春というのは、何かが終わってしまう「寂しさ」と、新しく何かが始まる「期待感」が交錯する複雑な季節だ。
終わりと始まり、いろんなものが同時にやって来る。
そして、いろんなものが同時に去って行く...
散ればこそ いとど桜は めでたけれ
憂き世になにか 久しかるべき
詠み人知らず「伊勢物語」第八十二段より
去る3月31日をもって国民的長寿番組「笑っていいとも」が終了した。
タモリさん、32年間本当にお疲れさまでした!
かつてテレビっ子だった私にとっては、青春時代のランチタイムを共に過ごした思い出深い番組だった。
「それでは明日も見てくれるかな?」
「いいともー!」
この日の正午、JR新宿駅東口のアルタ前は、巨大スクリーンに映し出される最後の生放送を見守る人々で大変な混雑だったそうだ。
放送回数8054回、放送開始が1982年10月4日とのことだから、私が生後4か月目から32年間ず~っと放送してたわけだ。
すごいなー!
個人的には、グランドフィナーレで共演NGと言われていたダウンタウンと、とんねるず・爆笑問題が絡んだのが何とも印象的な場面だった。
「ネットが荒れる~」
「荒れろ荒れろ~」
昨今、視聴者のテレビ離れが続くといわれ、キー局の視聴率も軒並み下がり続けているといわれる。
出典:「日経トレンディネット」
上記は2012年1~2月のデータだが、すでに2年前には競合番組と拮抗していた様子がよくわかる。
今回の番組終了に関してネット上では賛否両論飛び交っているが、
・番組開始当初、いいともの「現場」を創ったスタッフの方々が「本部」のお偉いさんクラスになり、リスクテイクからリスクオフの姿勢になった結果、コンテンツがマンネリ化してしまった
・忙しいランチタイムにわざわざテレビを観る人間は少なく、あくまでも時計変わりにテレビを付ける。ところが、頻繁にタイムスケジュールを入れ替えるようになり、視聴者が混乱してしまい、番組を他に切り替えるようになった
上記のように、
「コンテンツがマンネリ化(硬直化)」する一方で、「タイムスケジュールが非マンネリ化(柔軟化)」したということだろうか?
いずれにしても終了してしまった最大の原因は、単純に私たちが「番組を見なくなったから」だろう。
さて、マンネリ(形式主義)とは、行儀や礼儀作法に当たるマナーと同じ語源だそうだ。
それは安定した心地よさを生み出す一方で、刺激や新鮮さを失ってしまう。
「水戸黄門」「サザエさん」「笑点」「紅白歌合戦」etc...
助さん格さんが三つ葉葵の印籠を見せてもなお、悪人たちが抵抗することもないし、最後は絶対に勝って終わる。
マスオさんがタイ子さんとラブホテルから腕を組んで出てくるところをサザエさんに目撃されて、修羅場に突入するシーンも絶対にない(笑)
長寿番組は、いずれもワンパターンのマンネリ化によって安定が担保されていて、それが長く番組を続ける秘訣であるともいえるだろう。
長年付き添った恋人同士でさえ時が経つにつれ次第にマンネリ化して行くように、ある種の安定したバランス感覚を保つためには必要不可欠な要素なのだろう。
これを踏まえて、自分のプライベートを考えてみると、友人も食べ物も、ある程度は固定化されていることに気付く。
そういえば、スマホの着信音も目覚まし時計も昔からずっと同じメロディーだ。
それはそれで落ち着くんだけれど、たまには窓を開けて新しい風を入れてみようかな...
温故知新
故ふるきを/温あたためて/新あたらしきを/知しる
今の時代、日々の変化があまりにも早すぎて、会社経営をしていると多くの取捨選択に迫られる。
何を残して、何を捨てるか。
何を変えて、何を変えないか。
1つの判断ミスが時として、会社の倒産や組織の崩壊を招く。
先日、会社の基幹システムの全面的な入れ替え作業を行った。
すでに変化に対応できないためだ。
自分たちで手探りで作った初期のシステムはわずか3年足らずしか持たなかった。
唯一残したものは創業時の「理念」くらいだろうか。
「程よい刺激感」と「心地よい安定感」
「新しい事への挑戦」と「守り続けてきた伝統の維持」
アクセルとブレーキの踏み加減と同じで、バランスを取るのは難しいものだ。
マンネリの美学...
変化に対応することは大事だけど、一気に変えると不安定になる。
固執し過ぎるのは良くないけど、変わらないものも大事にしないとね。
古くて良いものは、常に新しいのだから!
(参考: 朝日新聞「「笑っていいとも!」3月で終了 背景に視聴率の低落」)
(参考: マイナビ「エンタープライズ0.2 - 進化を邪魔する社長たち -」)
(参考: Cinra.net「「『笑っていいとも!』放送終了 やっぱり僕たちはタモリに謝らなければいけない」)
【追記】
ひさしぶりにYoutubeで昔のテレビ番組を観てみたが、やはり面白い。
くだらない事にも夢中になって、さらにくだらないアイデアを考え出す大人たちが大好きだ。
以下、いろんな意味で【閲覧注意】なので、視聴は自己責任でどうぞ。
今、こんな過激な放送したらコールセンターがクレームの嵐だろうな(笑)
80年代、90年代のアップテンポの音楽しかり、
麻生元総理が「景気は気から!」とたびたび発言されていたが、個人的に、このくらい斬新でリスクテイクな番組のほうが私たち庶民にとっては明日への活力になるのかなぁと思う。
疲れたときはくだらないテレビ見て大笑いして、アゲアゲの音楽聴いて、さっさと寝るのが1番!
テレビ局さん、面白い番組作ってね~♪