人間の感覚って究極まで研ぎ澄まされると、どこまで行き着くのだろうか?


私は嗅覚が非常に敏感で、香水も自分で調合したものを使っている。


柑橘系の香りが好きなので、トップがレモンとベルガモットに少々のオレンジ、ミドルがピーチリーブスとコリアンダー、ここにホワイトジャスミンが入る。

ラストがシダーウッドとサンダルウッド、オゾアニックアコードの構成となっている。

これは、「アクアノヴァのインテンスヒム+バーバリーのウィークエンド」の香りをべき乗してルートで割ったような感じで、ここに全体的にホワイトムスクを付け足すと仕事後の夜遊びにも使えるという、とても爽やかだけど、どこかセクシーな香りとなる。


トップからミドルに切り替わる20分後±1分くらいの絶妙なタイミングが、私にとって至福の時間だ。

金融マーケットで言えば、ボックス相場からトレンド相場に切り替わるシグナルアラートとでも表現するのだろうか。

我ながら、こだわる部分が完全に変態の領域だと思う(笑)



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最近、ストレスが溜まりすぎて大変だ。

私はもともと、嗅覚がかなり鋭い人間なんだけど、睡眠時間が十分に確保できなかったり、頭を整理する時間がなかったりすると、匂いにも喜怒哀楽や息遣いを感じるレベルに到達する(なんとも大げさな表現だが...)

こうなると、満員電車と人混みがマジで地獄だ。マスクをしないと外出が困難になる。

いろんな臭い(匂い)が全方向から飛んで来るから、うっかり因数分解しようとすると気が狂いそうになるのだ。

朝からモグラ叩きが始まると、仕事前に途方に暮れることになる...

私のような症状を「嗅覚過敏症」と呼ぶらしく、ストレスから来る症状なのだそうだ。


それにしても、すごい時代が来たもんだよ。

診察を受けると、ただちに病名を付けられて病人にされてしまうのだから。


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小学生の時だったか、体育館の忘れ物の体操服を嗅いで同級生によく届けた。

先生から、「お前は警察犬か」と言われたことがある(笑)

この事を知っている人たちから、「私ってどんな匂いがしますか?」と聞かれるんだけど、なんか人間ってそれぞれの個体とかあるいはDNAによって特有の匂いがあるんだと思う。

ほら、友だちの家に遊びに行くと、その家特有の匂いがあるのと一緒でさ。


人間には感覚によって外界の出来事を認識するための機能があって、一般的に「視覚」、「聴覚」、「触覚」、「味覚」、「嗅覚」の「五種類」に分類されることから「五感」と呼ばれている。

たとえば、「視覚」を例にとれば、視覚障がい者の人たちは晴眼者に比べて、障害物の知覚能力に優れているとされる。この現象は、「視覚」によって外界の出来事を感知できないために、「聴覚」が平均以上に発達し、私たちが聞き逃してしまうような音も聞こえたりするという(もっとも、「残存諸感覚」を訓練し効果的に使用する訓練をする必要があるらしい)。

また、余談だが、サヴァン症候群といって、知的障がいや発達障がいの人たちのなかには、ランダムな年月日の曜日を言えたり、円周率や周期表を暗記したりと、特定の分野にかぎって優れた能力を発揮する方々もいる。



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文明化した社会に暮らす私たちは、原始社会に比べると、感覚が鈍くなっていると言われる。

たとえば、科学調味料がなかった時代は、人間の味覚は今よりもっと敏感だったはずだ。

ところが、科学調味料が汎用化され、一般家庭やチェーン店に普及するようになってからは、素材本来の味よりも科学調味料の味のほうがおいしいと脳が認識してしまい、舌鼓を打つという表現を口に出す機会も減ってきたように思う。

私もB級グルメが大好きなので、年々味覚がおかしくなっているのかもしれない。


先に、「視覚」、「聴覚」、「触覚」、「味覚」、「嗅覚」が古典的な分類による人間の認識機能だと書いたが、原始社会の人たちは、これら五感に加えて、第六感(シックスセンス)と呼ばれる感覚にも優れていたのかもしれない。

私は目に見えないような非科学的な現象は、正直、半信半疑であって、あまり信じるほうではないんだけど、これは一理あるかもしれないとも思う。

第六感とは、理屈では説明しがたい感覚のことを言い、一般的に霊的な現象に用いられることが多いが(私は霊感がまったくない)、「空気を読む」というのも、ある意味では第六感に分類されるのではなかろうか?


身近な例を考えてみると、皆さんにも当てはまることはないだろうか?


【お辞儀】

お辞儀をすると頭を下げるから相手のことは見えない。

しかし、どういうわけか同じタイミングで頭を上げる。

これは間合いを読むとも言うのだろうか。

文化の影響だと思うが、日本人は抜群にこの感覚に秀でていると思う。


【挨拶】

30メートルくらい先から知ってる人が歩いてきた時。

どのタイミングで気づいたふりしてあいさつするか迷う。

あまり早く声をかけすぎると、すれ違うまでの数秒間が気まずい。

この場合、どこか別の方を向いたり、携帯をチェックするなどして、相手が近づいて来ていることに気づいていないフリをする。

そして、直前まで来たとき、まさに今気付いたようにさりげなく会釈をする。

これも間合い。


【追加料金】

ライスを大盛りにしたいけど、追加料金がかかる場合、店員さんにわざとらしく「うーん、どうしようかな~?」と言って、「あー、やっぱり普通盛りで!」っていうと、ちょっと多めに盛ってくれることがある。

絶妙な間の取り方と行間を読んで欲しそうな顔の表情がポイント。

これは演技力になるのかな。


【口臭】

クンクン。

私「お前、胃が悪い。すぐ病院行け!」

友「は?」

私「胃が悪い人の臭いがする、失礼だけど臭いよ」

友「本当に失礼だな」

後日、彼は胃潰瘍で入院した。

私は空気が読めるほうだと自覚しているが、時と場合によっては空気を読まない。

すいません、でも相手のためなのです。


【女性の化粧】

本人は気づかないかもしれないが、女性の友人がメイクを変えたと思う時。

アイシャドーが若干濃くなったり、眉毛のラインが少し角度が変わったり。

この場合は、「こいつ、男変えたな」と思う。

これ、だいたい当たってる。


【移り香】

女性の友人から違う香水の匂いがする時。

クンクン。

私「○○ちゃん香水変えた?」

友「え、変えてないけど...

私「他に女がいるかも...

この場合、恋人が浮気していることが考えられる。

友「マジで二股だった...

私の鼻で発覚したので、すごく感謝されたことがある。

マジで警察犬なめるなよ(笑)

これは確証がないので毎度、推測の域だが...



こういった症状はたいてい睡眠不足だったり、理性が低下して本能だけで何とか生き延びている状態になると、慢性的に起こる。


何だろう、時々自分が嫌になるが...

【口臭】と【移り香】は私の鼻が敏感なせいかもしれないけれども、【お辞儀】や【挨拶】は「空気を読む」という理屈では説明できない間合い、すなわち行間を読む能力として納得いただけるのではないかと思う。


こうして書き出しながら考えてみると、たくさん出てくる



【スポーツ選手】

サッカーやバスケットボール
選手は、ボールを小さい網の中に入れる感覚に秀でているし、相手が走るスピードに合わせて、適切な位置にボールパスを出す。

おそらく感覚として、絶妙な距離感を測る物差しを持っているのだろう。


【無言のプレッシャー】

ランチタイムなど、混雑している定食屋で席の後ろに立ってる人も、食べている人に対して無言のプレッシャーをかける。

ランチを食べている人は、背中全体で後ろの人が何を言っているかわかると思う。

これも背中で感じる不思議な能力だ。


【温度差】

パーティー会場に行くと、知らない人だらけで、外側でポツーンと立っている人見知りの男性がいる。彼は、誰かに気づいてもらおうとちょっとそわそわしながら控え目に自己アピールしている。

誰かが気づいて、呼んでくれると面倒くさそうな表情をしながらも、心の中では実はちょっと嬉しそうに現地へ向かう。

これも、中心と周りの温度差を敏感に察知できる能力だと思う。こういう方が会場にいると、人見知りは助かる。

人見知りの男性とは、もちろん私のことだが...


【最適化】

会議のコーディネーターやイベントのオーガナイザーは、場の雰囲気を敏感に感じ取って席の配置を最適化する能力が高い。

私の友人でクラブイベントのオーガナイザーをしている男がいるが、私の目線と表情を読んで、立ち位置を最適化してくれる(つまり、私が最もタイプだと思う女性の隣に座らせてくれる)。個人的にこいつは、この能力に関して「だけ」は天才だと思う(笑)


以上、合コンのネタ置き場みたいになってしまったが、人間とはやはりその本性は「動物」であり、しょせんは「獣」にすぎない。


その本能として、五感を使って外界の出来事を認識しているものの、あくまでも五感として便宜的に分類されているだけであって、私はこの中に分類できない認識機能、すなわち第六感もたくさん存在しているのではないかと思う。

頭のいい人たちはわからない事があると、すぐ教科書に頼ってしまうが、社会に出てからマニュアルどおりに行かないことが多すぎて、挫折してしまう人間が多いように思う。

社会の本質を理解するためには、理論だけでは不十分だ。

やっぱり外に出て、感性を磨く時間も大切なのだと思う。

人間は理性を持った高等生物かもしれないが、適度に本能も刺激しないとバランス感覚がとれなくなるのではないのかな?


第六感、意外と現代人も現代人なりに持っているのかもしれない...