派遣することが難しいため、必然的に空母打撃群を派遣し、そこを拠点化する必要が生じる。アメリカは台湾に大使館のような施設を設置していること(国交がないため大使館のようなものであり、それは写真で見る限りどうみても軍事基地のようである)、尖閣に軍事基地を作るという計画も出ていることから、本格的に中国の動きを封じ込めに着手していることが見て取れる。

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【中国包囲網】


すでに述べたとおり、中国の主張する核心的利益とは全部で5つあり、それは「ウイグル」、「南シナ海」、「香港」、「台湾」、そして「尖閣」だ。

先ほどの逆さ地図を見ると、なぜこの順番どおりに中国が核心的利益と呼ばれる地域を制圧しているのかがよくわかる。それは周辺国との領土問題が関係している。

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<ロシア>

ロシアは石油・天然ガスの取引先

中国の急激な経済発展に伴い、ロシアにとって中国は現在、最大の石油・天然ガスの買い手である。しかし、中国にとってはロシア一国に資源輸入を依存したくないこともあり、輸入先はイランなどにも分散し、供給リスクの管理を行っている。またロシアから資源の輸出を突然止められたら一巻の終わりとなる中国にとって輸入先の分散は合理的な戦略といえる。

北極海利権をめぐる争い

ロシアは北極海に面する世界最大の国土面積を有する国家である。近年の温暖化の影響によって永久凍土が溶け始めたことにより、北極海隣接国はこの地域に開発を進めようとしている。なお中国は自国も北極海隣接国であることを主張しているもののアメリカとロシアはこれを認めていない。

仮にこの一件で紛争となった場合、ロシアと中国の間には軋轢が生じるものと思われ、そうなるとロシアは反中勢力としてアメリカ側にまわる可能性も考えられる。仮に中国の軍隊を沿岸部に集中させてしまうと北側国境付近の防衛が手薄になり、バックアタックでロシアが侵攻してくるリスクは十分にあり得る。

ロシアと中国は何かと反米勢力とみられがちだが、それはあくまでも敵の見方は敵という論理であって、しょせんは表面上の仮面フレンドにすぎない。そもそも両国は総延長4,200kmにも及ぶ国境線で接しており、遠く離れたアメリカよりも実は中国にとってはロシアのほうがよほど軍事的脅威を感じているだろう。

中国の核心利益である「ウイグル」はこうして考えてみると、実はロシアに対する緩衝地帯という見方ができる。これによって、ロシアの北側からの侵攻を食い止められることになるのだから。



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<インド>

中国との国境線をめぐる軍事衝突

インドと中国との間には、4,000km以上に及ぶ未確定の国境線をめぐる緊張状態が続いている。45年ぶりに死者を出した2020年6月の軍事衝突で再燃した両国の国境問題は、依然として火種はくすぶり続けている状態だ。

インドは隣国パキスタンとの間で発生したカシミール紛争によって対立(現在は休戦中)、パキスタンはインドへの脅威から核開発へと至った。インドはパキスタンへの脅威からその後、核開発へと至っており、現在は核保有国である。

インドの政府高官と話した際、皮肉にもパキスタンのおかげで核保有国となったと聞いたことがある。もちろん、核ミサイルはパキスタン側に「も」向いているようだ。果たしてインドの核ミサイルの多くはどちらの方向を向いてるのだろうか?



もっとも、インドは地政学上、中国との間で深刻な水資源問題を抱えており、外交上非常に不利な立場にある。インドはその他の東南アジア、南アジア諸国と同様、中国が実行支配するチベットを水源とした国際河川に水資源を依存しているため、文字通り蛇口を閉められたら干上がってしまうからだ。

この問題は領土問題にとどまらず、直接人間の生存に関わる問題だけに非常に深刻である。インドや南アジア諸国が中国に対して本気で武力を行使する時は、おそらくこれらの国際河川をめぐる水資源が紛争の火種になるだろう。



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<フィリピン>

アメリカ軍は軍事防衛ラインをフィリピンのルソン島まで南下

台湾を安全保障の傘下に収めるには、フィリピンにあるスービック旧米軍基地を完全復帰させる必要が生じる。スービック基地は1991年11月にアメリカ軍が撤収し、フィリピンに返還された。現在はフィリピン海軍の基地である。

アメリカはこの基地の使用許可を得ることによって、南シナ海における防衛ラインを台湾海峡周辺からフィリピンまで南下させた。台湾はバシー海峡の対岸に位置しており、アメリカにとっては軍事防衛ラインをこの地点まで南下させても、台湾が十分に防衛可能範囲に収まるという判断なのかもしれない。

アメリカとしては空母打撃群を長期間にわたって海上に待機させておくよりも、陸上にあるスービック基地を軍事拠点化したほうが兵士の食料やエネルギーを補給する上で極めて効率的な戦略となる。

マニラタイペイ

フィリピンのドゥテルテ大統領は当然ながら、アメリカが南シナ海の覇権を巡って中国と戦争を開始した場合、フィリピンも米中戦争に引きずりこまれるであろう、と懸念し反発を招いている状況だ。

中国の核心利益である「南シナ海」はこうして考えてみると、アメリカ軍の第一列島線の侵入を事前に防御するために行われていた、という見方ができる。これによって、アメリカの南側からの侵攻を食い止められることになる。



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<南朝鮮(韓国)>

孤立化する韓国

2019年、アメリカはファーウェイ(Huawei)問題を通じて、同盟国に対してアメリカ側と中国側のどちらに着くのかの最終決断を迫った。日本は同社製品を排除することを決定した一方で、韓国はすでに設備を導入済という理由でこれを撤去しない方針を固めた。

ファーウェイ製品はすべての通信データが中国側に漏洩していることが懸念されており、アメリカが中国に貿易戦争による経済制裁を課したのも無理はない。つまり韓国はNATOのデータリンクから切り離され、軍事情報の連携ができないことを意味する。

現在、世界でも超精密レベルの半導体を作れるのは韓国と台湾のみだ。中国は台湾のTSMC社からの半導体輸入が制裁によって禁止されてしまったため、自国での生産を急いでいるが、現在の半導体自給率は16%程度と言われている。そうなると、中国は韓国を取り込むべく行動する可能性があることから、もしかしたら最終的にはアメリカ側からは外されてしまうかもしれない。これは韓国自身の曖昧な姿勢が招いてしまった結果でもある。

韓国は早かれ遅かれ、米中の板挟みで孤立化してしまう可能性が高い。

ソウルから消えたアメリカ軍

2019年6月にソウルのアメリカンスクールが閉鎖された。つまり、そこで暮らしていた在韓米軍及びその家族はすでにソウルから撤退したことを意味する。

現在、在韓米軍はどこにいるかというと、ソウルの南方60kmの地点にある西沢(ピョンテク)という街にいる。ソウルの緑化政策を推進するため、激しい住民運動によって韓国政府は在韓米軍をソウル郊外へ追い払ったと住民たちは喜んでいるようだ。

もっともアメリカ側の視点に立てば、ソウルを見捨てたという見方もできる。これは北朝鮮との間に位置する38度線の防衛ラインを南側に60km引き下げたとも考えることができ、半導体をめぐる供給元としてアメリカは非友好的な韓国を見捨て、友好的な台湾を選んだというだろう。

先日のニュースにあったように、アメリカ軍はアフガニスタンからの撤退を正式に決定し、手薄になったところをタリバンの武装勢力に一瞬で制圧されてしまった。常駐するアメリカ軍が完全撤退を決めた場合、韓国は自国のみで北朝鮮からの脅威に対抗できるのだろうか?



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<北朝鮮>

北朝鮮にとってみればアメリカも中国もロシアも韓国も仮想敵国である。北朝鮮にしてみれば、遠く離れたアメリカよりも隣接しているこれらの仮想敵国のほうがよほど脅威に違いない。

万が一、アメリカが韓国を見捨て孤立させようと計画した場合、アメリカは韓国(南朝鮮)ではなく、北朝鮮を選択する可能性もゼロではない(可能性は限りない低いと思うが)。

一方、中国にしてみれば緩衝地帯がなくなってしまうので、陸続きにアメリカ軍が常駐していることになる。これは北朝鮮を緩衝地帯としてみている中国やロシアにとっては恐怖以外の何物でもないだろう。

38度線以北に位置する北朝鮮がアメリカ側についた(あるいは混乱に乗じて中国に宣戦布告した場合)と仮定した場合、結果としてはアメリカとは敵の敵は味方理論が成立し、韓国は半島の先端部として取り残され、やはり孤立を招くことになる。

トランプ前大統領と金正恩委員長の間で実現した米朝首脳会談では交渉は失敗に終わったものの、アメリカは北朝鮮については経済制裁のみに留め、いまだに北朝鮮は中距離ミサイルの発射実験を繰り返している。バイデン政権に変わった今、アメリカはいつまでこのような過激な挑発行動を容認しているだろうか?



北朝鮮の中距離弾道ミサイルは発射実験のたびに精度を上げ、間もなく現在の600kmから800kmまで到達する。もっとも、この距離では日本の東京までは届かない距離だ。

平壌東京

一方で、北京は間もなく射程範囲に入りつつある。この距離では東京までは届かないが、北京までは届く、ということである。

平壌北京

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今月初旬、東京オリンピックが開催されていた裏側では、イギリス空母が東シナ海入りをし、日米とともに日本の南方海域で合同軍事演習が行われていた。

イギリスはブレグジットによって欧州連合(EU)から離脱、アメリカとの関係強化に急いでいる。また、またUKUSA協定に基づく機密情報共有の枠組み、通称ファイブアイズに日本を同盟国として招き入れようとしている。



イギリスはかつてのアジアの拠点であった香港を失ったことで、もう一度アジアの覇権を取り戻したいと考えている。中国との軍事衝突によってイギリスが香港防衛に専守した場合、アメリカは台湾へ向かうだろう。

HK TW
出典:Slide Share「Comparative education hongkong and taiwan」より

2021年1月、アメリカは共和党のトランプ政権から、民主党のバイデン政権に引き継がれた。バイデン政権発足後、東アジアの防衛力強化のために首脳会談ではじめに指名した同盟国、それは日本だった。

(つづく)


米中新冷戦の行方①~香港の終焉と1国2制度の形骸化~


去る8月17日から20日まで開催されていた、中国全人代の常務委員会の会議が終わった。

今回は香港の憲法に当たる「香港基本法」の付属文書について、中国本土の法律を付け加える審議がなされたものの、適用対象となった「反外国制裁法」の採択が見送りとなった。とりあえず香港は当面の間、延命措置が取られることになる。

反外国制裁法とは、人権問題などで制裁を強化する欧米諸国に対抗した法律で、本土では今年6月に施行した。その主旨は、中国の領土内外を問わず、外国の組織や個人が中国を抑圧するために制裁や内政干渉を行った場合、中国側は対抗措置を講ずる権利を持つというものだ。つまり、この法律の適用範囲が「中国(香港を含まない)」から「中国(香港を含む)」に切り替わった瞬間、外資系企業や個人が中国にとって好ましくない発言をしてしまうと、ただちに香港の銀行口座の凍結リスクを負うこととなる。

香港は言うまでもなく、中国にとっては核心的利益となる重要拠点であり、西側諸国の金融機関にとっては中国本土にアクセスするための玄関口の役割を果たす重要拠点である。仮に香港でこの法律が施行された場合、それはアジアの国際金融センター(オフショア金融センター)としての地位を失うことを意味し、香港の存在意義は消滅することになる。

台湾問題
画像引用元:「台湾确是我核心利益,统一却非“燃眉之急”!

今回、採用が見送られた経緯については、香港の金融センターとしての役割に影響が出ないか懸念の声が上がったこと、また中国側がさらなる意見の聴取を希望するなどの理由が報道された。

(ホントハチュウゴクノガイカジュンビキンガフソクシテイルノヲホテンスルタメニ、ホンコンカラドルヲブンドッテ、カイケイチョウボヲガッサンシヨウトシテイタナンテ、イエルワケガナイジャナイカ)

このニュースは、アジア・太平洋地域で事業活動を行うビジネスパーソンにとっては極めて重要なイベントであったに違いない。多くの人たちがお茶の間で東京オリンピックの視聴を楽しんでいる間、その裏ではとんでもない法律が施行されようとしていたのである。私も実に経営リソースの80%以上もこのリスク管理に奪われ、通常業務が大混乱に陥ったことは言うまでもない(1か月に取り扱った金額は数百億円にのぼる、これは私の人生でも5本の指に入る月間取引規模だ)。

もっとも、香港が国際金融センターの地位を失うのは、もはや時間の問題だ。なぜなら中国にはすでに香港に取って代わる、アフリカという新たなオフショア金融センターの稼働準備が整いつつあるのだから。

(ソレガツカイモノニナルカハ、マタベツモンダイダケドネ)

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【香港問題】

香港が世界史の表舞台に登場するのは、おそらく1839年のアヘン戦争からだろう。

当時アジアで勢力を拡大していたイギリスが、陶磁器、絹、茶葉による対清貿易赤字を解消するため、植民地であったインドで栽培したアヘンを、香港に密輸することによる売上で赤字を相殺しようともくろんだものの、これに反発する当時の清政府はこれを拒否、それに端を発し、アヘン戦争が勃発した。

これに勝利したイギリスは1842年に締結された南京条約により、香港島を永久割譲され、最終的に1898年に、深圳以南の、現在の香港全土にあたる地域を99年にわたって租借することとなった。

イギリスの植民地支配は日本と異なり、現地に社会基盤を整備しないスタンスだったため、香港は、当初は売春、疫病などで混乱を極めたものの、その後は病院や学校などの公共施設が整えられていくこととなった。これ以降、香港はイギリスの社会制度、文化が色濃く反映されていく地域となった。

時は流れ、1984年に当時のイギリス首相サッチャーと中華人民共和国の趙紫陽首相が香港返還を定めた「中英共同声明」に署名、1997年に香港が中国に返還された。

その後はご存知のとおりだ、中国の経済発展に伴いつつ急激に成長するものの、内政的には中国本土との政治制度の問題が表面化し、今日に至っている。


香港は1997年の返還から50年間、1国2制度を維持するとしてきたが、中国はその約束を反故にし、実質的に高度な自治権を認めずに本土に引き入れるような動きをしていることを、今や世界中が認識している。これは事実上、香港が中国の法体系に組み込まれることを意味し、結果として1国2制度が形骸化する。

こうした中国に対する最初の本格的な反発が2014年に起こった雨傘運動だった。この運動は失敗に終わったが、香港の人たちの火種はその後も残り続け、2019年の逃亡犯条例改正案の成立を阻止すべく若者を中心に反対運動が起こった。



2019年に起こったデモの特徴は、雨傘運動とは性質が異なるPeer to Peer型のデモだった(Peer=対等という意味)。つまりリーダー不在で行われたデモのため、中国政府は交渉相手が特定できないことから、鎮圧までに非常に手を焼いたようだ。このデモは2010年に中東で起きた民主化運動、SNSであるフェイスブックの呼びかけにより、どこからともなく始まったアラブの春を想起させる出来事だった。

もともと、逃亡犯条例改正のきっかけになった出来事は『「①香港人が台湾領土内で」、「②香港人の交際相手を殺害し」、「③香港領土内に戻ってきた」事件』が発端となっている。中国政府にしてみれば、「香港も台湾も中国の領土内なのだから、裁判権は中国にある」という主張だ。つまりこの改正案が認められるということは、香港で民主活動を行う政治活動家はすべて中国本土に引き渡しをされ、裁判にかけられることになってしまうのだ。

現在、香港周辺には、アメリカ軍をはじめイギリス軍、フランス軍、オーストラリア軍などが展開し、中国の動きにプレッシャーをかけ続けている。1国2制度によって高度な民主化を維持すると約束したうえで返還した側のイギリスとしては、さぞや怒り心頭だろう。

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【一帯一路(現代版シルクロード)構想】

中国ではスローガンである「一帯一路(1Road, 1 Belt)」の構想を完成させるべく、急ピッチで経済政策を進めている最中だ。

一帯一路とは、中国を基点とした陸(一帯)と海(一路)の交通ルートをそれぞれ開通させ、西アジアから、果てはアフリカまでを統合した超巨大経済圏を作り出す計画であり、地域の安定と経済的発展に貢献するという壮大な構想のようだ。

この構想は2049年までに完成するらしい。習近平国家主席が1953年生まれなので2049年には96歳になる計算だ。



かつてのシルクロードを復興させるべく、現代版シルクロードとも言われている。そうなると当時のラクダの役割は、現代では長距離トラックに取って代わることになる。

中国がこの一大プロジェクトを突き進める原動力の根底にあるのは、かつての1800年代のような繁栄と威光ある超大国・中国を取り戻すことに他ならない(中華思想とは本来的に、その根底にあるのは中国中心主義だ)。 

この時代の中国は周辺諸国の小国をうまく取り込むことで大国の威信を示し、また同時に周辺の大国であるロシアや日本とも仲が良かった。ところが、その秩序の安定を一気に崩壊させたのは先述したアヘン戦争である。

一方的にモノを売りつけられてばかりの大英帝国(現在のイギリス)は貿易赤字がどんどん溜まり、その不満からアヘンを売りつけることで貿易赤字を相殺することを試みるも清国(中国)側はこれを拒否、アヘン戦争が勃発。この敗北によって中国は長い暗黒時代へ突入していく。

領土の割譲と巨額の賠償金に加え、他の西欧列強も中国は思っていたほど強くない、という事が明るみになったことで次々に領土を割譲、国内が次第に貧困化していった。

国内では貧困にあえぐ庶民たちによる政府への反乱が相次ぎ、国外では朝鮮半島をめぐる日清戦争で大日本帝国(日本)に敗れ、その後、資源をめぐって対立した日中戦争は泥沼化していった。国内は内戦で疲弊、国外も消耗戦で泥沼化するという二重苦を経験することになる。

このような悲惨な状況にあった国家を建て直したのが現在の中国共産党だった。現在の中国、中華人民共和国は(※1つだけ非常に重要な国内問題が未解決な状態のまま)1949年に毛沢東によって建国された。※後述する。

現在も、中国共産党のスローガンは建国以来引き継がれる「勿忘国恥(ぶつぼうこくち)」を掲げている。これは「西洋列強に蹂躙された屈辱の歴史を忘れるな!」、という意味だ。 

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その後、中国は世界経済の発展の流れに乗り、世界の工場となることによって大きく経済を成長させていくことになる。2008年には念願の北京オリンピックが成功し、間もなくGDPではアメリカに次ぐ世界第二位の日本を追い抜く射程圏内まで迫りつつあった。

しかし、このタイミングで未曾有の経済危機が発生する。北京オリンピック開催直後の2008年9月にアメリカのサブプライムローンにより端を発したリーマンショックが発生してしまう。その影響は一気に世界中に波及し、中国も巻き込まれることになる。モノを売る先の先進国が不況でモノを買ってくれない以上、世界の工場は出荷先がなくなり、作っても大量の在庫だけが残ることになる。

そこで、中国は思い切った景気刺激策を実施することによって公共政策を行い、高速道路や高速鉄道、公共住宅などの建設ラッシュによって一気にV字回復を果たしていった。これは他の国が経済不況から立ち直れない中、極めて速い回復スピードであったと記憶している。

しかし、よく考えてみればこれらの経済回復を果たすことができたのは、未熟なインフラ整備による国内経済の成長が最大の要因だった。そうなると、ハードウェア(道路や建物)がいったん完成してしまうと、今度は鉄やコンクリートなどの資源が国内に大量の在庫の山を抱えることになる。

そこで考えたのが、国内で消費できないのであれば、生産余剰分は国外に売ればいいという発想の転換だ。さて、どこに売ろうか。

世界地図を開いてみると太平洋に出ると東にはアメリカがいる、その手前には日本がいる。中国の視点から考えれば、チョッカイを出されるとなかなか面倒くさいことになりそうな国たちだ。

そうなると、西へ、西へと商売を進めていくしかない。中国から西のアジア、アフリカ方面だ。

こうして中国は一帯一路計画のスタート地点に立つことになる。

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【債務のワナ】


中国はこうしてアジアの周辺諸国やアフリカ諸国に対して、経済発展に貢献することで経済的利益、地域の一体化を営業トークとして販売ルートを確保、政府間交渉(営業活動)に奔走することになる。 

経済的に貧しい周辺国やアフリカ諸国にとっては投資やインフラ整備に使うお金がないため、中国の営業は功を奏し、前向きに受け入れる方向で進んでいった。アジア、アフリカ地域における経済発展に注力、経済格差の是正を目指す一帯一路の販売ルートは順調に拡大していった。

経済発展のための資金まで貸し付けてくれ、ともに発展しようという提案は新興国にとってはこの上ないほど良い条件だ。当然ながら、余剰在庫の処分をする中国にとっても、開発や資金提供まで代わりにやってくれる国々にとってもWin-Winな関係なのだから。

しかし、世の中にそんなうまい話はないもので、後にこれは債務のワナと呼ばれる問題に発展する。

まず、中国は自国通貨である人民元建て(RMB)で貸し付けを行い、自国から資源と労働者を提供することで相手国の公共事業を進めていった。そうなると、現地の資源が使われず、雇用創出もできず、現地にお金が落ちないという問題が発生した。

次に、中国は当然ながら信用のない相手にお金を貸すことになるので、金利は高めに設定することになる。これは金融取引の基本だ。ここで金利及び原本の返済は米ドル(USD)で行ってもらうよう契約書に明記した。

最後に、中国は自国資源を使った完成物を現地に残し、労働者は自国に帰還させ、相手国の外貨準備金である米ドルを返済+金利として受け取るスキームを完成させた。

これは銀行と消費者金融を例に考えればわかりやすい。

銀行は担保を取ってお金を貸す。返済できるような信用力の高い借り手は破産リスクが低いので、金利が低くても安心して貸し出すことができる。万が一返済ができなくなった最悪の場合でも、担保を現金化して回収できるので貸し手にとっては金利が低いとリターンは少ないが回収リスクは低い。

一方で、消費者金融は担保を取らずにお金を貸すことになる。返済できないかもしれない信用力の低い借り手は破産リスクが高く、金利が高くないと貸し出すことができない。万が一返済ができなくなった場合には、担保がないので貸し手にとっては回収リスクが高く、金利を多めにとることによってリターンを増やす必要がある。

中国がやっている政策は本質的に消費者金融の高利貸しと同じメカニズムだ。

至極当たり前の話だが、経済的に貧しい周辺国やアフリカ諸国にとっては投資やインフラ整備に使うお金がないわけだから、中国が立て替えをするという契約になっている。当然担保の提供もできない。

そもそも論として、これらの債務返済はどう考えても超絶無理ゲ―であって、お金がない人(企業や国家)に高い金利で貸し付けるということは、当然ながら貸す側も返ってくる可能性は非常に低い事実を受け入れないと契約書には署名をしないだろう。

当然ながら返済は焦げ付き、融資を受けて借りたお金が返済できない国が頻発することになる。その他、港湾整備や鉄道運営の管理にも維持費がかかることになる。返済ができないのに加えて、さらに毎月定額の使用量がサブスク課金(継続課金)されていくので、電車の運賃や港湾の使用量だけでは、どう考えてもとうてい無理な返済プランだ。

それに施設の管理・運営技術を持たない諸外国が自国の技術者で管理・運営できる能力があるわけがない、なぜなら「それら」は今まさに中国が作ったものなのだから。

さて、契約書に署名をして作ってしまった以上、港湾設備や道路を壊すこともできないし、お金も返すことができなくなった。そうなると貸し手である中国にとっては担保に変わる「何か」で辻褄を合わせるしかなくなる。

中国は貧しい諸外国にこう提案する、「担保はあるじゃないですか、うちが作った施設を使わせてくれればいい。その代わり、管理権という名目で超長期契約を締結して相殺しましょう」。

こうして中国は巧みな営業により、国外領土の獲得に成功していった。 気づいた時は後の祭り、新興国は強引な統一計画ではないか?との懸念を持ったときには、時すでに遅し。中国の新植民地戦略のワナにハマってしまったことになる。

現在は事態を重く見たIMF(国際通貨基金)が救済に乗り出し、無担保・低金利での借り替え営業を行うようになって来ていると聞いている。結果として新興国が借り換えによって得た資金はドル建てで中国に流れるので、外貨獲得戦略も大成功に終わったことになる。自国の紙幣はただ同然で印刷して変わりに米ドルと海外領土が手に入るのだから、明らかに中国が一枚も二枚も外交戦略が上手だ。



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【パックスチャイナ~中国を中心とする新世界秩序の実現へ向けて~】

現代のオフショア金融の起源は、1945年に発足したブレトンウッズ体制を機に、イギリスが表向きの世界覇権をアメリカに譲ったところから始まる。

これは世界覇権がパックスブリタニカ(イギリスによる覇権主義)からパックスアメリカーナ(アメリカによる覇権主義)へ移転した象徴的な出来事だった(この時から、世界の基軸通貨はポンドからアメリカドルに切り替わった)。

第2次世界大戦後、アメリカの主導のもと、国際通貨を安定させる試みが開始されたものの、各種の規制を嫌う金融資本が逃避を図ることになった。

この機に乗じ、世界覇権を取り戻そうとしたのがイギリスだった。軍事力ではすでにアメリカには到底及ばないことは明らかだったため、代わりにイギリスが目をつけたのが、経済主導による世界覇権を奪還することに他ならない。

そのためには、イギリスはどうしても世界中の資産を一か所に集中して集める必要があった。すでに金融センターとしての地位を確立していたロンドンのシティに資金を集めるべく、大幅に規制を緩和し、アメリカから逃亡を図る金融資本の受け入れを進めていった。

それだけではなく、影響力の及ぶかつての植民地の国家・地域にも同じ法体系(コモンロー)を適用させ、旧英国連邦を形成した。ヨーロッパに位置する王室属領(マン島、ガーンジー島など)はヨーロッパとアフリカから、カリブ海の海外領土(ケイマン、バミューダ、BVIなど)はアメリカ本土から、アジアの旧植民地(香港、シンガポール、マレーシア連邦領ラブアンなど)はアジアから、イギリスのシティに資産を集めるべく、営業部隊(フロントデスク)の役割を果たすことになった。

営業部隊である旧植民地の国・地域に課されたミッションはただひとつ、合法・違法を問わず、あらゆる種類の資金を受け入れ、少しでも多くの資金を本陣であるロンドン・シティに集約させること、ただ唯一この目的のための業務遂行である。

一方で、アメリカもこのまま資産の海外流出を黙って見過ごすわけには行かない。アメリカもアメリカで金融の規制緩和、上記のオフショア国への政治的な圧力、国際社会を巻き込んだ規制強化を矢継ぎ早に実行に移していった。

顧客保護を盾に取って情報開示を拒む営業部隊、秘密主義を悪用して行われる脱税や粉飾決算、それらをアメリカが覇権国という大義名分のもとに取り締まりや摘発を行い、その成果を世界中にアピールするのは、自国から資本流出、租税流出という防衛措置であったことは言うまでもない。

上記のアメリカの行いは一定の効果を奏し、いくつかのオフショア地域はその機能を形骸化されてしまった。しかし、イギリスがこのまま引き下がるわけはない。

こうして起きたのが世界を巻き込んだ、2016年から始まった法人税率の引き下げ競争だった。イギリスは本陣であるイギリス本国の税収を引き下げなければならないほど、覇権争いが熾烈になってきた、ともいえる。

特に非居住者法人(オフショア法人)に対する規制を緩和、イギリスの本陣であるシティが法人税率を一気に引き下げたことを発端として、主要先進国がどんどん実効税率を下げていき、結果として各国の税収がどんどん下がるという負のスパイラルを生み出していった。

さすがにこんな不毛な戦いがいつまでも続くわけがなく、昨今のG7(主要7か国会議)の協議によって法人税率の各国引き下げ競争は終わりを迎えようとしている。最終的には世界の統一税制は15%以下に引き下げられないように、落としどころを探っている状態が続いている。

ここに来て登場してきたのが、中国だ。中国は今、世界覇権をアメリカから奪うべく、パックスアメリカーナ(アメリカによる覇権主義)を終焉させ、それに代わるパックスチャイナ(中国による覇権主義)を確立しようとしている。

興味深いのが、イギリスが旧植民地国の国や地域にタックスヘイブン(オフショア金融)の活用法を教え、一定の利益を共有したのに対し、中国はアフリカ開発で潤う中国人が資本をアフリカから本国に持ち出すために、自分たちが使いやすいアフリカのオフショア域を構築している点にある。この現象は中国の非常にユニークな特徴であるといえる。

オフショア金融市場とは本来的な役割として、国内市場と切り離した形の自由金融市場を拠点として、国外からの外貨資金を有利な条件で取り込み、運用する国際金融業務の一連の流れのことをいう。

現在の中国のオフショア金融センターの役割を果たしているのは、いうまでもなく香港である。中国によるオフショア金融のアフリカシフトが鮮明になった時、香港はその役割を終えるのかもしれない。

近い将来、アフリカ諸国の低税率化、外貨規制の大幅緩和といった条件に魅力を感じ、外資系金融機関が次々とアフリカでオフショア法人を設立、中国はそれらを新植民地による新たな外貨獲得戦略と位置付けてくる日も近いかもしれない。

***

中国は来たる2027年に人民解放軍創設100周年を迎える。中国はそれまでに核心的利益をすべて手に入れ、次の世界覇権の地位を確立しようとしている、と言われている。

中国の主張する核心的利益とは全部で5つあり、それは「ウイグル」、「南シナ海」、「香港」、「台湾」、そして「尖閣」だ。現在、香港の陥落が間近に迫っており、まもなく5つのうち、3つは作業完了(ミッション・コンプリート)となる見込みだ。

中国は「香港」を陥落させたら、次はいよいよ残る2つ「台湾」と「尖閣」の奪取に向けて本格的に舵を切るだろう。

しかし、ここでプロジェクト計画の遂行を邪魔する国が現れた。

そう、アメリカ合衆国だ。

(続く)


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