2013年が明けた。


今年の干支は「蛇」らしい。



元日の日経『
春秋』に新約聖書の一説が紹介されていた。

  

わたしはあなたがたを遣わす。

それは、狼の群れに羊を送り込むようなものだ。

だから、蛇のように賢く、鳩のように素直になりなさい。


(「マタイによる福音書」第
1016節)


蛇とは、創世記
3章に出てくる、イブをそそのかして禁断の果実を食べさせた、「サタンの化身(悪の象徴)」として描かれている。

イブはその果実を夫であるアダムにも勧め、神の言いつけを破った二人は楽園を追放されてしまう。


そう、
失楽園の物語だ。



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ギュスターヴ・ドレ「楽園から追放されるアダムとエバ」



失楽園といえば、
97年に放送された古谷一行さんと川島なおみさん主演のドラマを思い出す。このドラマがきっかけとなり、日本中が空前の不倫ブームになったらしい。

渡邉淳一先生恐るべしだ。。。 


あなたの決心が固まったら... 

きらきらとガラスの粉(かけら)になって

このまま消えてしまいましょう

誰も知らない楽園(くに)へ

ZARD永遠」より)


フジテレビの「
SMAP×SMAP」を観ながらラブシーンがどうしても気になって、日本テレビとの間を行ったり来たりしていた方も多かったのではないだろうか? 

私もその一人だったわけだが(笑)  

  

主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。

蛇は女に言った。

「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」

(「創世記」第
31節)

女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、賢くなるように唆していた。

女は実を取って食べ、一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。

(「創世記」第
36節)

神は言われた。

「取って食べるなと命じた木から食べたのか。」

(「創世記」第
311節)

アダムは答えた。

「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、
木から取って与えたので食べました。」

(「創世記」第
312節)

主なる神は女に向かって言われた。

「何ということをしたのか。」

女は答えた。

「蛇がだましたので食べてしまいました。」

(「創世記」第
313節)


ここでは、人類初の責任転嫁の様子が描かれている。
浮気や不倫がバレた時の言い訳と全く一緒だ。

人類というのは
5,000年以上も前から、「自己防衛」という本能は何も変わっていないことがよくわかる。


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画像引用元:「
The Forbidden Fruit



以上を踏まえつつ春秋』を読むと、
 
 

エデンの園で、おいしそうな禁断の木の実を食べるよう蛇がイブをそそのかした。

それは一面、悪事への誘惑であるが、他方、神の掟(おきて)に逆らっても自分の信ずるところにしたがう大切さを説いてもいる。

すでにある国や社会の基準から自由になれとそそのかす蛇は、だから賢い……。

(荒井献「『強さ』の時代に抗して」)


なるほど、そういう発想もあるのか!


つまり、「蛇」というのは、私たちの心の中に宿っている「諸刃の剣」のことなのだと思う。

一方において、楽園の中の「食べてもいい果実しか食べない」という行為は、「自己犠牲」を意味する。行動リスクをとらなければ期待リターンは小さくなる。

他方において、楽園の中の「禁断の果実を食べる」という行為は、「現状からの開放」を意味する。行動リスクをとれば期待リターンは大きくなる。


ただ、禁断の果実を食べまくった私からすれば、
行動リスクを大きく取ったものの、期待リターンが小さかったことも多々あった。

現実社会というのは、なかなか都合良く理論通りには動いてくれないものだ。


それでも、


自己欺瞞に満ち溢れた世界が嫌ならば、

蛇の言うことを素直に聞いて、

楽園から逃げ出してみてはどうだろうか?


ただ、これだけは言っておきたい。


理論上、振り子の振れ幅は常に等しい。

「安定」と「自由」はトレードオフの関係だ。

「安定」をとれば「自由」はなくなり、

「自由」をとれば「安定」はなくなる。


というお決まりの回答ではなく、

 

現実的に、振り子の振れ幅は常に等しいとは限らない。

「安定」と「自由」はトレードオフの関係だ。

「安定」をとれば「自由」はなくなり、

「自由」をとれば「安定」はなくなる。

そして、

「自由」を得るためには「自己責任」がともなう。
 


春秋のコラムは、一見すると失楽園のススメとも言えるモラルハザードではあるが、じっくり考えながら読むと、実はなかなか奥が深い。


行動リスクは自己責任で取るもの、マイナスリターンでも誰かに責任転嫁するなよ!


こういった裏の意味が隠れている気がする。


経済新聞社だけに「投資の自己責任原則」を伝えようとしているのかな?


それとも私が単に深読みしすぎているのだろうか?

編集者の意図は何なのだろうか? 


わずか十数行足らずのコラムの行間をじっくり考えながら読んでいたら、いつの間にかお正月が終わってしまったではないか
...


今年も残すところ、あと
362日!

皆さま、どうぞよい
1年を!


 

主なる神は、彼をエデンの園から追い出し、彼に、自分がそこから取られた土を耕させることにされた。

(「創世記」第
323節)

 

他人様の情事にとやかく言うつもりはないが...

今年はいったいどれだけの男女が蛇にそそのかされて、楽園を追放されるのだろうか
...

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...