「鳥はいいなぁ、どこまでも自由に飛んで行ける...」
人類はかつて、空を飛ぶことに憧れた。
やがて、空を自由に飛べる技術を手に入れた人類は、さらに高く飛ぶことを夢見た。
そしてとうとう、人類は夢を叶えたのだ。
これで私たちはどこまでも高く、遠くまで飛んで行ける。
そしてある日、
燃料が切れた。
9月15日未明。
連邦倒産法第11章の適用を申請し、リーマンブラザース社が破産した。
「もしもし、もしもし?」
「もしもーし?」
全身鳥肌が立って、思わず携帯電話を落とした。
結局、アメリカ政府はAIGを守ったわけだ。
Too big to fail...
救済資金9兆円か...
そうか。
まぁそうか...
日銀の定例市場報告を見ると、デリバティブ取引の全体の残高(想定元本ベース)は、約36.4兆ドルと記載されている。
いやいや、もっとあるだろ(笑)
リーマンブラザーズの取引残高が7,000億米ドル超と言われているが(約70兆円≒日本の国家予算並み!?)、市場規模に対してはあまり影響がないと判断されたのだろうか?
一方で、
AIGはCDS(クレジットデフォルトスワップ)の引き受けをしている。
これは簡単に言えば、オプション取引の売り手のことだ。
AIGは、債務不履行があった場合に債権者に対して無限責任の支払い義務を負っている。
CDSの発行残高が4,500~6,000兆円超とも言われているから、デリバティブ取引と比較すれば、こちらの市場規模のほうがはるかに大きい。
結局、「守らなかったのか」「守れなかったのか」、私のような末端の金融マンにはわからない。
AIGを破綻させると、CDSという保険を契約している債権者はお金を回収できなくなる
↓
債権者は世界中の金融機関だ
↓
AIGを破綻させると、世界中の金融機関は代金を回収できず破綻する
↓
世界中の金融機関が破綻すると、現在の金融制度は維持できなくなる
↓
リーマンブラザーズはレバレッジを掛けて運用しているイケイケの金融機関に過ぎないから、そこまで大きな影響はないだろう
↓
だからリーマンブラザーズを見捨てて、AIGを救済した
ということなのかな?
月曜日の朝、出社して端末を立ち上げたら、
カバーディール先一覧に、見慣れた「Lehman Brothers, Inc.」の文字が見当たらなかった。
「本当に倒産したんだ。。。」
先日、六本木ヒルズにブラブラと散歩に出かけた。
ずんぐりとそびえ立つビルの前には巨大なクモのオブジェクトが屋根のようになっていて、訪れる人たちは足の中をくぐってビルの中に吸い込まれて行く。
足元に「Lehman Brothers, Inc.」と書かれた石碑がポツンと置かれたままだったのが印象的だった。
ゆく川の流れは絶えずして、
しかも、もとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、
かつ消え、かつ結びて、
久しくとゞまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、
またかくの如し。
(鴨長明「方丈記」冒頭より)
A「ふぅー、だいぶ遠くまで来たな。やばいな、燃料持つかな。隣に飛んでる人がいるからちょっと頼んでみようか。すいませーん、燃料を少し貸してもらえませんか?ちゃんと借用書書きますから!着陸したら多めに返しますよ。私こういう者です。ほら、信用できるでしょ?」
B「おー、わかった。そのかわり私も遠くに行く予定だから足りなくなるかもしれない。そのときは少し返してほしい。燃料は今取り出せないから代わりにこの受渡書を先に渡しとくよ」
A「ありがとう、助かります。周りもたくさん同じこと考えてる人がいるからお互いに貸し合ってもっと高度を上げて行きましょう!この上昇気流に乗らないやつはバカですよ、バカ。」
B「それもそうだな!足りなくなったら他から借りて増やす方法があったのか!君はなかなか賢いやつだな」
A「レバレッジってやつですよ。この紙を書くことで無いはずのものを作り出せるんです!人類はすごい発明をしたものですよ。」
昔、経済は社会の血液のようなものだと教わった。
そうだとすれば、心臓から流れ出た血液は動脈を通って、体中を巡りながら栄養素を運び、静脈を通って再び心臓に戻ってくる。
ここで、血液の量が突然消えると何が起こるのか考えてみてほしい。
人間はこのような状況に陥ると、生命力を維持することを最優先するようにDNAにプログラムされている。
すると、優先順位を決めて後回しにされた部分には血液が送られず、逆に戻すように命令される。
肌のキメが粗くなったり、髪の毛が抜け落ちるのは、生命維持のための優先順位が低く、栄養素の運搬が後回しにされるからだ。
血液が流れなくなると、栄養が行き渡らなくなり、細胞の活動は停止する。
やがて細胞は息絶える。
A「すごいな、100tまでしかつめないはずの燃料がいつの間にか3,000tに増えてるぞ!借用書さえ書けば、燃料は無限に増やせるんだ!これは偉大な発明だ!」
B「おい、そろそろ燃料返してくれ。」
A「おー、必要になりましたか、あなたもだいぶ遠くまで来ましたね。今、用意しますよ。あれ、あと5tしかない、というかこっちも燃料が足りないかもしれないな、まずいぞ。おっかしいな、CさんDさんEさんたちからも100tずつ借りてたくさんあるはずなのに。モニター画面には3000tも残ってるし。Bさんごめんよ、モニター画面上にあるはずの燃料がどういうわけかタンクにないみたいなんだ。悪いけど他の人から調達してください。私は受渡書しかないので。それではごきげんよう。」
B「バカな?借用書ちゃんとあるんだぞ。こんな紙いらないからさっさと燃料返せよ。CもDも同じこと言われて困ってるんだよ。地上のEに電話して用意してもらえ、早くしろ!」
A・B「~というわけなんだ」
E「無理ですよ、あなたたちのいる場所は遠すぎて運べません。お言葉ですが、燃料なんて最初から存在しなかったんですよ。あなたは100tしか積めないジェット機を打ち上げて周りに借用書を書いて3,000tまで燃料を増やした。いや、正確に言えば増やしたことにした。でもそんなもの最初から存在しなかったんだ。
100tしか積めない燃料タンクのどこに30倍以上の燃料を積めるというのでしょうか。Bさんもそうですよ。あなたは100tしか積めないはずの燃料タンクを満タンにして飛び立ちました。Aさんに100t貸して、Cさんにも100t、Dさんにも100t。Bさんは100tしか持ってなかった、自分で100t消費したので差引マイナス300tだ。Bさんの燃料タンクの大きさはそのままです。この意味わかりますか?」
A「それもそうだな、Bさんそういうわけなんだ」
B「なるほど、私たちはうっかり計算ミスをしてしまったようだな」
これから数年後、何が起きるのだろうか。
資本主義というジェット機は高く遠くまで飛び過ぎてしまった。
もうすぐ、燃料切れを起こしたジェット機の群れが一斉に地上に墜落を始める。
墜落するときに緩衝材を敷いておかないと、ダイレクトに地面に叩きつけられる。
いや、それだけでは済まず、地下の奥深くまでめり込むだろう。
そして、地上に巨大な亀裂が入り、やがてどこかで止まる。
どこか、まではさすがに私には想像できないが...。
景気はあがるときもあれば下がるときもある。
あがったものは下がり、下がったものはあがる。
底なし沼ではない。必ずどこかで止まる。
昔、経済は社会の血液のようなものだと教わった。
血液の循環を止めて一度だけ、じっくりと立ち止まって考える時間があればいいのだろうが、
資本主義の宿命は立ち止まって考えることが許されないのだ。
農家のヒトが小麦を作るのをやめてしまう
↓
小麦がないとパンを作る材料がなくなる
↓
材料がないと、パン屋さんはパンを作れなくなる
↓
パンがないと私たちは食べるものがなくなる
↓
食べるものがなくなると人々は残ったパンを奪い合って戦争になる
↓
やがてパンはなくなり、人々は絶滅する
これから先、どれだけの致命傷を負っても、地上の亀裂は完治する間もなく歩き続けなければならない。
資本主義の悲しい宿命だ。
立ち止まって考える時間はないのだ。
では、どうなるのか。
無理がたたって、いずれまた同じことを繰り返すだろう。
おそらく、一般論からすれば、
アメリカの株価が大暴落し、日本の株価も連動して大暴落する(と思う)。
アメリカドルの価値が暴落し、日本円の価値が上がる(と思う)。
これは決して日本円が強いというわけではなくて、相対的にアメリカドルの価値が弱くなるからだ。
日本円が強くなるということは、向かい風をもろに受ける輸出関連株を筆頭にやはり日本株は大暴落する(と思う)。
ということでやっぱり日本株は大暴落する(と思う)。
こんな感じだろうか(諸事情により断定表現は控える)。
すでに暴落が始まっているが、どこまで落ちるか想像できない。
現時点で株を持っている投資家の方は今のうちにロスカットしてポジションを直ちに決済するか、ファーアウトの屑プット(プットオプション)でも大量に買っといたほうがいいかもしれない。
プットオプションというのは先に述べた保険商品のようなもので、不幸な出来事が起こったときに受け取れる宝くじのような商品だ。もっとも掛け捨てなので、満期日には紙くずになる可能性もあるが。
ボラティリティ(相場変動率)が急激に跳ね上がる(と思われる)現在のような局面では、屑プットが緩衝材の役割を果たすことで、ポジション全体の受ける衝撃波をうまくカバー(ヘッジ)できるかもしれない。
あくまでも投資は自己責任で、だが。
たいしてこのブログ、アクセスないけど。。。
以前も書いたと思うが、今は国際化社会ではなくてグローバル社会だ。
ウォール街の金融マンたちは、浴槽にオーバーブローするほどの大量の水を注ぎ込み、こぼれないように張りぼての囲いを作り、さらに何倍、何十倍もの水を入れられる仕組みを作った。
高速に墜落して来るジェット機の群れが地上に衝突した瞬間に風呂の栓が抜けてしまうと、世界中の水は栓に向かって一斉に流れ出し、やがて消えて行くだろう。
さらに地上への衝突エネルギーの反動が大きすぎて、無理やり作った張りぼての囲いは津波によって崩壊するだろう。
お金が消える、でもお金は必要だ。
お金を用意するために、先進国は新興国から資金を引き揚げるだろう。
新興国も株価が暴落する。
なんとも悪循環ではないか。
最後になるが、今や実体経済と金融経済は主従関係が完全に逆転してしまった。
実体経済は金融経済に完全に引き連られてしまっている。
地震にたとえれば、実体経済は初動のP波が到達したに過ぎない。
実体経済は、時間をおいて少しずつ悪化し、やがて本震のS波が到達するものと思われる。
少なくとも半年、1年後には立派な大人たちが過去の足跡をたどって答え合わせをし始めるだろう。
もっとも、資本主義の仕組みが維持できていればの話だが...