柱の裏の落書き

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金融・マーケット関連

2024年ビットコイン価格の考察


去る2024年3月5日、ビットコイン(BTC)は歴史上初めて69,200ドルを突破し、新高値を更新した。

伝統的な金融市場のゴールド(Gold)が同日に、史上最高値を更新したことで、デジタルゴールドと呼ばれるビットコインにとっては記念すべき歴史的瞬間となった。

2009年のビットコイン誕生以来、金とビットコインが同時に新記録を達成したのは今回が初めてだという。

金とビットコインは、各国政府が無制限に印刷し続ける法定通貨に対するインフレヘッジの役割を担う資産として注目されることが多い。

コロナウィルスが流行した2020年以降、各国政府はこぞって金融緩和を行い、法定通貨を刷り続けた結果、今や法定通貨の価値は4年前とは比べ物にならないくらい価値が棄損してしまった。

現在は株もゴールドも仮想通貨も史上最高値を更新し続けているが、それは裏を返せば、お金の価値が相対的に低下していると考えることができ、みんなインフレ対策に法定通貨を売ってこれらの資産に価値の保管を求めているのだろう。

私たちのような比較的若い世代の人間にとっては重くて持ち運びが大変なゴールドよりも、ハードウォレットに入れて気軽に持ち運べるビットコインのほうを好む人が多いのではなかろうか?

もちろん安易に持ち歩いたりはしないが。

私は2013年からビットコイン投資をしていて、そのほとんどはMt. GOX(かつて東京にあった世界最大の仮想通貨取引所)に閉じ込められている現状があり(早く返してくれ笑)、またいくつかのビットコインは2017年12月のバブル直前で利確(利益確定)をさせてしまった。

残念ながら人生、、、そう甘くはない。

現在、あの頃ほどのビットコインは保有していないが、それでもハードウォレットに保管してあるビットコインは信じられないほど高騰し、だいぶ大きな含み益が出ている。当時の私にとってビットコインは知人からの怪しい投資話に乗ったにすぎず、まさかこんな値段が付くとは夢にも思わなかった。

私と同時期に投資した人たちで、現在も持ち続けている人はどのくらいいるのだろうか?

この10年を振り返ると、ビットコインが4年ごとに暴騰と暴落を繰り返しながら少しずつ市民権を得て、人々に受け入れられるようになったことは本当にうれしい限りだ。

***

さて、本題。

昨日の夜、不思議な夢を見た、まだ朝の5時半だ。夜型人間の私にとってはこの時間に起きてしまうのはとても珍しいことだ。久しぶりにベッドから飛び起きて今起こったシーンを書き残している。

どういうわけか1時間しか寝ていないのに、頭が冴えている。

私はここ2日不眠状態で眠れず、ようやく眠ることができたのだが、数年ぶりに明晰夢のような鮮やかなシーンを夢の中で見た。

Bitcoin

それは夢の中にビットコインとゴールドが出てきて、私は夢の中でビットコインが、ゴールドが辿った道をきれいにトレースしている場面を見た。

もちろん夢というのは理路整然としないものが多く、たいてい夢というのは辻褄が合わなかったり、論理的ではないものだ。

だが、私はブログを書きながらPCの前で思わぬ事実に気が付いた。

***

以下はゴールド(金)が辿って来た1978年からのチャートだ。

GOLD

今が2024年だから、上記のチャートは1978年から46年かけてゴールドが右肩上がりに成長してきた姿がよくわかる。

では、ビットコインはどうかというと...。

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以下はビットコインが辿って来た2016年からのチャートだ。

BTC

何となくぼんやりと眺めるとゴールドのチャートに似ていないだろうか?

もし今年2024年にビットコインがゴールドが辿って来た動きをトレースするようなことがあれば、以下のような仮説が成り立つ。

現在、ビットコインはETF承認を受けて、価格が暴騰しているが、あと1か月は続かず、USD82,000~
USD85,000前後でいったん大きな調整売りが入る。チャートから逆算すると、それは来月4月に迎える半減期の前後あたりだろうか。

その後、ビットコインは夏にかけてUSD60,000~USD65,000程度まで深い押し目が入り、その後、ブレイクアウトしたゴールドを追いかけ、値段はさらに上がっていくと考えることができる。

つまり、以下のようなネックラインを切り上げたヘッドアンドショルダー(逆三尊)の動きをしていくことになる。

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そうなれば、ゴールドが1978年から46年かけて形成してきたチャートを、ビットコインはわずか8年間でトレースしてしまうことになる。これは驚異的な成長スピードである。

まぁ、これはあくまでも私が夢で見た景色を検証しているだけなので、真に受けずにエンタメだと思って捉えてほしい。

上記を信じて投資するのは構わないが、あくまでも投資は自己責任でお願いしたい。

この夢で見た景色が数か月後に現実のものとなるかどうかは、後で答え合わせをしてみてほしい。

***

最後に、長く相場にいて本当に稼いでいるトレーダー、稼いでいる投資家と呼ばれている人たちと話していると、ある本質が一致することに気づく。

それは「少し先の未来に起こり得るチャートが透かし絵のように浮かび上がって見える」ということだ。私も相場に20年近くいるので、ある程度この感覚は持っているほうだと思う。

断わっておくが、私は天才トレーダーではない。何度も何度もトレードをしながらチャートを眺めていると自然と既視感(デジャブ)が養われる。

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https://twitter.com/fx_pepper_/status/1616198943242653707/photo/1

チャートパターンは毎回のように繰り返し同じパターンが現れ、「このパターンって前も見た記憶があるな、だからこの先はこういうパターンになるはず」という能力があがっていく。

慣れてくると、チャートを作っている途中で、この後にどういう形が完成するのか仮説を立てる能力が上がっていく。

投資の本質は期待値のゲームだ、原則として予想しても無駄だ、予言者である必要はない。確率・統計上、試行回数を繰り返すほど勝率はおのずと50%の勝敗に収れんする。

だから自分が得意とするパターンの出現を待ち、後はひたすら待つ。天才である必要はない、勝てるパターンが来た時だけ勇気をもって合理的な賭けをする。

判断が間違っていたら素直に認め、いさぎよくロスカット(損切り)をする。上手な投資家は決まってこう口を揃える。「自分が得意なパターンだけ取る」「未来が見えるところまで持つ、そこから先が見えない時はそこでゲームをやめていったん退場をする」。

シンプルだが、長年相場と向かい合った結果、行きついた私の結論である。

今朝は本当に久しぶりに鮮やかな夢を見た。

さて、私のデジャブ感覚は正しかったのだろうか?


アフターコロナの世界を考える②~民主主義のコストと自由をめぐる争い~


日本人は同調圧力に弱く、他人と同じ行動を取りたがると言われる。このように多数派にまわり、少数派を集中攻撃するという集団心理は、多くの強迫性障害者を生み出し、やがて全体主義の土壌を育んだ。

私はこうした文化的背景には、小学生時代の体育の授業でやった長縄跳びに原因があるのではないかと思っている。はっきり言おう、あれは文部科学省から派遣された体育教師によるファシズムだ。今すぐやめたほうがいい笑

長縄跳びの終わりは実に切ないものだ。必ずクラスメイトの誰かが足を引っかけてゲームが終わる。子どもたち全員がうまく跳べないと先生は気が済まないので、失敗したら初めからやり直しをさせられる。長縄をまわす2人のクラスメイトは段々イライラしてきて、その空気はクラス全体に波及する。私たちは連帯責任のもとに、周囲を暴れまわる恐怖の縄から抜け出すことは許されないのだ。

(アレアレアレ、イマナワニヒッカカッタヤツハダレダ?)

やがて子どもたちの精神は殺伐としていき、縄を踏んでしまったクラスメイトは誰なのか犯人捜しが始まる。失敗してしまったクラスメイトには「ドンマイ、もう1回だ。次はがんばろうぜ」と言いながら、心の中では無言の集団ヒステリーが増幅し、うまく跳べなかった子は無言のプレッシャーにさらされ、精神的に追い詰められていく。

(オイ、ワカッテルヨナ、ツギハミンナニメイワクカケルナヨ)

長縄跳びの本質は誰かが犠牲にならないと終わらない残酷なゲームだ。私たちの誰もが縄に引っかからないように細心の注意を払い、自分以外の誰かが引っかかると、心のどこかで安心感を覚える。自分が犯人にならずに済んだからだ。私たちは長縄跳びの授業を通して人間の心に内在する二面性を学ぶことになる。

こうして日本人は子どもの頃から全体主義の精神を無意識に刷り込まれ、失敗した人間に怒りの矛先を集中的に向けさせる攻撃技術の英才教育を受ける。そして子どもたちは精神障害を抱えたまま、やがて大人になり、社会に放り出されていくのだ。

(シッパイスルトミットモナイカラリスクヲトルノハヤメトコウ)

長縄跳びはまさに日本社会の縮図そのものだ、不届き者は制裁される運命にある。

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・人生初のロックダウン(国境封鎖)を経験、移動制限令により強制自宅待機

3月16日の夕方、秘書からグループチャットにメッセージが飛んできた。

「先ほどマレーシアではロックダウン(国境封鎖)が決定しました、明後日18日から国境が封鎖され、同時に国内でもMCO(Movement Control Order=移動制限令)が発動されます。期限は月末までの2週間、食べ物と飲み物を今から十分に買って、しばらく家から出ないでください。不要不急の外出により移動制限命令に従わないことが判明した場合、「最大6ヶ月の禁固刑」、「1,000リンギット(≒226米ドル)の罰金、またはその両方のペナルティが課されます、わかった?そんじゃ、がんばってね!」

おいおい、ちょっと待て。あと1日と数時間しかないぞ 

マレーシアという国はとりあえず何事もやってみて、全体のバランスを見ながら軌道修正とリバランス(バランス調整)をしていく国なので、マレーシア国民、この国に滞在する外国人はいつも政府に振り回されながら強い心を育んでいく。慣れとは怖いもので、私もすっかりこの国の文化に対する免疫ができてしまったようだ。私は急いでコンドミニアムを出てカップラーメンとスナック菓子を大量に買い込んで自宅待機に備えた。

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3月17日、ロックダウンが数時間後に迫るクアラルンプール。ほとんど食糧がない棚の様子。

当初、3月18日から3月31日までと言われた移動制限命令はその後2週間の延長が決まり、4月14日まで延長された。マレーシア政府はそこから2週間の延長を決定し、4月28日で終了予定となった。その後、さらに2週間の期限延長がなされ、5月9日まで当該規制が適用されることが決まり、さらには5月10日から6月9日まで1か月の期限延長が決まった。

一体いつになったら終わるんだよ  

当初MCO期間: 3月18日から3月31日まで
MCO延長期間: 4月1日から4月14日まで(※3月25日政府発表)
MCO再延長期間:4月15日から4月28日まで(※4月10日政府発表、市街地にマレーシア軍投入)
MCO再々延長期間:4月29日から5月10日まで(※4月25日政府発表)
MCO再々々延長期間:5月11日から6月9日まで(※5月9日政府発表、一部業種の営業再開へ緩和措置)

なお、最初の2週間で命令に従わない「不届き者」のマレーシア人があまりにも多かったため、2回目の延長期間中からマレーシア軍が街中にバリケードを設置し、物理的な強硬手段に出た。余談だが、この命令を無視して逮捕された人数は4月末までに18,000人に上るという。おいおい笑

本来、経済が瀕死状態のマレーシアでは、MCOの解除は5月10日を以て終了するはずだった。しかし、MCOの延長を望んだのは政府ではなく、今度はマレーシア国民のほうだった。

5月に入り、SNS上では「なぜ今このタイミングで緩和をするのか?」「経済活動を再開させたら、あっという間に第二波が来るのではないか?」と言った非難の声が殺到し、市民の声は政府が想定していた以上に強く、期限延長を強く望むオンライン署名はわずか数日で45万人以上に達したという。

これを受けてムヒディン首相は5月10日、「マレーシア連邦はこのままでは建国以来、最大の経済危機を迎える。ただちに経済活動を再開させないと国家そのものが死んでしまう。しかし、国民の皆さんが政府に合理的な措置を執り続けることを望んでいることもよくわかった」と述べ、MCOを大幅に緩和し1カ月の延長を決定、6月9日までMCOを延長することを正式に発表した(※現在は条件付移動制限令であるCMCO=Conditional Movement Control Orderを実施している)。



マレーシアの首都クアラルンプールでは現在、明らかに実体経済が疲弊していて、瀕死の状態だ。決して裕福とは言えない小さな商店を営む自営業者たちは、必死で生き延びているだろうことが想像できる。渋滞が風物詩と自虐ネタにされているクアラルンプールの幹線道路は、現在ほとんど車が走っていない状況だ、いかにヒトの移動が減っているかがよくわかる。

なお、この状況下でも、テーブルを並べて営業する店はむしろ少数派で、ほとんどの店は持ち帰りか配達サービス(東南アジアではGrab Food、Food Pandaというサービスが普及している)の対応に留め、自粛を継続している飲食店が圧倒的に多い印象だ。私も少しでも店が潰れないように万遍なく配達注文をし、僅かながら経済に貢献している(つもりだ)。



このように、マレーシアでは政府が国家権力を発動し、領土内に生活する私たちは問答無用で移動制限を受け、自宅待機を強制されることになった。そして、政府は経済状況が悪くなると経済活動の再開を打診したが、今度は国民が反対して政府は半自粛を提案、自粛派と緩和派の折衷案を採用していったん落ち着きを見せた。

人間の行動心理というのは、どうやら身の危険を感じると、お金よりも安全を最優先する生き物らしい。

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・民主主義のコストとは?

ヒトが動けば感染者が増える、ヒトが動かなければ経済が死ぬ。このトレードオフ(利益相反)の均衡点を模索しながら、どこの国の政府もコロナウィルスの対応策に手を焼いているようだ。

3月中旬あたりからアメリカやヨーロッパ諸国では軒並みロックダウンを開始、国境を封鎖し外国人の入国を禁止、領土内にいる国民には自宅待機を強制し、集団感染の封じ込めを行った。

3月24日の夜、日本政府は7月24日から開催予定だった東京オリンピックの1年延期を正式決定した。なるほど、この最終決定を待っていたために日本の対策が後手後手に回ってしまったのか。

しかし、この時点で日本政府は何も動かず。

そうなると、次に考えられる理由は経団連からの強い圧力だったのだろうか。日本の企業は3月31日が期末の会社が大半となっているため、期末決算が大幅にマイナス方向に下振れすることを懸念、4月以降にズレこむのだろうと思っていた。

しかし、、、。

日本政府が外出自粛要請を出したのは、それから1週間が経過した4月7日だった。日本は法制度で私権の制限を認めていないため、ロックダウン(国土封鎖)や国民の移動制限を実施できず、法的拘束力を持たない「外出自粛要請」というよくわからない形で実施された。決定の理由は「国民の皆様からの強い要望があり、政府としても感染拡大を防ぐ必要があると判断したため」だという。

もっとも、国民の要望で自粛したとなると、後から日本国民が高い道徳性のもとに勝手にやったことにされてしまいそうだが...。

物事を善悪や白黒で判断する二元論は、時として悲劇的な集団ヒステリーのトリガーを引いてしまう。

この外出自粛要請はコロナウイルス感染拡大防止のために、外出や営業の「自粛」が広く要請されるようになり、感染者や医療従事者への嫌がらせや、営業を続けるライブハウスや飲食店に苦情の電話を入れたり張り紙を貼るなど、いわゆる「自粛警察」といわれる歪んだ正義のもとに同調圧力を求める自警団を誕生させた。

自粛警察を生み出した原因は、日本人の潜在意識に備わったゼロリスク症候群だろう、長縄跳びのように縄の中の掟から逸脱した「身勝手な」振る舞いは問答無用で集団的制裁のターゲットにされてしまうのだ。これは決して偶発的な現象ではない、本来私たちのDNAに備わっていた歪んだ正義感が一気に表面化してしまっただけのことだ。

ここからわかる客観的事実は、-日本人はあまりにも極端な例だが-、人間の行動心理というのは、どうやら身の危険を感じると、お金よりも安全を最優先する生き物らしい。多くの人が経済活動を止めてでも自粛をするように政府に強権の発動を求めた。しかし、これはよくよく考えてみればおかしな話だ。だってこれは本来独裁主義の考え方なのだから。

2010年から2012年にかけて中東でアラブの春(独裁主義体制への反政府デモを起こし、民主化を求める機運が高まった運動)が起こった時に、私たちの多くはニュース報道を見ながら歓喜したはずだ。私たちが歓喜した理由は、潜在意識の中にどこか「民主主義:善 VS 独裁主義:悪」という二元論の構図があるからだろう。

今はどこの国も強いリーダーのもと、独裁的な雰囲気が求められているように思う。ただし、民主国家からは強いリーダーは制度上誕生することはできない。民主主義国家の最大の欠点は選挙によってリーダーが決まるため、2つの異なる意見が存在する場合、どちらかに偏った政策をしてしまうと次の選挙で支持者の半分が減ってしまうリスクがある。したがって、どちらの意見もバランスよく取り、双方に忖度しながら国家運営を行っていかざるを得ない運命にあるのだ。

このように民主主義は実は非常にコスト(維持費用)がかかる制度だということがわかる。それは仕組みを維持するための費用と、物事を決定するまでの時間(タイムコスト)だ。これとは反対に独裁主義はトップリーダーである独裁者の言うことが絶対の正義であり、物事を決定してから実施するまでの時間はトップダウンであっという間に実現できる。

もちろん、どちらにも一長一短がある。民主主義は相対的正義に基づいて決定がなされるため、少数派が牽制効果を持ち、結果として大きな失敗をするリスクは少ない。その一方、独裁主義は絶対的正義に基づいて決定がなされるため、トップリーダーの方向性が間違っていた場合、全員が道連れにされる運命にある。ようはリスク・リターンのボラティリティ(変動率)の問題だ。ケースバイケースではあるが、前者(民主主義)は相対的にローリスク・ローリターンな制度であり、後者(独裁主義)は相対的にハイリスク・ハイリターンな制度ということになる。

これまで民主主義国家と言われた多くの国でも、感染予防や治安維持という名のもとに、国家が私権を制限するケースが多く見られ、結果として市民はそれを受け入れているようだ。しかし、「国家による私権制限の必要性」と、「民主主義という観点から見た私権保護の必要性」、これらの両立は極めて難しいバランスの上に成り立っており、二元論で白黒つけることはできない問題だと思う。

a. 国家が私権を制限し、人々の移動制限を行い、人々の行動を監視し、伝染病に対応する社会
b. 民主主義が私権を保護し、人々は誰からも強制されることはなく、移動の自由が保障される社会

さて、果たしてどっちがいいのだろうか。

当たり前だが、世の中に絶対の正解は存在しない。

「自由の不確実性は、独裁的統治による強制された予測可能性への逆行の理由にはなりえない。前にある道のりには困難もあろう。しかし別の道を歩むことは、弾圧のまん延する恐ろしい未来に国家全体を委ねることを意味する。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表 ケネス・ロス(アラブの春の際の発言)
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・自由をめぐる究極のせめぎ合い

「非常事態」という言葉は本来の意味では「問答無用で私権を制限しなければならない状況」のことをいう。だからアメリカやヨーロッパでは早急に国境を封鎖し外国人の入国を禁止し、自国民の国内移動を制限することができた。その意味では、日本は実は非常事態宣言はしていないと見ることができる。

日本のニュースを見ていたら、自粛要請に応じないパチンコ店の名前が公表されるようだと報道された。法的拘束力を持たないただの「お願いレベル」で自粛を強要する行為が、憲法で保障された基本的人権を侵害しているのは明らかだ。また、店舗の営業者に対して自粛を要請する行為は私権の制限となり、財産権を侵害することになる。

日本国憲法第3章 国民の権利及び義務
第29条 【財産権】

第1項 財産権は、これを侵してはならない。

双方の言い分はこうだ。

パチンコ店の言い分: 「営業を自粛してしまうと、本来営業して得られるはずの利益が機会損失になる。これは営業の自由であり、私権の制限(ここでは財産権)は憲法によって認められていない。したがって営業は続ける。営業自粛を強要するなら不利益を保障してくれ。」

パチンコ嫌いの言い分: 「今は社会全体の利益を優先し、人の移動は制限するべきだ。人が密集し、閉ざされた空間の中で集団感染したらどうするんだ?営業を自粛しない店舗(不届き者)は晒して見せしめにすべきだ

休業要請に応じないパチンコ店の言い分は、国による保障は十分かどうかを考慮した結果、営業を続けたほうが経済合理的という判断だ。したがって、パチンコ店は営業を続けた。損得勘定でいえば、自粛に協力してわずかなお金をもらうよりも営業を続けたほうが経済合理的であり、感染対策は自分で取っているから問題ないのだという。たしかに「三密でない限りにおいては」と行政ははっきりと言っているので、ルールを守っている以上営業自体を禁止することはできない。

一方、行政側も市民の声がエスカレートしているので放っておくわけにはいかず、店名公表という晒し刑を執行した。その結果、店名公表ゆえに開店情報を無料で宣伝する結果となり、他県からも越境してパチンコ好きが訪れ、さらに来店者が増えることになったという。これでは何だか本末転倒ではないか?

その後、自粛要請に応じない店舗は自粛警察によって、脅迫電話や張り紙が増えたのだという...。

この理屈を当てはめて考えると、通勤電車やバスなどの交通インフラも人が密集する空間になるため、自粛せざるを得ない状況になる。つまりこれをやってしまうと、電力や水道などのインフラ、スーパーの店員さん、インターネットなどの通信インフラを担うサーバー管理者、経済の血液をコントロールする金融機関のスタッフなど、社会インフラを担う人たちの移動が大幅に制限されてしまい、インフラという最も重要な社会基盤を失うことになるからだ(*今、多くの人たちがテレワークでZOOMなどを使って遠隔業務をしているが、そこにはITインフラを担う人たちがいて始めて成立することを忘れてはならない。ヒトの移動をせずに社会を回すことは不可能で、必ず物理的に移動しなければならない人たちも一定数いるのだ。だから、外出する人々を無差別に攻撃する行為は慎んだほうがいい)。

さすがに政府も交通インフラを止めるわけにはいかず、交通インフラを止めずにパチンコ店の営業自粛を強制してしまうと、今度は民主主義の基本的理念である平等性が損なわれることになる。

なお、交通インフラを止めるわけにいかないということは、そこには一定数の不要不急の移動者も紛れ込むことになる。どんな社会でも逸脱する人は一定数必ず存在する。今回の件でいえば、旅行者やゴルフに行く人たち、河原でバーベキューをする人たちが該当することになるだろうか。

この私権の制限は非常にナイーブで難しい問題だ、ここに民主主義の限界と苦悩が見て取れる。なお、パチンコについてはうるさいという理由で私は感情的に好きではないが、自粛の強要はさすがにやりすぎだと思う。物事は常に相対的であり、絶対の正義は存在しない。物事は感情論ではなく、常に冷静に論理的かつ客観的な視野から俯瞰的に本質を考える必要がある。

では平行線をたどる両者を調和させることは可能なのだろうか?

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・ハームリダクション戦略で半自粛(能動的自粛)が最も現実的ではないか

世の中は理想主義に溢れている。「この黄色い財布を買えばあなたはお金持ちになれますよ~」、「この投資ソフトを使ったらあっという間に億万長者になれますよ~」、「このサプリメントを飲めば運動しなくてもダイエットができますよ~」、「この教材を買えば聞き流すだけで簡単に英語が話せるようになりますよ~」、こういう類の話はネット広告でもよく目にする。

人間は本能的に理想主義者だ。

なんとな~く効果がありそうだけど、それを試して効果が出た人は果たしてどのくらいいるのだろうか?何だかよくわからないものに手を出すよりも、私たちは今、冷静になって柔軟に考え、社会全体の妥協点を探っていく方がより現実的であるように思う。

上記のツイートにあるとおり、京都大学の藤井教授がツイートしたコロナ感染のヒストグラムは、オーバーシュートした自粛要請に疑問を投げかけたものだろう。

この図から読み取れる客観的事実は以下のとおりだ。

死亡者数: 60代~80代に多く、50代以下はほとんどいない
重傷者数: 60代~70代に多く、50代以下はほとんどいない、30代以下はほぼいない
軽症者数: 20代~50代に多く、10代以下はほとんどいない、60代~80代は20代~50代の半分程度

藤井先生は自身の見解を述べていないが、「50代以下はほとんど影響がないので、外出して経済を回し、60代以上は極力外出を控えていれば、実はコロナウィルスは言うほど怖くないんじゃないのか?」ということだろう。もちろん、ウィルスを正しく恐れることは大事だ。

ただ、、、1人の感染者も出ないように自粛するのは理想的だが現実的ではないだろう。こんな事をマジで続けていたら、コロナウィルスで死ぬ前に、多くの失業者が街にあふれて経済的に死んでしまう人の数のほうが増えてしまう。

今後予想される第二波、第三波が来るたびに自粛を断続的に行うことは現実的ではないだろう。

上記の藤井先生の「半自粛」の内容を詳しく読んだわけではないが、おそらくハームリダクションの考え方をベースにしていると考えられる。

ハームリダクション(Harm Reduction)とは有害なもの(Harm)を軽減する(Reduction)という意味の言葉で、主に薬物療法に使われる言葉だ。この考え方の基盤となる思想は「有害となる問題を完全に解決させることを最初から期待するよりも、その行為を止めることができないのであれば社会全体で毒性を弱めよう」というリベラルな考え方に基づく。

私は10代の一時期をヨーロッパで過ごしたが、それはそれは想像を絶するような文化に放り込まれたことを覚えている。私はスイス、フランス、オランダに滞在したが、ここで大きなカルチャーショックを覚えた。

例えば、フランスの学校では授業が終われば先生は必要に応じて生徒たちにコンドームを配布する。思春期の子どもたちにセックスをするなと言っても、どうせ行為自体を止めることはできないからだ。それならば、個人の自由意思を尊重し、せめて望まれない妊娠を予防したり、性病が社会全体に蔓延しないように教育したほうが現実的だという考え方に基づく。なお、路上売春者に国がコンドームを配布して「適切な」予防策を採用している国もある。以外と思うかもしれないがアジアではシンガポールが国家規模で管理売春をして性病の感染防止に努めている。

また、オランダの学校では授業が終われば先生は必要に応じて生徒たちに注射針を配布する。ドラッグが好きな子どもたちに薬物をやるなと言っても、どうせ行為自体を止めることはできないからだ。それならば、個人の自由意思を尊重し、体育館の裏でまわし打ちをしてHIVが社会全体に蔓延しないように教育したほうが現実的だという考え方に基づく。なお、隣国スイスではヘロインさえも合法化されており、現在は街を歩いても麻薬中毒者を見かけることはなくなった。薬物医療センターにいけば、保険が適用され、「適切な」用法容量を調整してもらいながら心置きなくキメられるのだから。

私が日本で「普通の」学生生活に戻った時、今度は逆カルチャーショックに悩まされた。大人たちは言う、「未成年で責任を取れない年齢なのにセックスをしてはいけない」「ドラッグは人間をダメにするし、法律で禁止されているから手を出してはいけない」と。私が感じた大人たちに対する違和感の正体とは「それらを子どもの本能をコントロールさせるための十分な理由にはなっていなかった」ということだった。ようはリスクは自己責任でコントロールするものではなく、リスク自体を全否定して禁止するのが日本人らしい。不届き者を受け入れて共存するという意識はなく、問答無用で制裁されてしまうのだ。

この経験で私が学んだことは、「日本人というのは問答無用でリスクに対して過剰に反応する強迫性障害の資質を兼ね備えた人々」であるということだ。

そりゃそうだよね、だって大人たちは子どもの頃、ナガナワトビヲヤッテソダッタンダカラ。

***

上記は多くの人にとっては非常に過激に感じる実例かもしれないが、こういうケースは私たちの身の周りにもたくさんある。

例えば、私たちは車を運転するときには保険に入るし、運転席にはエアバッグを取りつける。自動車保険に入るのは事故に遭った際や誰かを巻き込んでしまった時のリスクを最小化するための手段、運転席にエアバッグをつけてシートベルトを締めるのは、万が一事故に遭ってしまった時に死亡リスクを最小化するための手段だ(※もっとも、保険に入ったから事故を起こすことを正当化してよいことにはならないし、薬物が合法化されているから依存症そのものが肯定されるわけではない)。事故に遭うのが怖いからといって車を運転するのをやめることはできない、それならばリスクを最小限にとどめながら運転しようという考え方のほうが現実的だ。

まさか皆さんは、飛行機が落ちてくるのが怖いから、外に出ないでシェルターに籠って暮らそうということにはならないだろうと思う。だけど、なぜかコロナ問題についてはゼロリスク症候群がオーバーシュートして(過剰に行き過ぎて)しまい、自粛警察を生み出す源泉になってしまったことは言うまでもない。

少し落ち着いて考えてみてはどうだろう?マスクをつけない人を不届き者と定義するならば、マスクをつけない人に感染させないために私たちはマスクをつける。マスクをつけない人から感染しないために私たちはマスクをつける。どんな社会にも一定数ルールを逸脱する者はいる。だけど、それを無差別に攻撃するのではなく、不届き者を受け入れ、共存を目指せる豊かな社会であってほしいと願っている。

0か100、善か悪かを巡る二元論でこの問題の本質を解決しようとすることは、非常に危険だ。コロナ禍の外出制限は、自粛要請の圧力をかけると、それを破る人々がかえって地下に潜ってしまい、見えないところでより深刻な二次被害、三次被害を拡散させてしまいかねないからだ。

民主主義とは本来私たちを豊かにするためのイデオロギー(政治理念)であるはずだ。それは賛成派と反対派、多数派と少数派に常に意見が分かれ、絶対の正解が存在しない世界でもある。これが民主主義の最大のコストであり、自由をめぐるせめぎ合いは今日も続く。

おそらくコロナ禍がひと段落したずっと後に、私たちは社会全体でこの問題について議論する必要があると思う。

ただ、これを読んでいるあなたが自粛警察ならば、やみくもに歪んだ正義を振りかざす行為は控えてほしい。災いは巡ってやがて自分に跳ね返ってくる。

(ツギニナガナワニヒッカカッテシマウフトドキモノハアナタカモシレナイ)

井戸に唾を吐く者は、いつかその水を飲まなければならないのだから。

アフターコロナの世界を考える①~不景気の株高、二番底は来るのか~


子どもの頃、私が思い描いた2020年とは、それはそれは素敵な未来がやってきて、私たちの暮らしはさぞや快適になっているだろうとぼんやり考えたことがある。

しかし、残念ながら私の理想は見事に裏切られ、未来はそれとは真逆の物語を私たちの前に連れてきてしまったようだ。今年はいつになく、不穏な1年になりそうだ。

でもちょっと待った、、、悪いことの後には良いことがあると楽観的に考えるのも人間に与えられた才能かもしれない。リスクもリターンもその本質は「変化」や「変動」の中に生きているのだから。

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写真はコロナショック前の1月に行ったペナン島。コムタ最上階にあるレインボー・スカイウォークからの眺め、ガラスが割れたら二番底は地上だ

***

私は今、このブログを現在の居住国であるマレーシアの首都クアラルンプールで書いている。

2019年12月31日、東京から遊びに来てくれた友人らと合流し、遅めの夜食をともにした。これから私たちはKLCC地区にあるペトロナスツインタワーの前で新年を迎えるのだ。街は2020の文字で埋め尽くされお祝いムード全開だ、私たちはあと数時間後には20年代という新たな時代を迎える。夜食を少し離れたブキビンタン地区・アロー通りの屋台でさっさと済ませると、私たちはペトロナスツインタワーへ向かって速足で歩き始めた。

歩きながら友人が言う。

友人:「ねぇ、ユーディー知ってる?中国の武漢で新種のウィルスが発見されてちょっとした騒ぎになってるみたい。どう思う?」

私:「最近香港で民主派のデモがあったでしょ、中国政府がネタで大げさに言ってるだけだろ?どうせすぐ終わるよ。それより急がないと日付変わっちゃうよ」

到着したツインタワーの前の広場はとんでもない人だかりで「足の踏み場もない」というのは正にこういう事を言うのだろうと思った。久しぶりに東京の通勤ラッシュ時の満員電車に乗った気分だ。笛を吹く人の音がうるさいわ、人は密集するわ、一度止まったら後ろから押されるわ、物好きというのはこんなに多いのかと驚いた。

私たちもその、、、物好きの一派なのだが...。

元日の夜空に向かって天高くそびえたつツインタワーはまさに産油国マレーシアの象徴と呼ぶにふさわしい圧巻の雄姿を見せる。東マレーシアの沖合に沈む海底油田、黒くて重い液体のゴールドは見事な鉄とセメントの塊を首都クアラルンプールのど真ん中に積み上げてみせたのだ。ツインタワーの間から打ちあがる花火を見ながら、私たちのテンションは最高潮に達した。

petronas

年末年始の正月休みということもあり、友人たちはしばらくクアラルンプールに滞在した後日本に帰って行った。しかし、この時はまさか数か月後に世界全体がこんな状況になるなんて私たちの誰が予想しただろう?

今になって冷静に振り返ると、もしコロナウイルスがすでにマレーシアに侵入していて、無症状感染者が拡大していたとしたら、あの密集現場で強烈なアウトブレイク(感染拡大)が発生していたかもしれない。

人々は歓喜に沸き、店は朝まで大繁盛、不穏なニュースにも金融市場はわずかな下げ幅にとどまり、特段大きな反応は見られなかった。

***

・壮大なるライヤーゲームとシーソーゲーム

金融市場の参加者は概して楽観的だ。そりゃあ上がる!上がる!と言い続けないと商売にならないからだ。

事実、コロナウィルスの震源地となった湖北省武漢が1月23日に都市封鎖(ロックダウン)されても、1月末から2月初旬にヨーロッパにパンデミックが波及して実体経済が麻痺してもなお、株式市場や為替市場には大きな影響は出なかった。むしろ2月12日のダウ工業平均は市場最高値29,568ドルをつけたほどだ。

WHOのテドロス事務局長が胡散臭い顔で「大したことはない!」と言っても、中国の習近平国家主席が「中国はコロナウィルスに勝利した!」と言っても(いや、誰がどうみても大したことになっていたはずだが)、ダウ工業平均や日経平均株価は緩やかに上がっていった。

これだけの壮大なライヤーゲームでさえ相手が人狼であると認識しながら、それでも意図的に株価を上げ続けなければならないのがアメリカ大統領の宿命だ。

それとも、実体経済と金融経済はだいぶ昔から主従関係が逆転してしまっているから、実体経済の悪影響はさほど金融経済に影響を与えないってこと?


えっ、えっ、そうなの...

ところが、2月20日を境に潮目が一気に変わった。それまでは相対的に円が売られドルが買われていたので、これは緩やかに回復を期待するリスクオン(まぁ、中国とヨーロッパなんか色々大変そうだけど、すぐに回復するっしょ)の流れだった(注:最近はドルがゼロ金利なので低金利の円をわざわざ借りてくる投資家は減ったのであまり当てはまらなくなってきた)。2月20日過ぎあたりからリスクオフのムードが漂い始めたのはアメリカ本土へとパンデミックが急激に拡大しつつあったからだ。

今回のパニックでひとつ勉強になったことは、アメリカが当事者(被害者)になるまでは、たとえヨーロッパでパンデミックが起こっても対岸の火事として認識され、アメリカ合衆国の基本的なスタンスとして、世界の深刻な問題としては取り扱わないらしいという事実だ。これは今後、パンデミックや戦争が起こった有事の際に参考になると思う。

私は正直、この地球全体を巻き込んだコロナウィルスという存在が金融経済にどんな影響を及ぼすのかとても興味深く眺めていた。というのも、私はこれまでサブプライムショック(2007年)やリーマンショック(2008年)を金融取引の現場で経験してきたが、いずれも金融経済がクラッシュしてから実体経済に波及し始めるのは9か月前後であることを経験則として持っているからだ。

つまり、株価大暴落が起きようとも、あの時、金融街のオフィスを一歩出れば人々は普通に生活をしていたし、会社やお店がバタバタと倒産し始めるまでには9か月間のタイムラグがあったからだ。2016年3月に石油価格が暴落した時も、マレーシアやインドネシア、アラブ湾岸諸国など産油国の実体経済に影響が出始めたのは、やはり9か月が経った頃だった。

ところが、今回のコロナショックは先の体験とは真逆の現象で、先に実体経済を直撃した。これは私にとっては初めての経験だ。サプライチェーン(供給の連鎖のこと。製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れのことをいう)は強制的に分断され、国際線は運航休止に追い込まれ、国境が封鎖され、先に実体経済がやられた(ヒト・モノの移動制限、カネの移動だけはできるがそれだけでは経済を回せない)。

だからどこの国も「現在我が国は戦時下にある」という表現を使っているのだと思う。だって、私たち人類はここ70年以上、地球全体を巻き込んだ世界大戦など経験していないのだから、そういう表現にならざるを得ないんだろう。しかも、さらに厄介なのはウィルスという見えない敵が相手だということだ(当事者のウイルスたちに損害賠償できないから、アメリカやヨーロッパは中国に矛先を向けて「使用者責任」の間接適用を巡って躍起になっているようだ...)。


さて、金融マーケットはその後、約1か月間かけて坂道を転がり落ちて行った。

2月12日のダウ工業平均は市場最高値29,568ドルをつけた後、3月23日に18,213ドルまで急落。3月9日と12日の下げ幅が凄まじく、代表的な株式指数であるSP500の暴落を受けてサーキットブレーカーが発動、市場取引が一時停止した。この時点でSP500を基準に投資家の恐怖を指数化したVIX指数(恐怖指数)は3月18日のロンドン市場オープン直後に85.47という驚異的な数値をつけた(これはリーマンショックの2008年10月につけた史上最高値89.53に迫る数字だ。普段は14~22あたりを行ったり来たりする)。

日経平均株価は2月6日に23,995.37円の直近高値をつけた後、3月19日にかけて16,358.19まで急落。ちなみにこの時のドル円の為替の動きを調べると2月21日に1ドル112.186円をつけた後、3月10日に1ドル101.201円まで円が買われた。

ダウ工業平均株価: 
29,568ドル(2020年2月12日)→
18,213ドル(2020年3月23日)

日経平均株価: 
23,995.37円(2020年2月6日)→
16,358.19円(2020年3月19日)

ドル円: 
1ドル=
112.186円(2020年2月21日)→1ドル101.201(2020年3月10日)


VIX(恐怖)指数: 
14.17ドル(2020年2月17日)→
85.47ドル(2020年3月18日)

※上記は直近最安値と直近最高値を比較したもの、興味深いのはドル円と日経平均株価の転換点がずれて相関が崩れている点だ。

さすがにアメリカ政府もこの状況はマズいと思ったのか、3月25日、トランプ政権と議会側は新型コロナウイルスに対応するため、2兆ドル、日本円でおよそ220兆円の緊急経済対策法を成立させた。あまりにも早い決断だったと思う。

”ゼロ金利となった今、長年待っていたインフラ法案をやるときがきた。これは大きく大胆なものであるべきだ。220兆円相当で、雇用と合衆国のインフラを再構築するのだ!”

第45代アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ

つまり、3月25日の時点でアメリカでは金融緩和が行われることが決定したことになる。金融緩和とは簡単に言えば、お金をどんどん刷りまくって市中に流し、企業や個人の経済破綻を防ぐための刺激的な金融政策(劇薬)だ。

モノの価格は常に需要と供給によって決まる。

これはすなわち、市中に出回るお金の量が増えるわけだから、お金そのものの価値が下がることを意味する。カネの価値が下がるということは相対的にモノ(株式や不動産)の価値は上がることになる(もっと正確にいえば、カネの価値を無理やり下げたので、モノの価値が上がったように見せることができる)。結果としてその後、アメリカのダウ工業平均株価は反発して上がった。そして、アメリカドルの量が増えても日本円の量は変わらないので、日本円の価値も相対的に上がっていった。

これに追随して、日本でも安倍首相が4月7日に景気刺激策として108兆円の経済対策を発表し、日経平均株価は上がっていった(先述したが、上がったように見せた。現在、日本の年金運用機構GPIFのブレークイーブン(損益分岐点)は19,000円前後に位置しているという)。今度はアメリカドルの量に対して日本円の量が増えることが決まったので、日本円は売られ、ドルが上がっていった。

本質を考えれば、両国政府がやっていることは、シーソーにバケツを置いてお互いに水の量を増やしごっこしているだけなのだ。頭のいい大人たちもやっていることの本質は子供時代の遊びと何ら変わらない。

***

・まさかの石油価格史上初のマイナス決済

その後、4月20日のNY原油先物取引市場で史上初の緊急事態が発生した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物5月限(ぎり)は55.90ドル安のマイナス37.63ドルで取引が終了した。なんと一時マイナス40.32ドル!?にまで下落したのだ。


そもそもの下落要因として考えられるのは、パンデミックによる地球規模での経済活動の低下を受けて原油そのものの需要が大きく後退したためだろうが、原油そのものが供給過多となりつつあった状況に追い打ちをかけるように、飛行機は飛ばないわ、人は移動しなくなるわで、石油そのものの需要が大きく後退してしまい、先行きの需要が見込めなくなったことだろう。


この時、アメリカ国内ではすでに原油在庫が貯蔵施設の能力の限界に達するとの見方が強まった。ただでさえ、供給過多で原油在庫がパンパンになっていた上に、実需が一気に消えてしまい、しかしそれでも採掘を止められずに供給は続くことになるのだから、「もぅお金を払うので頼むから引き取ってください」という意味不明の事態になったわけだ。

WTI先物は先物取引のため「精算日」という概念が存在する。2020年5月限(ぎり)の精算日は4月25日となり、3営業日前となる日が取引最終日となる。つまり、5月限の取引最終日は4月21日となる。


原油先物取引の決済方法は反対売買によってゲームが終了する。取引最終日にポジションを保有していた場合、最終的には反対売買で強制決済される。それはそうだ、まさか一般の投資家や機関投資家が現物取引をするわけではないでしょ!?そうでないと配達員のお兄さんがインターホンを鳴らして原油を自宅や会社に持ってきてしまうことになる(どこに保管するんだよ笑)。私はこれまでガチの原油を買って、自宅で保管している投資家にはお会いしたことがない。

今回は取引最終日が明日に迫り、お金を払ってでも引き取ってくださいという事態になったのが、マイナスとなったパニック要因だと考えられている。

石油の供給者であるOPECプラスは5月1日から世界の原油供給の約1割に相当する日量970万バレルを削減する協調減産を開始し、現在の石油価格は落ち着きを取り戻しつつある。

オイルの実需を試算すると、コロナの影響で現在3,500万バレル/日の実需が消失したといわれている。OPECプラスが減産に合意した分が970万バレル/日。差分は2,530万バレル/日だから、この量を追加減産しないかぎり、価格がコロナ前の水準に戻ることはないだろう。

このまま需要環境が改善し、OPECプラスの協調減産が行われた場合、年内には今度は供給不足により供給<需要となり、過剰在庫の取り崩しが始まるかもしれない。ただしその間に原油価格が上昇してしまうと、今度は減産合意が破棄され、再度受給が崩れるシナリオも十分にあり得る。

ここでも大人たちのシーソーゲームは続く。

***

・コロナショックは何が着火点で誰が大やけどを負い、誰がケツを拭いたのか?

先物市場というのは世界中のどこかのマーケットで売買が常に行われていて、毎秒ごとに値段が上がったり下がったりする。すなわち相場は常に変動している。

価格が上がり過ぎればいったん下げて調整が入るし、下がり過ぎればいったん上げて調整が入るし、少しずつ高値と安値を切り上げ(切り下げ)、小さなレンジ相場を形成しながらやがてトレンドを形成してどちらかの方向に向かっていく。そりゃそうだ、市場取引は買い手と売り手がいて成り立つわけだから、少しでも高くなれば売り手は増えて買い手は減るし、少しでも安くなれば売り手は減って買い手は増えるわけだから、バランスを取りながら上下に変動を繰り返していく生き物だ。

少し難しい話になるが、相場は長期・中期・短期の3つの波で形成されると言われる(ダウ理論)。長期の波は中期の波の連続によって形成され、中期の波は短期の波の連続によって形成される。月足・週足・日足から4時間足、1時間足、15分足、5分足、1分足、ティックチャートまで縦に並べてみるとこの現象がよくわかる(いわゆるマルチタイムチャート)。

ところが、今回のように一気に着火点のトリガーが引かれると、小さな波の動きが早すぎて誰も手に負えなくなる(そんな状況でも3つの波の法則はしっかり当てはまっている。が、小さな波が大きすぎるゆえに1つ上の時間足がもはや津波級レベルになる)。例えるなら、この状況でトレードするということはサーファーが津波の上でサーフィンをやっているようなものだ。

ちなみに、、、私は6月限の原油で1,000ドルだけフルレバレッジでショートポジションを取ったが、数秒で津波にさらわれてしまった笑 火遊びはやるもんじゃないな笑笑笑


さて、本題。この暴落局面で超ド級の売りポジションを持ったのは、いや持たざるを得なかったのは誰だろうか?

結論先行でいえば、私は産油国の政府系ファンド(ソブリンファンド)とヘッジファンドや投資信託が主体だったのではないかと思っている。

先日、ノルウェーの政府系ファンドが4兆円の換金売りをするとのニュースを読んだ。ノルウェーは北海油田を擁する北欧最大の産油国だ。この国の政府系ファンドが金融マーケットに与える影響は極めて大きく、世界最大級の機関投資家として知られている。通常、産油国は1バレル数十ドルを想定して国家予算を組んでいるわけだから、原油価格が今回のレベルにまで暴落してしまうと金融資産を売って手元に現金を確保せざるを得なくなる。なるほどなるほど、ノルウェーでさえこの状況なのか...。

先月、大手格付機関であるS&P社は、産油国の債券格付けを軒並み段階的に引き下げた。国家の信用リスクが一斉に低下した格好だ。

私が今回、産油国の中で最も甚大な影響を受けた国は、サウジアラビアではないかと思っている。聞くところによればサウジアラビア政府は1バレル70~80ドル程度を想定して国家予算を組んでいたらしい。

サウジアラビアは若きプリンスであるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子のもとで石油に依存する従来の経済構造から脱却し、新たな産業開発を多角的に進める計画(ビジョン2030)を急ピッチで進めている最中だ。それが突然のコロナショックという最悪のタイミングで航空機が飛ばずに石油の需要が激減、原油価格の暴落、さらにはメッカ巡礼の観光需要消滅というトリプルパンチで、相当手痛いダメージを受けているはずだ。ようは副業を増やして別の手段で儲けようと思っていた矢先、本業がピンチになってしまい、副業どころではなくなってしまった状態だ。

サウジアラビアは採掘した原油を輸出して外貨を稼ぐ収益モデルに特化した国であり、政府は国民の生活を保障することで治安を保っている。ゆえに、国民の70%は公務員ということになる。サウジアラビア政府は現行の5%の付加価値税(消費税)を7月から3倍の15%に引き上げることを問答無用で決定、さらにすべての公務員に対して給与引き下げという強硬策に出た。これ、普通に日本だったら暴動が起こるレベルだと思う。

上記から、産油国、とくにサウジアラビア政府の換金売り(金融資産を売ってドルを買う動き)が暴落の大きな原因だったと考えている。

もうひとつはヘッジファンドや投資信託の換金売りが原因だったのではないかと思う。ヘッジファンドは本来、「相場の上下変動(βリスクという)に左右されず、マーケットが上がっても下がっても絶対収益(αという)を獲得しますよ~」という謳い文句で投資家からお金を集め、適切なリスク・リターンのポジションを設計して運用を行っている(はずの)プライベートファンド形態の企業だ(ヘッジとは垣根という意味なので、本来リスクは限定されているはずだ)。ところがその実態は市場変動による利益を積極的に取りに行き、結果として失敗、最悪の場合破綻に追い込まれるケースが後を絶たない。ヘッジファンドは一般の投資信託と異なり、ショートポジション(売りから入るという意味)を持つことができるため、下落局面でも積極的にリスクを取りに行き、そこで勝った負けたのゲームをしているのが現状だ。

コロナショックが起こる前、ヘッジファンド勢の多くは間違いなくダウ工業平均株価の上昇による恩恵を受けていたはずだ。強いアメリカを目指したトランプ大統領、2016年秋の大統領選挙勝利時のダウ平均株価は19,827ドルだった。それが2020年2月12日には史上最高値を更新し続け、29,568ドルまで引き上げたのだ。つまり、一方通行の上昇トレンドが続いたわけだから、買いのポジションを持ってさえいればヘッジファンドは普通に利益が上がっていたことになる。

トランプ大統領のやった政策は非常にシンプルだった。彼の政策のもとで史上最高値を更新し続けることができた理由は、史上最高値を更新した直後に中国に追加制裁をかけて譲歩を引き出すというものだった。ぜひ確認してほしい、トランプ大統領が中国に追加制裁をかけるコメントをし、強いアメリカを演出したのは、いつも史上最高値を更新した直後だったことがおわかりいただけると思う。

そして間もなく念願の30,000ドルに到達する目前の2月上旬、不幸にもコロナウィルスのパンデミックがアメリカ国内で発生してしまった。3年かけて彼が築き上げた強いアメリカの株価水準は3年前の基準をわずか1か月で割り込んでしまった、そりゃあトランプさん激おこプンプンでガチギレするわな。

ダウ工業平均株価: 

19,827ドル(2017年1月20日)→29,568ドル(2020年2月12日)→18,213ドル(2020年3月23日)

DOW

今年2020年の秋には2期目の大統領選挙が控えている。コロナショックはトランプ政権に大きな悪影響を与えたことは間違いないだろう。ヘッジファンドや投資信託はプロップファーム(自己資金を運用する会社)や個人投資家と違い、含み損を抱えて投資家から解約を迫られてしまうと、相場の回復を待たずにポジションを決済しなければならない運命にある。株価が下がる→含み損を抱える→解約を迫られる→安値でポジションを決済する→また株価が下がる、という負のスパイラルに突入したメカニズムはまさにこれが原因だろう。つまり、トランプ政権はヘッジファンドや投資信託の連鎖倒産を防ぐために株価を上げる政策を速やかに実施する必要があった。

金融緩和の実施により大量のカネを市中にばらまいたのは、本当に失業者たちを守るためだったのか、それとも...?

これ以上の真実は私にはわからない...。


”合衆国は必要としている人々にお金を与えよ。そして速攻でやるんだ!”

第45代アメリカ合衆国大統領 ドナルド・トランプ


***


・半値戻しは全値戻し、二番底は来るのか?

ダウ工業平均株価や日経平均株価は3月下旬に直近最安値をつけた後、大きな波乱もなく、順調に上昇が続いてきた。世界景気が急激に悪化する中、いわゆる「不況下の株高」という不気味な状況が続いている。

まさに金融緩和という劇薬が功を奏した格好だ。実体経済が動いていないにも関わらず株価が上がっていくのだから、いかに現在のお金の価値が下がっているのかがわかるだろう。

最近、ZOOM飲み会が流行っているようで、機関投資家(いわゆるヘッジファンドや保険会社など)の運用担当者との会話で必ずと言っていいほどホットトピックに上がるのが「二番底は来るのか?」という話題だ。

これは強気派と弱気派に意見が真っ二つに分かれるが、通常シナリオはジリ上げで二番底は来ないだろうという意見が多い。私も来ないだろうと考えている(注:予想と希望は違う)。

その根拠は、実体経済が少しずつ回復基調にあること、ではなく、先述したとおり、お金の価値が極端に下がりすぎてしまっている状況なので、相対的に株価は下がりずらいという消極的な見方だ。だってバケツの中に水を入れて水面の位置が上がってしまったら、そこに浮かんでいたブイを水中にある元の位置に沈めるのは逆に難しくなってしまうわけだから。それでも、気になる点は(経験則になってしまうけど)、今まで二番底をつけずに元の価格まで回復したマーケットは見たことがない。この点は注意しておかないと。


これまで歴史が何度となく証明して来たように、相場が上か下に動くためには必ずそれ相応のエネルギーが必要になる。だから、どちらかの方向に動くためには、一度逆方向に引き付けて強烈なエネルギーをため込む必要がある(弓矢と一緒の原理)。

私たちが子供の頃、チョロQというゴムのゼンマイを後ろに引き付けてミニカーを走らせる超絶アナログ式のおもちゃがあった(今もあるのかな?)。このチョロQの原理はまさに弓矢の原理と一緒で、金融マーケットで格好良くいえば、「押し目(上昇局面の調整)」とか「戻り(下落局面の調整)」というやつだ。


元の価格に戻ろうとする力は3月下旬の金融緩和決定のニュースから一気に上方向に爆発し、現在は半値戻し(回復の道半ば)にある。ここから上がっていくには、おそらく一筋縄ではいかないだろう。上に突き上げ、下に戻されといった変動を繰り返しながら(いわゆるダマし上げ)、少しずつ売り板を崩し、薄くなったタイミングで高値を切り上げながら全値戻しをしていくのではないだろうか?

上がるか下がるか、それよりも投資は「いつ買うか・いつ売るか」のタイミングが難しい(私も金融緩和のニュースが流れた時に試し玉を入れたけど、一気に半値まで戻ってしまったのでこれ以上買うのをためらっている。もっと買っておけば良かった)。

以前もこのブログに書いたと思うんだけど、金融緩和が始まった時点では手元に現物のお金がない状態で株価だけが上がっていく。つまり、ここでは信用取引が行われたり先物取引が行われ、実体以上の数字だけがマーケットに入りこみ取引量を膨らませる現象が起こっている(モノを持たずに証拠金を積んでポジションだけ持たせてもらっている状態。値動きの部分だけを切り取った商品といえばわかりやすいと思う。ようは水は入っていないけど、水がある「テイ」で水面のブイだけが上がっていく。これがデリバティブという金融商品の本質だ)。

マーケットの共通ルールとして信用取引の決済期限は6か月と決まっており、先物取引でも大きな限月は3・6・9・12月と年4回に分かれる(メジャーSQという)。大口の投資家がマーケットで売買をするときはだいたいこのどっちかの商品でポジションを取ることが多い。

さて、証券会社のホームページを見るとざっくりと以下のようなルールがわかりやすく書いてある。

先物取引は、取引できる期間が決まっています。期日の前営業日を取引最終日として、それまで取引が行われます。期日当日は最終決済のみ行われます。これを限月取引(げんげつとりひき)といい、限月とは先物取引の最終決済月を指します。

例えば、日経225先物は、3月、9月のうち直近3限月と、6月、12月のうち直近16限月、日経225miniは3月、9月のうち直近3限月と、6月、12月のうち直近10限月およびそれ以外の月のうち最も近い3限月が取引所で取引されています。

先物取引(※)は、各限月の満期日(SQ日)である第2金曜日の前営業日が最終売買日となります。

※NYダウ先物は、原則、各限月の満期日(SQ日)である第3金曜日の前営業日が最終売買営業日となります。

松井証券ウェブサイトより

今回の戻り相場を形成させた商品は大きく3つにわかれ、それらは以下の商品が利用されたと推測する。

ダウ工業平均株価: 18,213ドル(2020年3月23日)

ダウ平均現物(信用取引)・・・2020年9月22日までに強制決済が必要(6か月で反対売買が必要)

2020年9月限のダウ先物・・・2020年9月18日までに強制決済が必要(1か月前の25日の3営業日前)

2020年12月限のダウ先物・・・2020年12月17日までに強制決済が必要(1か月前の25日の3営業日前)

いちおう日経平均も書いとこうか。

日経平均株価: 16,358.19円(2020年3月19日)

日経平均現物(信用取引)・・・2020年9月18日までに強制決済が必要(6か月で反対売買が必要)

2020年9月限のダウ先物・・・2020年9月10日までに強制決済が必要(1か月前の25日の3営業日前)

2020年12月限のダウ先物・・・2020年12月10日までに強制決済が必要(1か月前の25日の3営業日前)


上記のあたりで一度利確するかショートポジションを持てというわけではないけど、だいたい、どのあたりで大きな調整が入りそうかの判断材料にはなると思う。

参考:過去の結果

・安倍政権誕生(アベノミクス開始):2012月11月19日→2013年05月23日、日経平均株価が大幅調整(6か月と4日後)。


・日銀による異次元の質的・量的金融緩和発表:2014年10月31日→2015年3月21日、日経平均株価が大幅調整(
5か月と20日後

・トランプ政権誕生(トランプノミクス開始):2016年11月11日→2017年05月17日、ダウ平均株価が小幅調整(6か月と6日後)※この相場は前後に調整が入ったパターン。


相場は上がると思っているけど下がるほうにかける投資家の方はぜひ私の以下の記事を読んでみてほしい。この記事に出てくるナシーム・ニコラス・タレブ氏がアドバイザーを務めるテールリスク・ヘッジファンドは今回のコロナショックの中、3月の運用成績がプラス3,612%とのこと。ダウ工業平均が史上最高値をつける中、逆バリでショートポジション(もしくはプットオプション?)を積み上げ、含み損に耐えながら暴落を待っていたと推測できる。すげぇすげぇ!

http://yudypon.blog.jp/archives/20141116.html

以上、投資は自己責任で。

”強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく”


アメリカの著名投資家 ジョン・テンプルトン

※過去の景気後退

1987年: ブラックマンデー・・・G7によるルーブル合意の協調政策の破綻

1997年: アジア通貨危機・・・新興国通貨の急落と外貨建て借金の膨張と資金引き上げによる深刻な景気後退

1998年: LTCMショック・・・米大手ヘッジファンドの経営破綻

2007年: サブプライムショック(BNPパリバショック)・・・傘下のミューチュアルファンドの解約凍結による信用不安

2008年: リーマンショック(AIGショック)・・・米大手投資銀行の経営破綻

2017年: ←来なかった→

2018年: ←来なかった→

からの

2020年: コロナショック・・・疫病蔓延による実体経済の停止と実需消滅による石油価格暴落

↑今ここ

***


狂喜乱舞か狂歌自滅か?~ビットコイン相場はバブルか~


ビットコインがヤバイ

ついにチューリップバブルを越えて、歴代トップになってしまったらしい。

CONVEY

出典:「convoyinvestments.com」

というか、もはやキチガイの領域だと思う

しょせん取引の手段のひとつに過ぎない仮想通貨がなぜこんなに高騰しているのか?

完全にマネーゲーム化していて、なぜ上がっているのか合理的な説明をすることは不可能だ。


バブルというのはいつもそうだ。

買うから上がる、上がるから買う


それだけのことだ、理論的根拠は何も無い。。。

果たして、

ダンスフロアのライトが消灯した時、最後まで踊り続けているのは誰なのだろうか?


BTCUSD
↑BTC/USD(1212日現在

BTCJPY
↑BTC/JPY(1212日現在


ビットコインは今年(
2017年)に入ってから10倍の値上がり、先週(12月第1週)だけでも2倍の値上がりを果たした。

201712月現在、株式や為替などの伝統的な資本市場が比較的穏やかな動きを見せる一方で、ビットコイン市場は明らかに異常な変動率を記録している。わずか数日で価格が2倍にも3倍にもなり、その後平気で3040%下落したりする。

ビットコイン相場をモニタリングしていると、もはや株式や為替などが止まって見えてしまうレベルだ笑

***

さて、歴史を紐解いてみると、

まず、先物取引が始まりレバレッジ規制が緩和され、大口参加者による空売りが可能となる。

次に、それまで投資に縁がなかった一般人がこぞって話題にし、取引を始める。

最後に、現状はバブルではないと唱えだす者が急増し、大衆から一定の支持を集める。


現在のビットコインの状況を見ると、バブル終焉の時期に見られる特徴とすべて重なる(ような気がする)。

現在のビットコインの現状を考察すると、「通貨」というよりも、一部の素人による投機目的でのトレーディングが主体であり、チューリップバブルというよりもチューリップそのものだと考えたほうが適切な表現ではなかろうか...。

"ビットコインは通貨ではない、チューリップだ" 

ECB副総裁


以下、何点かビットコインについての考察。

その前に...。

***

【貨幣の本質とは】

まず、貨幣の本質は「商品」ではない。貨幣の本質とは「信用」である。

各国が発行する法定通貨には「金利」がつき、長期で保有することにより一定のリターンが期待できる。なので配当益(インカムゲイン)を目的とした保有目的で活用することができる(日本円は相変わらず低いが)。

一方、ビットコインは現在「貨幣」として認められる段階には至っていない。ビットコインの本質は「商品」であり、金利という概念が存在しないため、長期的に保有していても利子がつかず、売買益(キャピタルゲイン)狙いの取引が主体とならざるを得ない。これはゴールドだって同じだ、ただ持っているだけでは金利がつかないのだから、どこかのタイミングで売却する必要がある


1929
年にニューヨークのウォール街から始まった世界恐慌の影響により、1931年に日本政府は紙幣とゴールドとの交換を停止した。その後、1942年に公布された日本銀行法により、名実ともに金本位制を離脱し、現在につながる管理通貨制への移行を果たした。

つまり、今日ではもはや紙幣や硬貨はゴールドとの交換は約束されなくなってしまったわけだが、今でも
1万円札には1万円の価値がある。なぜなら、私たちがその紙切れに1万円の価値があると本気で信じているからだ。

1万円札で1万円分の買い物ができる理由は、私たちみんながそれを1万円の価値があると信じているからだ。ビットコインは「商品」であって「貨幣」ではない。果たしてビットコインはその段階まで到達できるのだろうか?

ヒトは本来的には物々交換をする生き物だ。

しかし、物々交換が社会と経済の根幹をなしていた時代は経済史を読む限り、一度もそのような事実は存在していない。
もっとも、私たちがまったく物々交換をしないわけではない。交換手段として物々交換を行ってきた民族は一定数存在するし、私たちだって時には物々交換を行う。


人類が進化の過程で記録を残すようになったのは、決して歴史や文学を記録するためではなかった。

それは経済的な取引履歴を残すために、記録システムと、そして文字を発明したのだ。


もしかしたら、ブロックチェーン(
分散型台帳技術)はそれらに代わる新たな価値を創造しようとしているのかもしれない。


***


ビットコインの概要】


ビットコインは非中央集権型の通貨であるため、発行体が存在しない。発行体が存在しないということは金融政策が存在しない。金融政策が存在しない以上、ビットコインを始めとした仮想通貨は国が金融政策に一切介入できない仕組みとなっている。

つまり、市場原理のもと、
需要と供給のみで価格が形成されていくことになる。

国家による影響を受けないということは、ゴールド(金)と同じような「性質」といえる、ゴールドもビットコインも国家が供給量を調整できないからだ(こんな事を書くと怒られるかもしれないが「本質」とは言ってない)。※国家は供給量を調整できないが、規制をかけることで対抗しようとする。

金価格は今から約20年以上前の1998年当時から比較すると10倍以上に暴騰しているが、誰もバブルと言わないところを見ると、ビットコインもバブルではなく適正価格に向けて価格調整をしているという解釈も可能である。もっとも、ゴールドには信用担保があるが、ビットコインには裏付けとなる担保が存在しないことには注意が必要だ。

ビットコインはしょせん電子上の数字が増えたり減ったりしているだけだ。無事に法定通貨に変換し、無事に取引所から出金確認できるまではね...。

***

【ビットコインの上昇要因】


ビットコインには一定の実需があるということは事実として認識しておく必要がある。

世界の圧倒的多数の人口比率を占める新興諸国では、「自分がお金を預けている銀行が倒産するかもしれない」と考える人や「自国の政府が発行する紙幣が信用できない」と考える人の割合が圧倒的に多い。

伝統的にみれば、このような人たちは自国通貨を米ドルに変えたり、スーツケースに詰めて庭に穴を掘って埋めておくことで、自分たちの資産を保全していた。しかし、これでは盗難リスクが伴うし、そもそも米国経済が破たんしてしまえば、スーツケースの中身はただの紙くずになってしまう。

また、同じく新興国の政府官僚などには、汚職によって得た違法収益を誰にも知られずに隠ぺいしたいというニーズが一定数存在する。これはマネーロンダリングを行うテロリストたちにも同じことがいえる。これまでの彼らの上等手段はタックスヘイブンの秘密口座に隠しておくことだった(少なく見積もっても世界経済の10%くらいは地下経済で成り立っていると思う)。だが、最近ではタックスヘイブンはCRS(=情報交換協定、各国の非居住者口座を居住国の税務当局に自動交換する仕組み)の運用開始により非常に使い勝手が悪くなった。うっかりしていると、いつ口座が凍結されるかもわからない。

そんな中で登場したのが仮想通貨ビットコインである。ビットコインは彼らのニーズを見事に汲み上げてみせた。

ビットコインを構成するブロックチェーンはその仕組上、全ての取引台帳が記録されてしまうものの、全てがナンバリング(数字と文字の羅列)によって管理されるため、あっという間に匿名口座が開設でき、資産を保管するには安全性の高い仕組みが出来上がるというわけだ。

実際、ビットコインの実需は圧倒的に新興国に多く偏在し、インターネットさえ接続できる環境さえあれば、世界中どこからでも取引所にアクセスでき、またどこの国でも保有することができ、低コストで資金移動をすることができるわけだ。つまり、将来的にはさらにビットコインの実需が波及する可能性は十分にあり得る(実際にジンバブエがハイパーインフレになった際、法定通貨が日々目減りするのにあわてて、ビットコインの実需買いに走り、市場価格より割高な価格でも取引が成立したという。仮想通貨は国家に信用がない新興国にこそ価値を発揮するということの一例である)。

もっとも、これらの要因以外にも店舗でビットコイン決済ができたり、海外留学中の子弟に送金したり、といったニーズもあることはあるが、実需と呼べるほどの経済規模はないと思う(現時点で誰も決済に使っている人を見たことがない)。


***

【ビットコインの下落要因】


ビットコインの下落要因は大きく2つあり、ひとつは国家介入によるカントリーリスク、もうひとつは代替通貨への転換が挙げられる。

ひとつはビットコインの取引量はアメリカと日本、中国の3ヶ国で相当の市場シェアを占めているため[※1]、これらの国が徹底的な規制を入れて来たときは一時的な暴落が起こることは間違いないだろう(結局、非中央集権型の通貨であれ、完全に国家の中央政府からは切り離すことはできないのだ)。

しかしながら、ビットコインはそれらの政治圧力を跳ね返すだけのエネルギーを持っていることも事実だ。今年の9月中旬には中国政府が国内の取引所を停止し、その結果大きな不安が走りビットコイン価格が一時的に大暴落した。しかし、暴落相場はわずか3日足らずで元の水準を回復してしまった。さらには中国は11月からビットコイン取引を再開させたことで、さらなる相場加熱状態を演出した(マイニングプール大手はほとんどが中国勢なので、利益を上げさせて自国から出させないやり方が賢明と判断したのだろうか)。

日本だけで取引量が4割を超えるとも言われている、日本国債の大半を日本の金融機関が買っているのと同じようなイメージ。というか、中国系企業のマイニングプールで採掘したビットコインを日本人が高く買っているのが高騰原因ではないのかw(元建て取引はほぼゼロ状態になっている、下記参照)


もうひとつの下落要因はビットコインが他の仮想通貨に取って代わられる可能性があるということだ。
仮想通貨には現在1,000種類以上もあるといわれているが、世界の資金が集中するのは、今のところ圧倒的にビットコインである(仮想通貨マーケットの市場規模から概算して、ビットコイン、正確にはビット系の市場占有比率はすでに6割の市場占有率を持っている)[※2]

つまり逆説的に考えると、どれだけ新しい仮想通貨が出てきたところで、世界の多くの人々がビットコインを支持しているということが仮説として成り立つことになる(この点がビットコインの優位性であり、先行者利益であるともいえる)。

現在の仮想通貨市場ではビットコインが実質的に仮想通貨の世界では仮想通貨となっている。しかし、それが他の通貨に取って代わられるようなことがあれば、ビットコインの相対価値は下落していくことだろう。

(個人的にはイーサリアムにがんばってほしい)

(個人的にはイーサリアムにがんばってほしい)

サイバー攻撃で大量のビットコインが紛失した場合は逆に値段が高騰する。この場合、紛失したわけではなく、誰かのもとに渡ったのと同義なので、盗んだ人間が一気に売却せずにホールドした場合は、浮動比率が低下し、価格は上がる要因となる(供給量をコントロールできないため)。

***


◇ ビットコインはこれから上がるのだろうか?それとも下がるのだろうか?

私の考えでは、もし、ビットコインが仮想通貨の基軸通貨としてでなく、現実世界の国際通貨として成長すると仮定した場合、ビットコインの時価総額が20兆円前後であることを考えると、通貨供給量としては不十分である。

さらに予め埋蔵量が決まっている通貨なので、供給量は先細りとなり、需要が増えれば必然的に価格は上がって行くだろうと思う。

ビットコインはまさに今この領域に到達できるか、通貨としての本質的価値を提供できるかどうかに全てがかかっているともいえる。


◇ ビットコインは今はバブルなのか、それとも適正価格なのか?

私の考えでは、これはわからないと回答せざるを得ない。だってわかんないんだもん#$%&☆§。


なぜならば、ビットコインには相場感というものがなく、適正価格(フェアバリュー)が計算できないからだ。

感覚的には「よぉー、バブってんな~」とは思うが、これまで幾多のトラブル(マウントゴックス取引所の破たんや
ハードフォーク問題、中国の取引所問題など)で下落を繰り返しながらも価値を落とすどころか、逆に価値を上げてきた経緯があることを考えると、これらを広義の調整局面とみなすこともでき、緩やかに適正価格(?)に向けて、上昇しているという解釈(拡大解釈)も成り立つ。


だから、バブルバブル!といいつつも、正直なところはわからない。

***


【世紀の空売りチャンス到来か?】

去る1210日にCBOEに上場、初日から24%も値上がり、ビットコインは華々しくウォール街デビューを飾った。


ビットコイン先物の値動きは、これまでと変わらない乱高下そのもので取引を終えた。サーキットブレーカーが2回も発動する事態に陥り、値上がりには一層の弾みがついた一方で、投資家にはさらなる不安を増幅させる結果となった(原資産価値を13%も上回るプレミアムが付いた、もはや意味がわからんw)。


現在、ビットコインが史上最高値であることは言うまでもない。10日からCBOEが上場し、この後18日にはCMEへの上場が、来年にはNASDAQへの上場が控えている。

今まで現物市場しかなかったところに、複数の先物市場に多元上場したらどうなるのだろうか?

今回の先物上場は、投資家に空売りの手段をもたらすが、ほぼ素人だけで構成されているマーケットに圧倒的資金力を持つ機関投資家が参入してきたらどうなるのだろうか?

私の知る限り、大多数の素人で構成されている市場に、後から機関投資家が参入するパターンは始めてみるケースだ。しかも、その商品の現物は発行体を持たないのだという。

とても興味深い。

ビットコインの現在のマーケットは、約6割の投資家がホールドし浮動比率は4割程度と言われている。現在のマーケット規模が20兆円程度と仮定し、その4割だと8兆円が浮動比率となる。

これくらいのマーケット規模だと、機関投資家レベルであれば十分に市場操作(切り崩し)ができてしまうレベルだ。

私の予想では、上場直後にいきなりショート(空売り)で仕掛けてくる可能性もゼロではないが、おそらく機関投資家の多くはいったん大きく買い上げる。そして、90°に近い角度の急騰劇を演じ、その後本格的なショートで切り崩しにかかるのではないかと思う。

少しでも高い位置から値崩れさせたほうが、買い玉のロスカットを巻き込みながら暴落相場を形成することができ、膨大な利益を手にすることができるからだ(※予めプットオプションを敷き詰めておき、上から先物のショートで切り崩せば、インザマネー(ITM)で収益が数百倍に跳ね上がる。むしろこっちのほうがバブルだな笑)。

マーケットの世界にモラルは通用しない、" Winner takes all(勝てば官軍)"がこの世界の鉄則だ。

***

ビットコインは短期的には急騰→大暴落、その後長期にわたって緩やかに上昇を続けていくように思う。

ビットコイン先物が上場し、投資環境がようやく整おうとしている。だから一時的に値崩れを起こすことは前向きに捉えれば好転反応だと思うし、機関投資家が本格的に参入すれば、ビットコイン価格はむしろ高値圏で安定していくのではないかと思う。


これがチャンスだと思えば空売りの準備をすればいいし、怖くて手が出せないなら下がった時に買えばいい。また、何もせずに見送るという選択肢もありだと思う。あくまでも投資は、いや投機は自己責任でお願いしたい...。

マーケットは常に変動する。上がったものは下がり、下がったものはやがて上がる。

そしてバブルというのは手を変え、品を変え、何度となく私たちのもとにやって来る。

いつの時代もそうだろう、人々の過度な期待感からこの奇妙な現象は生まれ、人々の欲望によって育てられていくのだ―

 

アベノミクスとトランプノミクス~調整局面?~


眠れないのでメモ、ふぁ~あ(/ 0 ̄)~゚.


ドル円の強弱レシオが1時間足で逆ザヤになりそうな件

20170510_013424

【日本】:当時の民主党の野田首相が衆議院を解散したのが2012/11/16、政権交代によるアベノミクスの期待感から株式が全力で買われ始めたのが週明けの2012/11/19からだったと記憶している。


【アメリカ】:トランプ大統領がヒラリー女史を破って当選したのが
2016/11/09、サプライズで株式相場がいったん下落したがトランプノミクスの期待感で翌々日の2016/11/11から上昇に転じた。


信用取引の決済期限は
6か月、これはマーケットのルール。


アベノミクスの期待感から買われた株式市場では何が起こったか。


2012/11/19
から6か月と4日後の2013/05/23に日経平均株価が大暴落。


***

アメリカでは
2016/11/11くらいから買われ始めた信用取引の決済期限が間近に迫っている。今日は2017/05/10。明日でちょうど6か月...



ドル円も先ほど
114円を超えたが(シカゴ先物は日経平均2万円を回復)、両通貨の強弱レシオを見る限り、ドルが買われているわけではなくて、円が売られているのが原因のようだ。



まぁ、日本は何だかんだ言っても純債権国なので、海外の企業や投資家は円を売って外貨を調達して(外貨に化けた円を使って)企業活動や投資活動を行っている。


つまり、、、為替は交換比率の取引なので外貨を調達するためには相対的に円が売られるわけだけど、どこかで必ず手仕舞う(外貨に化けた円を元に戻す)タイミングが来るので円転(円の買戻し)が起き、結果として円高にならざるを得ないという運命にある。

何だかなぁ~、マーケットの動き方があの頃と類似している、、、

変な胸騒ぎがするのは私だけだろうか
...

【アベノミクスの調整局面】:2012/11/19 → 2013/5/23

6か月と4


【トランプノミクスの調整局面】:
2016/11/11 → 2017/5/XX

明日でちょうど6か月、今週末はSQだね...。


Sell in May...


あ、深夜の独り言です
w


※この先マーケットがどうなるかは私にはわかりません、マーケットのことはマーケットに聞いてください。

※私が一時帰国するとどういうわけかいつも円高になります。私は、、、これから日本に帰ります♪♪♪

※飛行機
6時フライトですが、無事に起きれるかどうかわかりませんw


(参考:「実体空間と電子空間」)
(参考:「国際分散投資④~アセットアロケーション~」)


国際分散投資⑤~リバランスとモニタリング~


ここまで主に投資初心者の方を対象に国際分散投資についてインデックスファンドを活用する投資方法を紹介してきたが、インデックスファンドは投資初心者から上級者まで幅広く応用できる優れた金融商品であるといえる。

インデックスファンドを活用することにより、投資家自身の運用目的や長期投資方針といった最重要課題にだけ専念すればよく、費用対効果が非常に優れているというのがその最大の理由だ。

このブログを読んでくださっている個人投資家の皆さんは、以下にご紹介するリバランス・モニタリングといったメンテナンス作業を定期的に実施していただくことを強くおすすめしたい。

国際分散投資⑦

*****

【リバランスとモニタリング】

投資を開始してから一定期間が経過すると、それぞれの商品が別々の値動きをし始め、当初設定したポートフォリオから構成比率が少しずつ変化していく。

このように運用資産の配分比率が、目標とする資産配分から乖離した分を一定の期間ごとに是正していく作業をリバランス(再調整)という。

リバランス1

リバランスは「相対的に高くなったアセットクラスを売り」、これとは逆に「相対的に安くなったアセットクラスを買う」作業となるため、いわゆる逆張り型の運用戦略となる。

上昇局面が続いた商品は実質価値より割高に評価されているため、いずれ価格が下落方向に転じ、
それとは反対に、下落局面が続いた商品は実質価値より割安に評価されているため、いずれ価格が上昇方向に転じることになる。

リバランスを実施する最大の理由は、多くの投資家が陥ってしまいがちな「割高な銘柄を買い、割安な銘柄を売る」といった、本来とは真逆の行動(最悪の行動)を取ってしまうことを防止することに他ならない。

リバランスを定期的に実施することにより、資産配分が当初の構成比率から誤差が生じた際、比率の大きなものを売却し、比率が低いものを組み入れることにより、理想的な配分比率に修正することが可能となるわけだ。

リバランスの役割

割高になった商品を売る(値上がりして最初の構成比率よりも大きくなったものを減らす)

割安になった商品を買う(値下がりして最初の構成比率よりも小さくなったものを増やす)

複利効果と時間的分散効果」の項目でも説明したが、長期にわたる運用を継続することができれば、ポートフォリオ全体のリターンは、時間の経過とともに平均収益率へと近づいていくことになる。

リバランス②

このような統計的優位性に加え、リバランスを定期的に実施していけば、平均収益率の変動(ブレ幅)は時間の経過とともに非常に高い精度で安定していくことになる。

割安な商品を買い、割高な商品を売る。リバランスは非常にシンプルで地味な作業ではあるが、運用の基本ルールが機械的に実行できることに加え、運用結果の実に
80%もの多大な影響を及ぼすことになるため必ず実施してほしい。

感情的な投資

・注目されている割高な銘柄を買い、結果として高値掴みをしてしまう

・下落相場に耐えられず損切りを実行したところ、再び上昇に転じた

機械的な投資

・運用比率を調整し、割高な銘柄を機械的に処分する(リバランス)

・運用比率を調整し、割安な銘柄を機械的に組み込む(リバランス)

ただし、リバランスは頻繁にやれば良いというわけではない。ポートフォリオの組み換えに伴う売買には、手数料などのコストがかかる点には注意が必要である。

その理由は、わずかな誤差の微調整を繰り返してしまうと、取引コストのほうがかえって高くついてしまう可能性があるからだ(頻繁に銘柄の組み換えを勧めてくる営業マンがいれば手数料稼ぎ以外の何者でもないだろう
...)。

過去データの検証によれば、年
1回程度のリバランスはリターンにプラスの作用をもたらすことがわかっている。運用を始めたばかりの方であれば、始めは3ヶ月ごとに、慣れてきたら半年ごとを目安にご自身の資産構成比率の変化をモニタリングし、初期の投資比率と現時点の構成比が23%程度ずれてきたときに、リバランスを実施すれば十分だろう。

*****

【インデックス投資のメリット】


最後に資産運用にインデックスを活用するメリットを再度掲載したい。

投資家の多くは目先の利益を追い求めた結果、「感情的に投資をしてしまい、高値掴みをしてしまった」、「高利回りの商品に飛びつき、投資詐欺に遭ってしまった」など、欲望をコントロールできずに資産を目減りさせてしまった方が数多く見受けられる。

しかし、このような投資方法では、資産運用は確実に失敗に終わる。確実に
...。

資産運用の本質高利回りで資産を殖やすこと → ×
資産を極力減らさないように、少しずつ安定して殖やすこと → 

すでに述べたとおり、資産運用において大切なことは、「資産を極力減らさないように、少しずつ安定して殖やすこと」であるといえる。そのためには、「市場の誘惑に惑わされず、機械的に運用を継続できるかどうか」に全てかかっているといっても過言ではない。

このブログを読んでいる皆さんが市場の誘惑に負けそうになった時、以下に記したインデックス投資の優位性を思い出していただき、長期に渡る資産運用を実現させてほしい。

① 相対的に高いリターンが得られる

長期的に見て、アクティブファンド全体の80%は市場平均に勝てず、どのアクティブファンドがトップ20%なのか事前に見極めることはほとんど不可能となっている。インデックスファンドを保有するだけで投資のプロの80%以上の成績を出すことができる。

② アクティブファンドに比べてコストが低い

インデックスファンドの運用報酬と管理費用は、年率で0.1%程度。一般のアクティブファンドでは12%程度となっている。さらにインデックスファンドは年間を通してポートフォリオの1割程度しか売買されないため、取引回数が少なく、結果として売買手数料が安く抑えられることになる。一方のアクティブファンドでは、毎年ポートフォリオ全体が入れ替わるため取引回数が多くなり、売買手数料が高くなる。また、インデックスファンドは複数銘柄の平均値(ベンチマーク)の取引であるため、値動きが小さく、実現損益も小さいため、結果として課税額も安く抑えられることになる(オープンエンド型=再投資型のバランスファンドを購入すれば、リバランスを自動的に実施してくれるため、利益を確定させるまで課税タイミングを先送りすることが可能となる)。

③ 無駄な労力をかけずに平均点が採れる

インデックスファンドは、あまり運用実績を管理する必要がない。インデックスファンドは無駄な労力をかけずに市場の平均点を取っていく投資方法であるといえる。

④ 相場動向や投資戦略を考える必要がない

インデックスファンドはアクティブファンドのように運用機関を選択する必要がなく、どのファンドを選択してもインデックス指数にほぼ連動するように商品が設計されている。そのため、値動きの異なるインデックス商品を複数保有することで、相場動向や投資戦略を考える必要がなくなる。さらにはインデックスファンド自体が、複数の商品に分散された商品であるため、特定個別銘柄・地域への投資割合も低く、株式であれば倒産リスク、債券(国債・社債)であれば国家破綻リスクや特定の会社の倒産リスクを低く抑えることができる。

*****

以上、長々と5回に渡って国際分散投資についてまとめたが、投資の本体の目的とは世界の経済成長の恩恵を受けながら少しずつ資産を殖やしていくプラスサムのゲームだと思っている。

以前、「集中と分散」でも書いたが、私自身は集中投資に向かない性格のため、分散投資の道を選んだ。

もちろん集中投資と分散投資、どちらにも優位性と欠点がある。

集中投資が得意な方はそもそもこのブログを読んでいないだろうし、集中投資をすればいい。

集中投資が苦手な方はトレードなんぞ止めてしまって、のんびりと分散投資をすればいい。

ご自身のお金を使って投資をされている個人投資家の皆さんを、私は心から尊敬している。

ただ、お金はしょせん手段にすぎず、目的にはなりえない。

お金とは経済の血液であって、誰かで止めてしまってはいけない。

だから皆さんが利益を出すことができたならば、その一部でいいから世界を良くするために使ってほしい。

それでは、また!

*****

(参考:カン・チュンド
 忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術)アスカビジネス、2009
参考:山崎元、水瀬ケンイチ「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド朝日新書2015年)
(参考:内藤忍「内藤忍の資産設計塾【第3版】あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法」自由国民社、2015年)
参考:チャールズ・エリス「敗者のゲーム(新版なぜ資産運用に勝てないのか」日本経済新聞社、2003年)
参考:ハワード・マークス「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」日本経済新聞出版社、2012年)  

国際分散投資④~アセットアロケーション~


人類は歴史上、同じような過ちを何度も繰り返してきた。

投資の世界でも同様に、これまでに何度となくバブルや暴落を繰り返してきていることは周知のとおりだろう。実際に大暴落が起こるたびに、マーケットから退場していく投資家があとを立たない。

資産運用においてもっとも重要なことは、「
市場の誘惑に惑わされず、機械的に運用を継続する」ことにある。市場の誘惑に惑わされないためには、まず、運用の基本方針と目標を決めることである。

そのためには、「
どれくらいの期間で、最終的にどれくらいの資産を確保したいのか」を明確に設定しておく必要があるだろう。

アセットアロケーションの検討項目・現在の年齢
・運用の目的(何のために運用するのか)
・運用期間(いつまで運用するのか)
・リスク許容度(どの程度のリスクが取れるのか)

ここでは、運用成績に最も影響を与えるアセットアロケーションについて説明して行きたい。

*****

【アセットアロケーション】

資産運用の結果を決める要因は主に以下の
3点に集約される。

1.銘柄選択どの商品を買うのか
2.投資タイミングいつ買うのか
3.アセットアロケーション資産をどのように配分するのか

米国バンガード社が2003年に発表した「5年以上の運用実績を持つ420本のアクティブ運用バランス型ファンドを1962年~2001年(40年)の過去データをもとに分析した研究」によれば、「アセットアロケーションの違いが月次リターンの77%の差異を決める」という大変興味深い調査結果が出ている。

つまり、この調査結果によれば、ポートフォリオが投資リターンに与える影響は非常に大きく、リターンの実に
80%はポートフォリオの内容で説明できるとしている[1]。

なお、多くの方が重視する投資タイミングはわずかに
8%程度、ポートフォリオをどのような個別銘柄で実現するかの銘柄選択はわずか6%程度しか投資リターンに影響を与えないことがわかっている。

投資リターンに及ぼす影響力
ポートフォリオの内容月次リターンの約77%
投資タイミング月次リターンの約8%
銘柄選択月次リターンの約6%

多くの投資家の方を見ていると、「どの商品を買うのか」「安く買える投資タイミングはいつか」に多くの時間を費やしているが、結果の出る運用を最優先に考えるのであれば、これからはアセットアロケーションに多くの時間を費やしたほうが合理的であると言えるのではなかろうか?

アセットアロケーションが「リターンへの影響度」を高めるためには、多くの銘柄に幅広く分散投資が行われていることが前提条件となる。つまり、少数の銘柄に集中投資を行った場合は、事業継続リスクが高まり、企業の倒産確率が上昇するなど、「銘柄選択の影響度」が高くなると考えられる。したがって、集中投資には上記の理論は適用されない。


*****

【資産配分を考える】

現在では、株式、債券、商品等、それぞれのアセットクラスに対応するインデックスファンドが存在しているため、それらを組み合わせることによって、誰でも簡単に運用を開始することができるようになった。

国際分散投資③

すでに、リスクとは投資の世界では「変動」を意味することは説明したが、それぞれの性質に合わせ、資産を地域や商品、時期を分散することにより、リスクを低減させる効果が期待できることになる。

さらに、値動きが異なる商品同士を組み合わせることにより、全体としての運用の安定性を確保することが可能となるわけだ。

もちろん、しっかりとアセットアロケーションを実行したとしても、短期間では価格は大きく上下に変動してしまうことは覚えておいてほしい。

確率統計上、どのような投資方法であれ運用開始直後の数年間はブレ幅が非常に大きく、利益や損失が予想以上に拡大してしまうこともあるだろう(「複利効果と時間的分散効果」の説明を思い出してほしい)。

図2

しかし、長期で継続していくことにより、年次リターンのブレ幅は次第に小さくなり、やがて平均収益率へ近づいていくため、資産運用は最低でも
10年は続けて行かなければ全く意味がない。その理由は統計的優位性を享受することができないためだ。

この先マーケットは上がるかもしれないし、下がるかもしれない。私たちに唯一わかることは、「
マーケットは常に変動する」ということだ。どのような商品であれ、上がったものはやがて下がり、下がったものはやがて上がる。

したがって、いつまでも暴落が続くことはなく、暴落の翌年には大きく上昇する傾向が高いということだ。長期で継続していけば年次リターンのバラツキは小さくなっていき、やがて平均収益率に近づいていくことになる。

このブログを読んでいる個人投資家の皆さんは、「長期」・「分散」・「積立」の
3点を軸として投資を継続的に実行し、定期的に保有比率を機械的に再調整(リバランス)することにより、「複利効果」と「時間的分散効果」を最大限に享受しながら、ご自身の資産を市場変動リスクから切り離すことが可能となる。

そのため少しでも長く、できるだけ長く投資を続けてほしい。

*****

【資産配分の例】

一般的に、ポートフォリオの構成比率の基本は、世界各国の国内総生産(
GDP)構成比率に準拠させることで各国の経済動向に連動させることができるため、こうした資産配分が理想的であると言われている。

また、インデックスを活用することはマクロレベルでポートフォリオを管理するのと同義なので、現在のマーケットで注目されている固有の銘柄などの影響を受けることがなくなること、さらには、分散比率を定期的に調整することにより、世界経済の成長によるリターンを享受できるようになると考えられる。

アセットアロケーションは特にこれが正解というものは存在しないが、一般的には「国・地域の分散」・「アセットクラスの分散」の
2点がバランス良く分散されていることが望ましいとされている。

なお、近年ではインデックスファンドだけではなく、
ETF(上場型投資信託)も普及したことにより、世界中の不動産を間接的に保有することも可能となったため、投資家の好みに合わせて組み込んでみるのも面白いかもしれない(※私は面倒くさいので株式と債券以外はやっていない)。

アセットアロケーション1

上記は大雑把な一例だが、すでに述べたように結果の出る運用を考えるのであれば、これからは細かな企業分析などよりもアセットアロケーションに多くの時間を割いていただくことをおすすめしたい。

アセットアロケーションは運用成績の実に
80%に影響を及ぼす非常に重要な作業となるため、ご自身での作業が難しいという方はバランス型ファンドの購入も検討されてみてはいかがだろうか?

バランス型ファンドはインデックスファンドや
ETFに比べ手数料は若干割高となるものの、現在ではほとんどがコンピューターの自動売買プログラムによって定期的に配分比率を自動調整してくれるため、ほとんど手間がかからずに投資を行うことが可能となっている(市場連動型の商品はほとんどが機械による自動売買を行っているため、信託手数料が非常に安く設定されている)。

*****

【コラム③:日本から投資する場合の為替リスクについて】

日本から海外投資を行う場合、日本の投資家は非常に不利な立場にあると考えられる。
その理由は日本という国は為替リスクが極めて特殊な環境に置かれている国だからだ。

国際分散投資⑥

現在、日本国内で流通している「日本円(
JPY)」という通貨は、ひとたび不景気や国際的な経済危機が起こると円高方向に振れるパターンが多く、それが国際分散投資によるリスク分散効果を相殺してしまうことになりかねない。

主なポイントは以下の
2点に集約できる。

1.
日本が経常黒字国(貿易黒字国)であること

ひとつは、日本が経常黒字国(貿易黒字国)であるために、企業は海外で獲得した外貨をそのまま海外投資に回さない限り、円転(円の買戻し)による経常的な円買い圧力に晒されることになる。

世界的に景気が良ければ日本の企業が稼いだ外貨はそのまま海外での取引や投資に使われるため、円買い圧力は弱まり、結果として円安になる。

しかし、経済危機などで世界的に景気が悪くなると、海外での取引や投資が減少し、資金を回収して円転を進めるために、円買い圧力が高まり、結果として円高になる
[2]

世界的な好景気 → 海外取引増加 → 海外で獲得した外貨をそのまま海外へ投資

→ 円安

世界的な不景気 → 海外取引減少 → 海外で獲得した外貨を回収して国内へ還流 

→ 円高

さらには、こうした現象は日本国外だけでなく、先の東日本大震災など日本国内で危機が起こったときにも生じる。

日本国内で危機が起こった場合、日本の企業はリスク回避のために海外投資を減らし、日本国内に戻すため、経常黒字から生じる円買い圧力が強まることになる。日本の投資家も国内での損失をカバーするために海外に投資した資金の回収を進めるため、やはり円が買われ、結果として円高になる。

国内での危機 → リスク回避のため海外投資を減らす → 資金を回収して国内へ還流 

→ 円高


2.
日本が世界最大の対外純債権国であること

もうひとつは、日本が対外純債権国であるため、世界中の国が円を調達し、それを売ってドルなどに交換して経済活動を行っているということだ。

ゆえに、世界的に景気が良いときには円売り圧力が高まることになるが、世界的な経済危機が起こってしまうと、この資金の動きが巻き戻されるために円買い圧力が高まることになり、結果として円高になる。

世界的な好景気 → 世界中の国が円を調達 → ドルなどに交換 → 海外で使う

→ 円安

世界的な不景気 → 調達した円を戻すため、資金をドルなどから円に交換

→ 円高

このとき、リスク回避のために円を買うのは日本の企業や投資家だ。

投資家や企業が避けたいのはあくまでも「為替リスク」であるため、為替先物で円のヘッジ買いをすることになる(実際に海外資産を売却することはない)。このように、実際の資本移転は行われなくとも、リスク回避のための円買いは発生することになる
[3]

上記のような国際的な資本フローの原則を理解すると、日本円を使って国際分散投資を行う際の最大の敵は為替リスクだということがよくおわかりいただけると思う。

日本から海外へ投資をする場合、世界的な不景気や経済危機が発生してしまうと、「
投資対象の価値の下落」とともに円高による「通貨価値の相対的下落」もダブルパンチで損失を喰らってしまうことになりかねない(つまり、資産防衛のために投資という名目で海外に資産を逃避させても、結果として資産価値が大幅に目減りしてしまうという皮肉な結果になる可能性もあるということ)。

本来は、「アメリカドル(
USD)」を基準に投資を行うことが望ましいと言えるが、日本から投資をする場合は、ある程度の「日本円(JPY)」もキャッシュポジションとしてアセットクラスに組み込まれることを強くおすすめしたい。その理由は、世界的な景気後退局面では強力なヘッジ効果が期待できる商品だからだ。

アセットアロケーション2

もっとも、今後は人口減少により内需が縮小することを考慮した場合、日本企業の多くは国内事業よりも海外事業を拡大させていくと考えられるため、外貨需要が高まり、日本の経常黒字は減少し、徐々に円買い圧力は弱まっていくと予想される。

したがって為替リスクを許容できる投資家の方であれば、今のうちから国際分散投資を実行することには一定の経済的合理性があると言えるのではないだろうか?

2 経済危機などで世界的に景気が悪くなると、必ずこんなことを言う人がいる。「円がものすごい勢いで買われている、その理由はリスクの逃避先として日本が安全性が高いと判断されているからだ」と。また、こんなことを言う人もいる。「なんでアメリカやヨーロッパで起こった経済危機が日本の経済まで波及するのか、日本には関係ないじゃないか」と。でも上記フローを理解された方はなぜ円高になるのかがお分かりいただけたと思う。日本の国債の格付けを見てみれば日本円が決してリスクの逃避先として買われているわけではないことは明らかだろう。

3 為替リスクを回避するためには、為替先物で円のヘッジ買いを行うのが手っ取り早い。これは日本からの投資を考えた場合、円建て商品を作るのと同じ仕組みとなる。A社とB社の株式を例に考えると、「A社:5,000USDの買いポジション」、「B社:5,000USDの売りポジション」、合計1USDのポジションを保有していたと仮定する。この時、1万米ドルの為替先物を同時にショート(売りポジションを持つ)し、日本円をロングする(買いポジションを持つ)ことによって為替変動によるβリスクを完全に排除することができる。この場合、ポジション設計は以下のようになる。

「①A 5,000USD買い(ロング)」+「②B  5,000USD売り(ショート)」+「③USD/JPY 10,000USD/JPY売り(ショート)」

意味が分からない方のために補足しておくと、「A社+B社のポジション合計x」は10,000USD/JPYの買いポジションを保有しているのと同じ状態なので、為替リスクをカバーするためには10,000USD/JPYの売りポジションを取る必要があるということ。これによって為替変動によるβ値リスクをニュートラル化(相殺)することができるわけだ。B社の株式をショートする時に必要な5,000USDは、日本から投資する場合、通貨としては5,000USD/JPYの買いポジションと同じ意味になるのでくれぐれも混乱しないように。円建ての商品を購入されるときは、誰も意識していないかもしれないが、実はマーケットニュートラルの考え方を組み込んだ商品をすでに保有していることになる。外貨建て商品に比べて円建て商品を選択すると利回りが落ちるのは、こういった中間処理の手間と手数料がかかる仕組みだということがおわかりいただけると思う。なお、(日本居住者から見て)外貨建てで取引したい場合は、上記③の円買いドル売り(USD/JPY)のポジションは不要となる。ここで注意しなければならない点はFXを使う場合、使い勝手が良い一方で、スワップ金利の問題が生じることだろう。日本は政策金利が低すぎるため、スワップ金利の影響をもろに受けてしまうことになるわけだから。はぁー、困ったもんだ。


国際分散投資⑤~リバランスとモニタリング~
へ続く


*****

(参考:カン・チュンド
 忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術)アスカビジネス、2009
参考:山崎元、水瀬ケンイチ「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド朝日新書2015年)
(参考:内藤忍「内藤忍の資産設計塾【第3版】あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法」自由国民社、2015年)
参考:チャールズ・エリス「敗者のゲーム(新版なぜ資産運用に勝てないのか」日本経済新聞社、2003年)
参考:ハワード・マークス「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」日本経済新聞出版社、2012年)
参考:佐々木融「弱い日本の強い円」日本経済新聞出版社、2011年) 

国際分散投資③~複利効果と時間的分散効果~


ここまで、リスクを最小化する方法として、「分散」・「積立」・「インデックス」を使った運用方法をご紹介してきたが、こうした運用方法を採用する最大の魅力は、何といっても「時間を味方にできること」にある。

リスクを極力抑えながら運用し、少しずつ資産を殖やしていくためには、「時間」は非常に有効な要素のひとつと成り得る。「複利」という言葉はすでに多くの方がご存知の通り、「
利息が利息を生む」という考え方のことだ。

資産運用は「正の複利効果」を生み出すことが期待できるため、「時間」+「金利」を味方にできる点が大きなメリットとなる。

これとは反対に、「負の複利効果」を生み出す借金は「時間」+「金利」を敵に回すことになってしまう(※資産運用が必ずしも「正の複利効果」を生み出すわけではないので注意のこと)。

*****

【複利効果と時間的分散】

資産運用の方針を考えるに当たり、「時間」という概念は良くも悪くもポートフォリオに多大な影響を及ぼすことになる。なぜなら、年々積み上がっていく運用成績は、時間の経過とともに平均収益率に近づき、収益率が発生する範囲は時間の影響に大きく左右されることになるからだ。

運用期間が長ければ長いほど、保有しているポートフォリオ全体の収益率は平均収益率に近づいていくため、収益率の変動幅が時間の経過とともに安定して行くことになる。さらには、投資家はポートフォリオのリバランス(組み換え作業)を定期的に実施することにより、銘柄の組み合わせを
最適な状態に持って行くことが可能となる。

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もし仮に、運用期間があまりにも短すぎた場合、非常にギャンブル性の高い運用方法となってしまう。
その理由は、運用年数があまりにも短すぎると良くも悪くも偶然の発生確率が上がってしまい、統計的優位性を享受することができなくなってしまうからだ。

その一方、十分な運用期間さえ確保することができれば、突然の暴落などに見舞われても、大きな不安を感じることなく運用を継続することが可能になるというわけだ。

*****

【積立てによる複利効果】

例として、元本ゼロで毎月
10,000円ずつ積み立てを行った場合、期間・利回り別の残高は以下のとおりとなる。

利回り期間
5年10年15年20年30年
元本(利回りゼロ)600,0001,200,0001,800,0002,400,0003,600,000
3%647,0001,397,0002,267,0003,276,0005,801,000
5%680,0001,549,0002,659,0004,074,0008,186,000

上図の「元本(利回りゼロ))」の数値は積み立てた元本額を示し、3%5%の利回りで運用した場合の期待収益率を示している。投資期間が長くなればなるほど、複利効果により、時間の経過とともに、資産が加速度的に増加していくことがおわかりいただけると思う。

なお、上図では
1年や2年といった短期間の利回りを掲載していないが、①「短期では複利効果の恩恵をほとんど享受できないため、資産の増加が期待できないこと」、②「どのような投資対象も短期的には価格変動リスクが大きく、期待収益率が安定しないこと」がその理由として挙げられる。

資産運用が全くの初心者の方であれば、年次リターンとしては年率
3%程度、多くても5%程度を目標にするのが理想的といえる。7%10%など、あまりにも高すぎる目標リターンを設定してしまうと、それだけリスクも高まり、変動幅(ボラティリティリスク)が大きくなりすぎてしまうためだ(※金融機関のトレーダーのパフォーマンスは、一般的に年利12%程度が契約更新の最低の目安とされている)。

こうして考えてみれば、年利
10%20%のリターン設定など、もはや論外だということがおわかりいただけると思う。著名な個人投資家であるウォーレン・バフェット氏でさえも年利22%程度なのだ。しかし、そのリターンを何十年も継続できているからこそ、彼は天才と呼ばれ、称賛されているのだから。逆に言えば、年利20%程度で運用し続ける投資家がたくさんいれば彼は凡人ということになり、これだけ称賛されることはなかったに違いない。それだけ、長期間に渡って利益を出し続けて行くというのは本当に難しいことなのだ。

投資を長く継続し、少しずつ超過リターンを確保していくためには、リスクを極力抑える運用方針を採用すべきだと考える。すでに述べたとおり、リターンの源泉がリスク(変動)である以上、高すぎる目標リターンを設定してしまうと、リスクも同様に上がってしまうからだ。

また、これとは逆に、
10年や20年と長期にわたって運用を継続することができれば、暴落などの急激な相場変動に見舞われたとしても、一定のリターンの確保が期待できるようになる。その理由は、資産を値動きが異なる複数の商品に分散して保有することにより、平均収益率が安定し、期待収益率に近づいていくためである[※1]。

図2

[※
1] 過去の暴落相場を検証してみると、ポートフォリオ全体は一時的に最大で「40%もの損失を被ることがわかっている。しかし、たとえば含み損が20%発生した場合、年利5%の配当益を確保していけば、この損失は4年で取り戻すことが可能となる。皆さんも投資信託のパンフレットに右肩上がりのグラフが掲載されているのを見たことがあるかもしれない。このグラフが右肩上がりになる理由は、配当益を再投資して積み上げていくため、ほとんどのパンフレットは右肩上がりになってしまうのだ。これは長期投資の複利効果が表れていることを示す一方で、アクティブファンドの運用成績が実はあまり大したことがないことを私たちに教えてくれる(これは完全なるデータのトリックである)。

*****

【残された時間はあと何年?】

ここでは、正の複利効果の例として「
毎月少額でも積立投資を行った場合」と「元本を貯金してから一括で投資した場合」を比較して検証してみたい。

グラフ1

上記は「元本ゼロで毎月
5万円ずつ年利5%25年間積み立て投資を行った場合」をグラフで示したものだ。時間の経過とともに複利効果が表れ、右肩上がりで運用額が積み上がっていく様子がお分かりいただけると思う。

これに対し、以下は「元本
1,000万円を貯金してから一括運用を開始した場合」をグラフで示したものだ。最大の致命点は1,000万円を貯めるまでに168ヶ月もかかってしまうため、複利効果の恩恵を十分に享受できず、元本をコツコツと積み立てて行った場合に比べて、資産の増加スピードが後半になってようやく加速し始めていく様子がお分かりいただけると思う。

るで「ウサギとカメ」の童話そのものだが、残念ながらウサギは複利の恩恵を受けるカメには絶対に敵わないのだ。

グラフ2

このように、積立投資は非常にシンプルな投資方法であるものの、毎月少額でも継続して投資し続けることのほうが、複利効果により一括で投資するよりも資産の増加スピードが加速していくことがおわかりいただけるかと思う。

たとえば、
65歳以後の老後のための資金を確保するためには、30歳の方であれば35年間、40歳の方であれば25年間もの時間的余裕があることになる。ゆえに、若ければ若いほど「時間」を味方にできるために、「資産運用は少しでも早いうちに始めた方が有利」となる。

その一方、
65歳での引退後の生活資金確保を運用の最終目標にした場合、50歳の方は15年間、60歳の方なら5年しか時間が残っていないため、時間的分散効果を享受できない点はデメリットでもある。

もっとも、
50代、60代の方々の中には、すでにある程度の金融資産をお持ちの方も多いと思うので、資産形成期とは異なり、資産を減らさない、守るという発想に切り替えて行く必要があるといえる。

このように、若年者向けの運用方法に対し、年齢が上がるにつれ、まとまった資産をお持ちの方も多くなっていることと思うが、こうした場合は、初期の元本を数回に分割しながら組み込んで行き、さらには複利の効果を活用することにより、インフレリスクを回避していく方法が有効となるだろう(※まとめて一括で元本を組み込むよりも、
3ヶ月に1度、6ヶ月に1度追加することで時間的分散効果が期待できるだろう)。

※資産運用には元本及び利息の保証がないため、必ずしも「正」の複利効果が得られるとは限らない。したがって、
2,3年といった短期の評価額は元本割れする可能性がある旨ご注意いただきたい。

*****

【コラム②:分配型ファンドは買ってはいけない】

一般的に、「元本再投資型」と呼ばれる投資信託は運用によって得た収益を元本に組み入れるため、複利効果により資産が雪だるま方式に膨らんでいく。

これに対して、分配金を毎月支払っている「毎月分配型投資信託」は運用によって得た収益から分配金の支払いを行うため、元本に組み込まれる金額が少なくなってしまう。

分配型ファンドは原則として毎月分配金の支払いを行い、基準価額を削って分配原資に充てる(「収益」でなく「元本」を分配する)ため、収益を上げられなかった場合には、元本を取り崩して分配金を支払うこともあり得る。

ここで、投資信託を活用して資産運用を開始するに当たり、最も注意しなくてはならないのが「分配金」の概念だ。

分配金という言葉のニュアンスは、どこか「元本」を運用したことによって獲得した「果実」を受け取っているかのように思ってしまいがちだが、証券用語で用いられる場合の「分配金」という言葉に関してはそのような意味は全くないので注意してほしい。

分配金は投資信託の「純資産」から支払われるため、ある期間の支払額よりも収益額が少なければ、その差額分だけ基準価格が下がる仕組みになっている(※預貯金の利子とは源泉が異なる点に注意)。

このように証券用語では、収益分配部分を「普通分配金」、元本取り崩し部分を「特別分配金」と、どちらにも分配金という名称を使うため、両者とも収益部分を源泉とした払い戻しと誤解してしまいがちだ。毎月分配型に魅力を感じて購入したものの、実際は投資家自身が支払った元本の取り崩しに過ぎないケースもあるため、分配型ファンドに投資するメリットは全くないと言っていいだろう。

こうした商品は特に引退世代の方が毎月の配当を年金とみなして購入するケースが多く見受けられるが、高い売買代金と信託手数料を取られた上、自分の元本を取り崩して配当にまわしているような商品を買うくらいであれば、普通預金を取り崩したほうがまだましである。

すでに説明した通り、投資の本質は、「なるべく長期間にわたって元本を取り崩さずに運用を継続し、複利の効果を享受することで、最終的に目標とするリターンを得ることである」といえる。

したがって、資産運用を開始される際には再投資型の信託を選択されることを強くおすすめしたい。

国際分散投資④~アセットアロケーション~
へ続く

*****

(参考:カン・チュンド
 忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術)アスカビジネス、2009
参考:山崎元、水瀬ケンイチ「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド朝日新書2015年)
(参考:内藤忍「内藤忍の資産設計塾【第3版】あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法」自由国民社、2015年)
参考:チャールズ・エリス「敗者のゲーム(新版なぜ資産運用に勝てないのか」日本経済新聞社、2003年)
参考:ハワード・マークス「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」日本経済新聞出版社、2012年)

国際分散投資②~分散・積立・インデックス~


投資の世界では「大きな損失を出すリスクを極力抑えながら、少しずつ利益を増やしていく考え方(いわゆる「損小利大」)が非常に有効である。

以下の例は一見すれば金額は同じだが、比率で考えれば「
今あるものを増やす」よりも、一度失ってしまった「損失を取り戻す」ほうが難しいことがおわかりいただけると思う。

 ▼1,000円の金融商品が750円に下落した場合▼△750円の金融商品が1,000円に上昇した場合△
金額250円の下落(1,000円-750円)250円の上昇(1,000円-750円)
比率25%の下落(250円/1,000円*100[%])33%の上昇(250円/ 750円*100[%])

ここではリスクを回避する方法として、「分散」・「積立」・「インデックス」の3つのキーワードを用いて、最も基本となる運用方法をご紹介していきたい。

*****

【分散】

投資の世界には、「卵は
1つのカゴに盛るな」という有名な格言がある。

これは、「いくつかの卵を
1つのカゴに入れておくと、ひっくり返ったときに全部の卵が割れてしまうので注意しなさい」ということの教訓だ。投資においては、大切な資産をすべて1つの商品に集中して投資してしまうと、暴落など不測の事態により全財産を失ってしまう可能性が高いため、この格言は投資の教科書では頻繁に引用されている。

Don’t put all your eggs in one basket
画像:政府広報「
新しい投資優遇制度NISAがスタート」より

分散して投資を行う最大の意義は、「値動きが異なる複数の商品を保有することにより、資産全体の値下がりリスクを極力抑えること」にあるといえる。

たとえば、株式と債券は一般的に正反対の値動きをする傾向があると言われている。両者を例に考えた場合、株式と債券をバランス良く保有することにより、株式が暴落しても、株式の暴落分を債券の上昇分でカバーすることができればマーケットの変動リスク(=βリスク[1])を低く抑える効果が期待できることになる。例として「株式」は大きく上がって10%の利益を得たとしても、「債券」が10%下落した場合、両者の値動きのブレ幅は相殺されることになるからだ。

保有資産変動率相場変動による利益配当による利益期待収益率
株式のみ+10%+10%+3%+13%
債券のみ-10%-10%+1%-9%
株式と債券± 0%± 0%+4%+4%

したがって、相場変動による利益を享受することができなくなる一方で、安定した配当収入を継続的に生み出す効果が期待できるようになる(上図右下の+4%の部分)。

わかりやすいイメージとして株式の配当が3%、債券の配当が1%と仮定した場合、相場変動リスクを抑えながらコツコツと年利4%程度の配当収益を確保する効果が期待できるようになる。一般的にこのような相場変動の影響を受けない投資方法は、市場(マーケット)に対して常に中立的(ニュートラル)な立場を採るため、マーケットニュートラル投資法と呼ばれている。

このように資産を「
複数の値動きが異なる商品に分散して投資を行う」ことにより、「相場変動リスクを極力抑えながら安定したリターンを生み出す投資方法」が分散投資の本質であるといえる。

ちょっと小難しい話になるが、こうした商品間の値動きの相関性(
連動性)を測定する統計手法を相関分析という(どの程度の連動性があるかを図る指標として「相関係数」という数値を用いる)。

分散投資を行う際は、相関係数がマイナス(負)の値を取る商品のペアをバランス良く組み合わせ、グループ化することにより、相場の上下動に関わらず、安定した配当収益(α
 [1])のみをマーケットから獲得していく効果が期待できる。なお、相関係数は-1.0~+1.0の値を取り、+1.0に近づくほど両者は連動性があり、-1.0に近づくほど両者は正反対の値動きをする。

したがって分散投資は、単純にさまざまな投資商品をランダムに組み合わせればよいのではなく、必ず「異なった値動きをする複数の商品を組み合わせること」が重要なポイントとなる。同じ値動きをする商品を組み合わせてはいけない理由は、暴落などの予期せぬ相場変動が発生した場合、すべての資産が目減りしてしまうからだ
[2]。一度失ってしまった損失を取り戻すほうが難しいことはすでに説明した通りである。

もっとも、上昇相場が何年も続いてしまった場合、一方の上昇分の利益は、他方の下落分の損失で相殺されてしまうため、相場変動の恩恵が受けられず、この点はデメリットであるといえる。分散投資は相場変動リスクを回避できる一方で、相場変動によるリターンの恩恵を受けられないというデメリットがあることは覚えておいてほしい。

1 β(ベータ)とは、ベンチマーク(参考指標)に対するポートフォリオの感応度のことをいう。その一方、α(アルファ)とは、ベンチマークの動きにかかわらず生じる収益のことをいう。通常、インデックス指数がベンチマークとなるが、ここでは値動きの異なるインデックス商品を組み合わせることにより相場変動であるβを相殺するため、配当によるリターンがαとなる。

2 現実のマーケットでは、上記のような異なるアセットクラスで、全く同じ値動きをする商品も真逆の値動きをする商品も存在しない。同程度の期待リターンのアセットクラスがあった場合には、値動きの相関がより低いアセットクラスの組み合わせでポートフォリオを構成することにより、個別のアセットクラスよりもポートフォリオのリスク(変動率)が低減するということ。この点が、「期待リターンが同じであればリスク(変動率)は小さい方が好ましい」という前提があるファイナンス理論において、分散投資が推奨される理論的な背景となっている(実際は理論通りにうまくはいかないが、機関投資家はこれを巧みに営業トークに織り交ぜることになっている)。

*****

【積立】

投資とは「
良いものを買うことではなく、ものをうまく買うこと」によって成功する。

本質的価値から見て割安な価格で大量に購入し、割高になってから売れば、大きなリターンが得られるからだ。
日常生活と同様、本質的価値が同じものであればなるべく割安な価格で買ったほうが、よい買い物ができることになる。そのため「いつ買うか」「いつ売るか」について日々値動きを追っている投資家が多いのが現状のようである。

しかし、どういうわけか投資の世界においては、多くの方が正反対の行動を取ってしまいがちだ。多くの投資家が注目された銘柄に投資をするので、結果として高値掴みをして損をしてしまう。その一方、保有している商品が値下がりすればすぐに売ってしまう。

本来であれば、世間から注目されているような割高な銘柄は売り、注目されていない割安な銘柄を買うべきなのだが、どういうわけか多くの投資家は割高な銘柄を買い、割安な銘柄を売るといった真逆の行動を取っているのが現状のようだ――。

しかし、売買のタイミングに悩んだところで、投資のプロでさえ最適な投資タイミングを知ることは不可能である。最安値のタイミングなんぞ、結局のところ、後になってみないと誰にもわからないのだ
[3]。

そこでおすすめしたいのが積立投資だ。答えが出ないことにあれこれ悩むよりも、継続的に積立投資を実行したほうが、時間を分散することにより、結果として取得リスクを分散することができる。毎月一定額を機械的に投資して行けば、価格が安いときに多く購入でき、平均購入価格が低くなる効果が得られることになる。

ドルコスト平均法
画像:三菱UFJモルガンスタンレー証券
ドルコスト平均法」より

これは「ドルコスト平均法」と呼ばれている。継続的な積み立て投資(ドルコスト平均法)を活用することにより、「時間の分散」によって大きな失敗を防ぐ効果が期待できるため、投資を始める方は積極的に活用してほしい [4]。

3 2013年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のファーマ教授、エール大学のシラー教授が行った「資産価格の実証研究」によれば、ファーマ教授は短期的な資産価格の予測は困難であると語っている。一方のシラー教授は35年先といった比較的長期の価格は予測可能なことを示している。

4 投資期間が一方的な下げ相場であれば、運用期間中の平均取得金額が少なくなるドルコスト平均法は有利であるが、逆に、一方的な上げ相場が続いてしまうと、ドルコスト平均法よりも一括で取得したほうが有利になる点はデメリットとなることに注意が必要。この場合、ドルコスト平均法で時間を分散したことにより、かえって機会損失になってしまうからだ。

*****

【インデックス】

インデックスファンドは市場の構成銘柄をパッケージ化した商品であるため、「
市場をそっくりそのまま再現できる金融商品である」といえる。

金融マーケットが機関投資家によって支配されるようになった現在、市場の平均値(インデックス)の値動きは投資のプロの動きをリアルタイムに反映する指標そのものとなってしまった。新しい情報が発生し、プロが判断を変えるたびに市場平均も連動することになる。

このように、市場平均そのものが投資のプロと呼ばれる機関投資家全体の判断による合成期待値となった今、世界中のトップトレーダーを含むプロの運用判断を
1つにまとめてしまうには、インデックスを活用することが合理的な選択肢であると考えられる。

また、インデックスファンドは売買手数料も安く、運営コストも安いため、わずかな手数料を支払うだけで「
プロの運用チームのスタッフを雇うのと同様のメリットが得られる」ことになる。

資産運用にインデックス投資をおすすめしたい理由は
2つある。

ひとつは、インデックスファンドは、「市場平均に連動していることにより、リスクがすでに分散されている商品であること」、「売買を頻繁に行う必要がなく、極論を言えば何もする必要がないため、手間がかからないこと」がメリットとして挙げられる。もっとも、デメリットとしては「平均点しか取れないこと」だろうか...

インデックス投資のメリット市場平均に連動していることにより、リスクが分散されている
売買を頻繁に行う必要がなく、ほとんど手間がかからない
インデックス投資のデメリット平均点しか取れない

しかし、プロの運用機関の80%が、市場平均値(インデックスファンド)を上回ることができていない現状を考えれば、彼らが市場平均を上回るために投入した膨大な調査や人件費等のコストを比較した場合、(ベンチマークを上回るために費やしたエネルギーとコストを信託報酬として1%弱支払うだけでいいのだから)、インデックスファンドを保有することは費用対効果が極めて高いと言えるのではなかろうか?

アクティブファンド売買手数料高い
運営コスト高い
インデックスファンド売買手数料安い
運営コスト安い

またコストの面でもインデックス投資はアクティブ投資に比べて優位性がある。アクティブファンドはインデックスファンドに比べ、非常に高コストである。インデックスファンドの場合、ネット証券などで販売されている商品は、多くがノーロード型と呼ばれる販売手数料がかからない商品になっているため、個人投資家の方はこうした商品を活用したほうが経済合理的である。また、信託報酬が低いファンドが多いのもインデックスファンドの特徴といえる。

すでに述べたとおり、上位
20%のアクティブファンドが市場平均を上回ることは事実であるが、それだけ優秀なファンドがあれば、それはすでにマスコミや週刊誌で注目され、私たちも知っているはずだ。しかしそれは結局のところ、「あとになってみないとわからない」のだ。

さらには、過去
23年間の運用成績が良かったとしても、510年と長期的に渡って市場平均を上回る大手の運用機関の数はさらに少なくなり、そのような運用成績のよい商品を選び出すことは簡単ではない。特に数年間だけの成績を見ても、標本データ(サンプル数)が少なすぎるため、運用方法がたまたま相場にフィットして運良く儲かったのか、実力により儲かったのか判断の見極めは難しいところだ。

これから投資を始める個人投資家の皆さんは、インデックスファンドを活用することにより、最小限の労力で平均点を取ることが可能となるため、将来の資産形成の手段として積極的に活用していただければと思う。

インデックスファンドは非常にたくさんの種類があるが、同じインデックスに連動するファンドであれば運用成績はほぼ連動するため、あまりこだわる必要はない。例えば、日本の株価指数である日経平均
225に連動するファンドであれば、日経平均が10%上がれば、どのファンドでもほぼ10%上昇するように設計されているので自分の好みで選べば構わないだろう[5]。

インデックスファンドの中には、投資対象の異なるインデックスファンドをシリーズ化しているものがあり、これらをバランスよく組み合わせることで、コストやリスクを最小限に抑えながら、世界中のマーケットに分散して投資を行うことが可能となるため、積極的に活用していただければと思う。

5 規模の小さなインデックスファンドを選択してしまうと、指数構成銘柄全てを組み込めずに本来10%上昇すべきところが、9%11%8%12%になり、本来の指数から±数%程度の誤差が発生してしまう可能性がある(これを「トラッキングエラー」という)。そのため、なるべく規模の大きなファンドを購入されることをおすすめしたい。仮にトラッキングエラーの大きな商品を購入し、本来の株価指数を上回るリターンを上げたとしても、同様に下回るリスクもあったため、結果論としては成功(結果オーライ)だが、商品選択の判断としては失敗といわざるを得ない。

国際分散投資③~複利効果と時間的分散~へ続く


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(参考:カン・チュンド
 忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術)アスカビジネス、2009
参考:山崎元、水瀬ケンイチ「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド朝日新書2015年)
(参考:内藤忍「内藤忍の資産設計塾【第3版】あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法」自由国民社、2015年)
参考:チャールズ・エリス「敗者のゲーム(新版なぜ資産運用に勝てないのか」日本経済新聞社、2003年)
参考:ハワード・マークス「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」日本経済新聞出版社、2012年) 

国際分散投資①~資産運用を始めよう~


グローバル社会はヒト・モノ・カネ・情報が国境を越え、ボーダレスに移動する時代。

世界はひと昔前に比べればだいぶ身近なものになったし、
ITインフラが発達したおかげで、私たちの生活の多くは物理的な制約から解放され、国境を越えて地球上を自由に動き回ることができるようになった。

金融の世界でも同様に、海外に資産を持つ日本人の数は、ひと昔前に比べて増加傾向にあるという。その理由としては、お金が国境を越えて瞬時に移動するボーダレス経済のなかでは、自国のみで資産を運用するよりも、経済成長が見込める他国への投資を組み合わせたほうが、より多くの利益を得ることが期待できるからだろう。これは期待収益率の観点からは正しい考え方だといえる。

さらには、日本という国家自体の将来に対する危機感も、昨今の海外投資を大きく後押ししているといえる。現在、日本は
1,000兆円を超える膨大な額の借金を抱えており、恒常的な財政赤字に陥っていることは、皆さんもよくご存じのとおりだろう。私の周りでも国家破綻への警戒感から「資産防衛」を目的として、「投資」という名目で海外に財産を移転している富裕層の方も少なくない...。

*****

【日本人よ、世界に投資しよう!】

そもそも、世界的に見れば、富裕層と呼ばれる人たちが自国以外に財産を持つことは決して珍しいことではない。
世界の富裕層の多くは、今後起こりうる経済環境の急激な悪化や自国の財政危機などを想定し、自国もしくは主要国のみの偏った資産保有を避け、分散して資産を保有する傾向にある。さらには、値動きの異なる資産をバランス良く組み合わせることで、「長期」・「安定」・「分散」を基本とした資産運用を実現させている。 

国際分散投資①

たしかに、ひと昔前までは世界中に分散投資をするためには膨大な資金が必要とされていたため、国際分散投資のイメージはどこか世界的な大富豪のみが実践できる特別な投資方法のように思われるかもしれない。

しかし、今ではわずか数千円程度の少額資金からでも複数の先進国や新興国の主要な企業の株式に分散できる商品や、国債や社債などの海外債券に分散投資できる商品も幅広く販売されており、リスクを抑えながら安定した利回りを実現できる国際分散投資が、一般の個人投資家層にまで急速に普及することになった。

日本という国の将来を考える時、国内のマーケットは少しずつ縮小し、今までのような経済成長は残念ながら望むことはできないという意見が多い。私は、―決して偉そうに言える立場ではないが―、これからは日本という国自体のポジションを経営者から投資家へと収益モデルをシフトチェンジしていく必要があると思っている。

そのためには、まずは個人投資家が積極的に海外投資を実践することにより、日本そのものを投資国家に姿形を変えていく必要があるのではないか。これによって、長期的な観点から見ても、人口減少による致命的ないくつかの問題点を海外からの配当収益によってカバーすることができるのではないだろうか?

少子高齢化

投資はしっかりとした知識を身につけることで、大きな損失を出すリスクを減らし、安定したリターンを生み出す効果が期待できる。このブログを読んでくださっている個人投資家の皆さんには、ご自身の資産を世界に分散して投資することで、世界経済の成長に貢献していただければと思う。

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【インフレヘッジとしての国際分散投資】

国際分散投資により、複数の国や地域、商品に資産を分散して保有することはインフレ対策としても非常に有効な手段となる。

インフレ率(%)資産を半減させる年数(年)
236
324
514
711

インフレは一般的に過小評価されているけれども、年率2%程度のインフレが続くと仮定した場合、購買力は36年で半減する。仮に年率3%のインフレが続けば、購買力は24年以内に半減し、次の24年でさらに半減してしまう。

年率3%のインフレが続いた場合の購買力
現在の価値24年後48年後72年後
10,000円5,000円2,500円1,250円

厚生労働省の「平成27 簡易生命表」によれば、現在の日本人の平均寿命が男性:80.79歳、女性:87.05歳とされていることからも、これは明らかに重大な問題といえる。

なぜなら、額面上の資産が増加してもインフレにより物価が上昇し、実質の資産価値そのものが目減りしてしまえば、何の意味も成さないからだ。

さらに、何のインフレ対策も講じなければ、贈与や相続の際、承継できる資産価値が大幅に目減りしてしまうことになる。
日本人の多くは預貯金が大好きなことは重々承知しているが、これからは現金だけではなく、インフレに強い資産も積極的に組み合わせていく必要があると思う。

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【資産運用を始める前に】

資産運用と聞くと、高利回りで資産を殖やすことをイメージされる方が多いかもしれない。

しかし、資産運用において大切なことは、「
資産を極力減らさないように、少しずつ安定して殖やすこと」であるといえる。

資産運用の本質高利回りで資産を殖やすこと → ×
資産を極力減らさないように、少しずつ安定して殖やすこと → 

これから資産運用を開始される方は、まずはご自分が取れるリスクの限界の範囲内を定め、目的を達成するための長期的な投資計画を立案されることをおすすめしたい。

そのためには、資産配分方針を策定し、市場の変動に左右されず、機械的に自らが決めたルールを守っていくことが重要であり、具体的にどれくらいの期間で、どれくらいの資産を確保したいのかを投資を始める前に逆算し、明確に設定しておく必要がある。

・20
代、30代の方々の資産設計

20代、30代の方々は、これから資産をじっくり形成し、殖やしていく世代となる。この世代の方々は、老後の準備資金や子どもの教育資金など、具体的な目標を立てる必要がある。最終的に目標金額に到達すればいいわけだから、日々の価格の変動や市場の誘惑に一喜一憂する必要はない。決して目先の短期的なリターンを追いかけるのではなく、10年、20年といった長期に渡る投資計画を立て、積立によって少しずつ元本を追加しながら資産運用を継続できる仕組み作りが重要となる。

・40
代、50代の方々の資産設計

40代、50代の方々の中には、すでにある程度の金融資産をお持ちの方も多いことと思う。資産規模が大きくなり、年齢が高くなるにつれ、資産形成期とは異なった資産運用を検討する必要が出てくる。すなわち、若い世代と異なり、これからは資産を減らさない、守るという発想に切り替えて行く必要がある。人生において最も高いリスクのひとつは、将来働けなくなった時にインフレの打撃を受けて、生活資金が目減りしてしまうことではないだろうか?

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【リスクとリターン】

お金のことを考えるとき、最も基本となるのはリスクとリターンの関係だ。

図1

リターンというのは「投資したとき、どのくらい儲かるかという利益」のことをいう。

その一方、リスクとは「危険性」であると誤解している方もおられるが、投資の世界ではリスクとは「変動」のことをいう(
これは投資の世界では明確に定義されている)。言い換えれば、リスクが高いというのは「変動が大きい」状態のことをいい、リスクが低いというのは「変動が小さい」状態のことをいう。

リスクが大きい(ハイリスク)変動(値動きのブレ幅)が大きい
リスクが小さい(ローリスク)変動(値動きのブレ幅)が小さい

なお、リスクとリターンには、必ず以下の関係が成り立つ。

リスクとリターンハイリスクハイリターン
ローリスクローリターン

資産運用の本質とは、「リスクをどのようにしてどこまで取るのかを予め設定し、超過リターンを狙う行為」であるといえる。

リスクを取らなければリターンは得られない。リスクを取らずしてリターンだけ得ることは不可能だ。なぜなら、リターンの源泉がリスクである以上、リスクが小さい商品からは大きなリターンの源泉が生まれるはずがないからだ(厳密にいえば無リスク裁定という行為があるが難しいのでここでは書かない)。

もっとも、リスクを取っても必ずしもリターンがあるとは限らない点には注意が必要だ。あくまでもリスクを取ることによって、高いリターンが得られる可能性が高まるということ。

しかし、残念ながら、リスクを取れば必ずリターンが得られるという保証はどこにもないことは投資の難しいところでもあるのだが
...。

*****

【短期集中投資から長期分散投資へ】

金融市場は投資家にとっては誘惑が多いのも事実であり、投資家の多くは、注目を浴びている銘柄を買いたくなるものだし、あるいは保有している商品が値下がりすれば売りたくなってしまうものだろう。

本来であれば、世間から注目されているような割高な銘柄は売り、注目されていない割安な銘柄を買うべきなのだが、どういうわけか多くの投資家は割高な銘柄を買い、割安な銘柄を売るといった真逆の行動を取ってしまっているのが現状のようだ—―。

資産運用においてもっとも重要なことは、「市場の誘惑に惑わされず、機械的に運用を継続する」ことにある。市場の誘惑に惑わされないためには、まず、運用の基本方針と目標を決めること。そのためには、「どれくらいの期間で、最終的にどれくらいの資産を確保したいのか」を明確に設定しておく必要があるといえる。

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【投資のプロの
80%は市場平均に勝てない

資産運用には大きく分けて、アクティブ投資とインデックス投資の
2つの運用スタイルが存在している。

アクティブ投資市場平均よりも多くの利益を獲得するために銘柄を絞って集中的に投資を行い、市場平均を上回るように運用する投資方法
インデックス投資株価指数を構成する全ての銘柄に分散して投資し、市場平均と連動するように運用させる投資方法

アクティブ投資は一時的には大きく利益が出ることもあるが、その一方で予測が外れてしまった時の失敗も大きく、ハイリスク・ハイリターンな投資方法であるといえる。実際に、機関投資家が運用するアクティブファンドの80%は市場平均(インデックス指数)を下回っており、「投資のプロでさえも継続して市場平均を上回ることは難しくなっている」のが現状だ。

さらには、長期的に市場平均を上回った運用機関を絞り込むと、その数はさらに少なくなり、しかも投資家であるあなたがそれを事前に知ることは極めて難しいといえる(※ここでいう
80%とは投資のプロの全体の数値なので、個人投資家を含むと全体では95%以上が市場平均を下回っていると考えられる)。

もちろん、その中には市場平均を上回るトップ
20%のアクティブファンドも存在することは事実だが、それだけ優秀な運用機関があるとすれば、それはすでにマスコミや週刊誌で注目され、私たちも知っているはずだ。しかし、あなたにそれがわからないとすれば、やはりインデックスファンドに投資したほうが賢明な選択であるといえるのではなかろうか?

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【運用の基本はインデックスファンドを活用すべし】

インデックス投資は市場平均に連動する商品を保有するだけの非常にシンプルな投資方法のため、大きな成功は期待できない反面、長期的にみれば安定した収益を実現することが期待できるローリスク・ローリターンな投資方法であるといえる。

IMF(国際通貨基金)が予想する世界全体の平均年間GDP成長率は3%4%程度と言われているので、インデックスファンドを保有し、世界経済の成長率の波に連動させておけば、世界の経済成長率と同様のリターンが得られることになる。

国際分散投資④

世界の経済成長率の水準を遥かに上回る運用方法の先にあるのは奪い合いのゼロサムゲームの世界に他ならない。ここには、前提として、一部の勝者のために敗者が多数存在する必要がある。

安定した資産運用、資産保全のあるべき本来の姿とは世界経済の成長率を享受するプラスサムの世界であるといえるのではないだろうか?

これから資産運用を始められる皆さんは、インデックスファンドを活用することにより、「最小限の労力(費用対効果)で平均点を取ることが可能」となるため、積極的に活用されることをおすすめしたい。

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【コラム①:金融機関のトレーダーは何に投資しているのか?】

金融機関のトレーダーをしていた頃、クライアントによく聞かれる質問があった。

それは、「
あなたたちトレーダーは可処分所得を一体何に投資しているのか?」という質問だった。

個人投資家の多くは「
金融機関のトレーダーは投資のプロだから、家に帰ってもトレードに精を出しているに違いない」と思われているかもしれない。

しかし、その答えは
NOだ。そもそも、証券取引法ではフロントランニング(金融機関のトレーダーが業務でポジションを取る前に自己資金を投資して利益を得る行為)は厳格に禁止されているため、給料を自己のトレード資金に充てることはできない(一応そういうルールになっている...)。

というよりも、法律以前に金融機関のトレーダーはそもそも家に帰ってトレードをする時間が存在しない。トレーダーという職業にはそもそも残業という概念が存在しないので、起きている時間はすべて会社の利益に貢献すべく「現金製造機」になることが要求されているのだ。それができなければ翌朝出社したら、自分のデスクはなくなっているだろう。

私が知る限り、金融機関で働くトレーダーの多くは機械的に資本を積み立てながらコツコツと地味に投資をしている。なお、ここでいう投資とは一般的に言われている「
安く買って高く売る」という行為ではない(これは投機性収益の獲得を狙うトレード行為そのものに他ならない)。

何とも皮肉な話だが、金融機関のトレーダーの多くは「銘柄分析」もせず、「値動きのチェック」もせず、「売買」もせず皆さんの想像とは全く異なる投資を実践しているのだ。

これから数回にわたって国際分散投資を例に投資の超基本的な内容を書いていくが、ここでの内容は金融市場(マーケット)に対して常に中立的(ニュートラル)な立場を採用していくこととする。「どのタイミングで買うのか?」「どのタイミングで売るのか?」「何に投資したら儲かるのか?
といった内容に関しては一切触れないので、トレードがうまくなりたい方はあまり参考にはならないかもしれない。

私はトレードが趣味の方を否定はしないし、むしろ多くの日本人が積極的に金融市場に参加することは非常に好ましいことだと思っている。だけど、トレードがうまく行かない方はトレードそのものを辞めてしまったほうがいい。また、時間の無い方は平均点だけ狙って行けば十分だ。

金融市場は常に誰にでも開かれている。それは決して機関投資家だけのものではないし、フリーターの方、派遣社員の方、主婦の方、会社員の方。たとえお金がなくても、時間がなくても、投資は実践できるということを少しでも多くの方にお伝えできればと思う。

国際分散投資②~分散・積立・インデックス】へ続く

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(参考:カン・チュンド
忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術)アスカビジネス、2009
参考:山崎元、水瀬ケンイチ「ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド朝日新書2015年)
(参考:内藤忍「内藤忍の資産設計塾【第3版】あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法」自由国民社、2015年)
参考:チャールズ・エリス「敗者のゲーム(新版) なぜ資産運用に勝てないのか」日本経済新聞社、2003年)
参考:ハワード・マークス「投資で一番大切な20の教え―賢い投資家になるための隠れた常識」日本経済新聞出版社、2012年)

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