その空想時代には自動車渋滞や事故が存在しない。
なぜなら、誰もが飛行機で移動する時代になったから。
そこには電線が一本もなく、煉瓦の建物も綺麗に保全され、市街の景観が維持されている。
また、貧富の差がなくなったので、戦争や争いもない。
不老回春薬でどれだけ歳を重ねても私たちは老人にならない。
「富の平均」・「健康の平均」・「思想の平均」がノーマルになっている大正三十七年の日本は全て薬のおかげ。
その特効薬を開発したのは日本であり、世界へ輸出しているので財政も大幅な黒字状態となっている。
しかし、この世の中で最も権力があるのは国立大病院という官(行政)が担っている。
測頭機で少しでも脳に異常があるとわかったら巡視官が薬を指定し、私たちの脳はただちに最適化される「理想的な社会」。。。
とても考えさせられる。
「平均」という概念がすべてを支配するこの世の中は一見すればユートピアに見えるものの、実はそれは官の統制社会による、というもの。星一(星製薬・星薬科大学創立者)が出版したまぼろしのSF小説「三十年後」。
大正七年(1918年)に描かれた「大正三十七年(昭和23年)」(1948年)の日本の姿。
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平成が終わり、今日から「令和」という新時代を迎えた日本。
私たちが経験した平成という約30年間の月日は、どんな時代だったのだろう?
戦後、焼け野原から出発した日本は、時代の流れを運よくとらえ、大きく利益を上げることができた。
極端な集中投資で成功を収めたこの国は、過去の成功体験に捕らわれ、バブル景気をピークとして崩れていった。この国はポートフォリオを分散させ、本来の投資の在り方を怠ってしまい、失われた三十年にもがき続けることになる。
平成という時代は真の自由と平等路線に向かい、国境線は一昔前に比べ敷居が下がり、多くの企業が国外に新たな販路を求め、あらゆる側面で、グローバル化が進んだ。
すなわち平成とは、日本が30年掛けてようやくノーマライズ(標準化・平均化)した時代だったといえる。
ここまでの日本が辿ってきた30年の道のり、そしてこれから日本が歩む道のり。
私たちの30年後の「令和三十年」は、どんな世の中になっているのだろう?