ネブカデネザルの治世第
2紀元前604、バビロニア帝国の統治者であったネブカデネザル王はある夜、不思議な夢を見た。神は夢の中でその結末を示されたが、朝目覚めた王はその夢の内容を忘れてしまった。

その結末はおろか、夢の内容さえもすっかり忘れてしまった王はバビロニア帝国の学者たちを集めたが、誰一人としてその夢を解き明かせた者はいなかった。

そんな中、バビロン捕囚によりエルサレムから捕虜として連れてこられたダニエルは、王の見た夢の解き明かしをする。
ダニエルの預言したネブカデネザルの夢の内容は以下の通りだ。

王は夢のなかで1つの巨大な像が立っているのを見ました。頭は純金、胸と両腕は銀、腹とももは青銅、すねは鉄でできていましたが、足の一部分は鉄、一部分は粘土でできていました。

そのうち
1つの石が山から落ちてきて、この石が像の足を打ち砕きました。すると、鉄も粘土も青銅も銀も金もみな砕かれて、跡形もなくなってしまいました。

しかし、像を打ち砕いた石はどんどん大きくなって、世界中に満ちていきました—―。


kingdom of iron and clay
画像引用元:「
Bible Study Resoures


そして、ダニエルは王の見た夢を説明した後、その解き明かしを始める。


純金でできた頭はネブカデネザル王の統治するバビロニア王国のことを指し、その後に少し劣った銀でできた第2の国が興ります。

次に青銅でできた第
3の国が興って世界を治めます。その後第4の国は鉄のように強い国で、鉄が他のものを粉々に壊すように先の国々を打ち壊します。

最後に王が夢で見たのはその一部が鉄、その一部が粘土でできていました。この国はとても強いですが、一部に弱いところがあります。つまり4の国は分裂した国家のことを指し、鉄が粘土と混じり合わないように、決して一致団結することはありません。

そして最後に、神はこれらの王たちの時代にまったく別の新しい国を建てられます。その王国はこれまでの王国を打ち砕き、永遠に滅びることなく立ち続けるでしょう。

そして、1つの石が人手に寄らず山から落ちてきて、鉄も粘土も青銅も銀も金もすべて砕いてしまいます。この夢は後世に起こる出来事を王に知らせたもので、正夢であり、その解き明かしも確かです――。

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【民主主義の本質は愚集政治である】

6/23に実施された国民投票により、イギリスのEU離脱(ブレグジット)が国民投票によって決定した。

今回の投票はどちらに転んでもおかしくない状況だっただけに、世界中のマーケットに与えた影響は予想以上に大きく、金融マーケットは一時的にリーマンショックを彷彿とさせる大混乱に陥った。

実際に
EU離脱が行われるのは2年後の2018年とのことだが、金融マーケットというのはいつも瞬時に価格を織り込んでしまうのが、どうも厄介なところだ。

しかも、マーケットの世界は待ってましたと言わんばかりに、いい事も悪い事も立て続けに起こる。


私は米国為替報告書を参考に1ドル=102円相当が適正と捉えてポジションを管理していたので、100円を割れて来たときはさすがに驚いた。


まぁ、為替の話はひとまず置いといて...。

今回の出来事は、良くも悪くも「民主主義」の恐ろしさを私たちに教えてくれる絶好の機会となったことは間違いない。

世界中どこの国であれ、賢い人間(有識者)と愚かな人間(無知な人)は人口比率でいえば、相対的に後者のほうが圧倒的に多くなる。

したがって、多数決という方式を採用した場合、後者の意見が尊重されることになり、誤った判断をする可能性も少なからずあるわけだ。

(※
もちろん有識者が必ずしも正しい判断をするわけではないし、無知な人が必ず間違うわけではない)

ごく一部のエリートたちが行う独裁政治も問題だが、大部分の無知な民衆の意見を尊重する衆愚政治もまた問題である。「民主主義」と言えば聞こえは良いが、その実態は「衆愚政治」に他ならないのだ。


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【鉄と粘土が意味するものとは?】

ネブカデネザル王の見た夢と、それに対するダニエルの解き明かしを史実に当てはめて考えてみるとどうなるか、聖書は以下のように解釈しているようだ。

Nebuchadnezzars-Statue-Graph
画像引用元:「Bible Study Resoures

まず、純金の頭でできたネブカデネザルの統治する第1の国はバビロニア帝国を意味する。

1の国:バビロニア帝国(独裁政治)

バビロニア帝国
は独裁君主制により完全な統治が行われていたが、ダニエルはいつの日かこの王国が滅びることを王に伝えている。事実、紀元前539年、金の頭であるバビロニア帝国は73年に及ぶ世界制覇に終止符を打ち、滅亡した。

・第
2の国:メド・ペルシア連合帝国(
寡頭政治)

バビロニア帝国に代わり、
メド・ペルシア連合帝国が紀元前539332年までの約200年間、世界を支配することになる。しかし、団結力・統一性に欠けるこの連合帝国は金の頭ほど強固でなく銀の胸と両腕である。

・第
3の国:ギリシャ帝国(貴族政治)

クロスが指導した寡頭政治は終わり
、紀元前333年頃、アレクサンドロス率いるギリシャ帝国が誕生した。ギリシャ帝国では貴族政治が行われ、寡頭政治に比べ、 団結力がさらに劣った腹とももが青銅の国家であった。この後、紀元前275年、一都市国家にすぎなかったローマはイタリア全土を拡大。紀元前86年にはアテネを陥落させた。

・第
4の国:ローマ帝国(平民政治)

こうしてローマ皇帝(
シーザー率いるローマ帝国が誕生する。たしかにローマ帝国は強力な軍事力を誇ったが、皇帝の権威や権力は元老院と民会、つまり平民政治によって相対的に劣ってしまい、 ローマ帝国はすねが鉄でできた国に例えられる。これは鉄がもっとも庶民的な金属によることに由来する。

その後、ローマ帝国は滅びるが、ローマ法はヨーロッパ文明の基礎となり、ドイツやイギリスなどヨーロッパ諸国に影響を与えた。
彼らは、アジア・アフリカ・中南米などの植民地支配、また貿易などによる外貨獲得により世界覇権を握った。

この流れは「パックス・ロマーナ
(ローマ帝国)」に始まり、産業革命後の「パックス・ブリタニカ(大英帝国)」、第二次世界大戦後の「パックス・アメリカーナ(アメリカ)」を中心とした平和の構築へと続いていくことになる。


・第
5
の国:アメリカ合衆国

さて、
20世紀後半になるとアメリカ合衆国が世界を支配するようになった。アメリカ合衆国は圧倒的な軍事力を持つが、大統領選挙に見られるように、民主主義国家であるため、投票結果はほぼ5050のイーブンに近い結果となる。

また、移民国家であるため、様々な人種と宗教が交じり合う国でもある。彼らは有事の際は、星条旗の下に一致団結するが、その日常は分裂状態であるのが実情だ。
そのため、鉄のように固い一方、いつ分断されるかもわからない粘土のような状態であり、足が鉄と粘土でできた国と呼ぶことができる。

こうして考えてみると、
現在のヨーロッパも移民国家になりつつあり、アメリカと同じように分裂しつつあることがわかる。

*****:

EU(欧州連合)は長くは続かない


そもそも歴史を紐解いて考えてみれば、ヨーロッパが統一され、平和が保たれていた時期というのはごくわずかで、そのほとんどは争いの歴史であったといえる。

現在のヨーロッパでは、互いの国同士が歩み寄り、戦争のない平和な世界を目指して、EC(ヨーロッパ共同体)やEU(欧州連合)が設立され、ヨーロッパの統一を試みてきた。

また、政治的にも体制を統一し、ユーロをヨーロッパの基軸通貨として、彼らはかつてのローマ帝国の再来を目指しているようにも見える。

しかし、分裂したローマ帝国は、再び元の姿に戻ることはないだろう。
国同士が友好関係を築くこと自体、私は不可能だと思っている。

euro
画像引用元:「endtimesresearchministry


イデオロギーがいかに素晴らしいものであれ、それを実現できないとなれば、ただの絵に描いた餅にすぎない。

そもそも、ユーロという基軸通貨を導入したことによって、誰が最も恩恵を享受しているのかを考えてみればいい。これは明らかに
ドイツとフランスだろう。


ユーロを大量に発行し続ければ、市場に出回るユーロの発行量は供給過剰に陥ることになるから、やがてユーロは相対的に通貨安になる。



ユーロを通貨安に持っていければ、労働力や資源など、ユーロ建ての生産要素を他国よりも相対的に引き下げることができる。



ユーロ建ての生産要素を他国よりも相対的に引き下げることができるということは、
国際競争力が高まるわけだから、自国の貿易収支の黒字化が期待できる。


 

国が違うのにも関わらず、通貨が同じということは、EU(欧州連合)に近隣国家を引きずり込んでいけば、必然的にユーロという通貨の発行量が増えることになり、ユーロの通貨価値は下落する。



特に、
PIGS(ポルトガル・イタリア・ギリシャ・スペイン)のようなお荷物国家を少しでも多く引きずり込むことができれば、ユーロはどんどん通貨安になっていくことになる。




赤字国債を発行しまくるような国は、足を引っ張って通貨価値を落としてくれるありがたい存在なのだから、
ドイツやフランスは労せずして、輸出で大儲けができ、貿易収支を大幅に黒字化できることになる。
 

何てことはなくて、国同士というのは、いつだってテーブルの上では握手をし、テーブルの下では足を蹴飛ばし合っているものだ。

国同士の歩み寄りなど理想論に過ぎないのであってEU(欧州連合)とはテーブルの下を覗いて見れば「鉄と粘土の王国」そのものなのだ。

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【世界経済はどこに向かうのか?】

イギリスはこれから大きな試練が待ち受けているだろう。

まず、金融センターとしての
ロンドンの地位は相対的に低下する、これは避けられない。スコットランドと北アイルランドは独立投票をしてEUに参加を表明する流れになるのか。イギリスは離脱派が首相になると思われるが、残留派の抵抗が待ち構えている。

こうした混乱はイギリス国民を分裂させかねず、
連合王国が崩壊する可能性さえも考えられる。特にイギリスは金融サービスのウエイトが非常に高いので、金融関係者の失業率が上がるように思う。

さらにこれに乗じて、フランスも
EU離脱の国民投票をするべきだと騒ぎだしている。経済問題よりも移民問題が論点になっているのだろう。移民によるテロ行為があったのはご存知のとおりだ。

もし、フランスが離脱した場合は、
EU(欧州連合)のツートップ体制が崩れ、ドイツとの関係が非常に複雑になる。万が一、フランスの離脱が実現してしまうと、イギリス・フランスVSドイツという、第二次世界大戦の最悪の構図に逆戻りになってしまうわけだ。

当面の間は、欧州を震源地としてリスクオフとリスクオンが交互にやって来ることになるだろうから、必然的にボラティリティは上昇局面が続く。

そうなると、アメリカは自国内の景気と世界景気のバランスを絶妙に取っていく必要があるために、金利を上げられる状況ではなくなる。むしろ利下げもありうるかもしれない。

日本は最悪
90円台まで円高が進みデフレ経済に逆戻りする。今の外部環境だと残念ながら円高の流れを喰い止めることはできない。消費税増税の延期が決まったが、むしろ減税しなければ景気が持たないかもしれない。敢えて言えば内需関連のうち、デフレ関連企業は成長が期待できそうだ。

私自身、金融取引の現場でサブプライムショックやリーマンショックを経験させてもらったが、
経済がグローバル化した現在、もはや一国の問題はその国だけの問題では済まなくなっている。

以前このブログにも書いたが、国際化と呼ばれていた時代は、各国が「桶」のようなイメージで「ひしゃく」を使って、水(お金)をすくってお互いの桶に移し合っていた。

ところが、グローバル時代というのは、地球全体が巨大な「風呂」のようになってしまったために、
浴槽の栓を誰かが引き抜いてしまうと、地球上の水(金)は栓の抜けた穴に向かって一斉に流れて消えてしまうのだ。

今や実体経済と金融経済は主従関係が完全に逆転してしまい、
実体経済は金融経済に完全に引き連られてしまっている。

マーケットで取引をされるのは構わないが、本当に暴落が襲って来たとき、約
1年遅れで景気に影響を及ぼすことを私自身、過去に学ばせてもらった。地震に例えれば、金融経済が初動のP波だとすれば、実体経済は、約1年遅れで本震のS波が到達する。くれぐれも注意してほしい。

*****

【鉄と粘土の王国】

民主主義は多数決に基づく政治であるといわれる。それは、人々が相互に検討した結果、最終決定をする場合、賛成者の多かった方をとるのが多数決の原理である、と民主主義の中では位置付けられている。

多数決の原理は少数意見を排除したり、多数の美名の下に少数意見を抑圧したりすることを意味しない。多数決の原理は必ず少数意見の尊重と不可分のものである。

たとえ、いまは少数意見であっても場合によっては多数になりうる可能性が開けているところにこの原理の特徴があるのであって、なんでもかんでも多数で押し切ることは戒められている。

なお、民主政治が成功するためには、以下の
4つの条件が必要不可欠とされている。

1に、その国の社会的・経済的条件がよくなければならない。さらに、国内において大きな脅威となるような事件が少ないということである。国民に不安感がないということが民主政治がうまく行われるための何よりの前提である。

2に、国民の心理的な態度が問題となる。つまり、国民の政治的関心が高くなければならないということである。

3に、国民の道徳的な観念と個人の責任観念の希薄なところでは民主政治は成功しない。権利ばかり主張して義務を怠るところでは秩序と平和は保たれない。

4に、平和的条件が考えられる。特に戦争においては、社会的変動性が激しくなり、民主主義と一致しなくなるからだ。民主主義は人々の平和な心の中に根ざすといえる。

そのうち1つの石が山から落ちてきて、この石が像の足を打ち砕きました。すると、鉄も粘土も青銅も銀も金もみな砕かれて、跡形もなくなってしまいました。

しかし、像を打ち砕いた石はどんどん大きくなって、世界中に満ちていきました—―。


さて、ダニエル書のなかで、像を打ち砕いた石の正体は何なのだろうか?

私は少し否定的な考え方をしていて、この石の正体は「核」ではないかと思っている。

民主主義とは非常に恐ろしい一面も持っていることはすでに述べたとおりだ。

万が一、大多数の人間が「誤った方向、誤った人間」に投票してしまったら何が起こるのか?

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画像引用元:「Mountainside Ripples

もうじきアメリカの大統領選挙が始まる。

もしアメリカの市民権を持っている方がいれば一言だけ言わせてほしい。



  

きちんと調べてから投票してくれ! 


(参考: イギリスEU離脱劇にみる「民主主義」の脅威
(参考: スコットランド独立機運再燃 連合崩壊の懸念
参考: 中西 寛、石田 淳国際政治学」有斐閣, 2013
参考: 上川 孝夫、藤田 誠一現代国際金融論」有斐閣, 2012