柱の裏の落書き

ひまつぶしにぶつぶつ書いてみる

沖合に浮かぶ小さな島~ラブアン訪問記~


沖合に浮かぶ小さな島。

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シンガポールからクアラルンプールを経由してラブアン島にやって来た。

ラブアンは、クアラルンプール、プトラジャヤと並ぶ連邦直轄領のひとつで、マレーシア東部サバ州の沖合いに浮かぶ小さな島だ。

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この島を訪れる人といえば、コタキナバルからブルネイに渡航するフェリーの経由地のため、せいぜい乗り継ぎのバックパッカーが立ち寄るくらいのものだろう。


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島の中心部バンダルラブアン地区

また、ラブアンは
1990年にマレーシア政府がオフショア金融センター(通称:LOFSA)を設立して以来、近年はタックスヘイブン(租税回避地)として注目され始めている場所でもある。

アジアのタックスヘイブンといえば、香港やシンガポールが有名だが、正直なところ、ラブアンはパッとしない寂れた港町という印象を受ける。

LOFSA設立当初の時代背景を考えれば、マレーシア政府はおそらく、香港の金融センター1997年の中国返還後に国際的地位を失うことを密かに期待し、新たな外貨獲得の受け皿となるべくオフショアセンターを設立したのだろう。

ところが、返還後も香港の国際金融センターとしての地位は向上し続け、さらに隣国シンガポールからも大きく引き離され、マレーシア政府の思惑は
完全に外れてしまった。

しかしここで、
2000年代に入ると、人類史上かつてないほどの大革命が起きる。


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出典:「
With Great Opportunity Comes Great Responsibility: The Role Of Business In Shaping Internet Policy

そう、IT革命だ。

ブロードバンドの急速な普及とともにITインフラが発達し、商取引が電子化され、私たちの経済活動の多くは物理的な制約から解放されるようになった。

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出典:「
Importance of Information Technology in Business


その結果、
金融取引を初めとする電子商取引の多くは、より税率の低いオフショア地域を求め、ラブアンへと資金が移動し始めた(実効税率で見れば香港16.5%、シンガポールが17%なのに対して、ラブアンはわずか3%である)。

ラブアンは上記のようなパラダイムシフトの恩恵によってその価値が再検討され、近年注目を浴び始めたと考えられる設立から25年経った今でも、特に島自体が発展しているようには見えないが...。 


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窓を開けると亜熱帯の風、まさに南国気分だ。


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しばらくの間、ゆっくり休暇を取るにはいい場所かもしれない。

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*****

ホテルを出て、
タクシーで周囲を回ったが本当に何もないのどかな島だ。


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免税港。ここを通過する貨物は全て免税扱いとなる。

考えてみれば、資源や産業に恵まれないラブアンのような島国は、税率を低くすることにより外資系企業を誘致し、外貨を獲得する戦略を取るしか生き延びる術はないのだ。


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こちらは倉庫街。日中は暑いので、ほとんど人影も見当たらない。

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関税が全くかからないのでアルコールやたばこ、香水などが非常に安く購入できる

*****

この島は、注目され始めているとはいえ、周辺諸国の経済発展から完全に取り残されてしまったかのように見える。

クアラルンプールから飛行機で
2時間余り、沖合に浮かぶ小さな島。

ケイマン諸島やバミューダ諸島など、たまに新聞紙面を賑わすタックスヘイブンの実態は、おそらくどこもこんな感じなのだろう。

とはいえ、法人設立候補地としてせっかく視察に来たので、金融センター(
LOFSA)に足を運んでみることにした。


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ラブアンオフショア金融センター(LOFSA

一般的にタックスヘイブンは、マネーロンダリングの温床とも言われており、正直なところ暗いイメージしかなかったが、実際に足を運んでみると想像していたよりまともな場所だった。

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ここが受付

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ここは会議室

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ラブアン法人の設立・管理を代行するトラスト(信託会社)の一覧表

LOFSAの担当者にオフショア法人設立を検討している旨を伝えると、設立代行業者の一覧表をくれた。

1990年から2015年現在までに延べ1万社以上の法人が設立されている実績を考えると、年間の設立数は単純平均で400社くらいだろうか。

全部でトラストが40社くらいあるので、1トラストあたり平均で250社程度を管理していることになる(世界有数の大手会計事務所もラブアンで設立代行サービスを行っているようだ)。

これからもっと増えていくのだろうか。

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LOFSAの周辺は何もない集落だ

昼食後にトラストをいくつか訪問しようと金融センターに戻り、受付で入居テナントの一覧表を見せてもらった。


ところが
...


ここで驚愕の事実が発覚する。

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なんと世界中の大手金融機関が、この小さなビルの中に拠点を構えているではないか!

可能なかぎり金融機関を回りインタビューを受けたが(何とも迷惑な話だ)、法人口座に限ってのみ口座開設が認められているようで、個人口座の開設をするには莫大な預金をしなければならないとの回答だった。

大手会計事務所を含むトラスト業者と世界中の大手金融機関の見事な連携プレー。

それらは決して胡散臭いペーパーカンパニーではなく、現地の人々を雇用し、賃金を支払い実体のあるオフィスを構えて法人向けの業務を行っている(ここがポイントだ)。

人口わずか
9万人足らずの小さな島、香港やシンガポールと違ってローカルの人々がここに来ることもないだろう。

では、彼らはここで一体何をやっているのだろうか?


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おそらくだが、
トラストは法人の管理業務によって世界中から集めた資金を、別のフロアにある銀行のオフショア口座で管理させているのだろう(このビルの中だけで取引が成立する)。

それと同様に、オンショア法人はオフショア法人を使い、アジア諸国で得た利益を本国には戻さずに、ラブアンのオフショア口座にプールする(本国に戻さないかぎり課税タイミングが猶予されるため、ほとんど税務コストをかけずに合法的に再投資に回せることになる)。

このスキームが合法とされるのは、

まず前提として、
マレーシアは二重課税の防止策として、諸外国との間で租税条約を結んでいる。




ラブアンはマレーシア連邦直轄領のため、当然ながらマレーシア本土との租税条約が適用される。



マレーシアが諸外国と租税条約を結んでいるということは、
租税条約は当然ラブアンにも間接適用される。



マレーシア本土とラブアンの間に租税条約が適用されると、二重課税の防止策として、ラブアン法人はマレーシア本土ではなく、ラブアンに法人税を納める。



ラブアンはタックスヘイブンなので
法人所得はマレーシア本土の25%に比べて、わずか3%の低税率で税務コストを削減できることになる



ゆえに、ラブアン法人は
3%の税金さえ払えば、マレーシアと租税条約を結んでいる他国に法人税を納めずに済む(※正確には3%2リンギットのいずれかを任意選択できる)。


まるでアリストテレスの弁証法のようだが、彼らは上記のような租税回避スキームを利用して法人業務を行なっているのだろう(※日本居住者の方はオフショア法人を安易に設立したところで、取締役を含む現地従業員の雇用や賃金の支払い、ビジネスとしての実体がないと租税回避が無効となるので注意のこと!)。

※日本とマレーシアは租税条約を締結しているが、ラブアンは対象外となっているため、このスキームが有効かどうかはわからない。 

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上記のような取引はラブアン島内というよりも、厳密に言えばこのビルの銀行内の、さらにオフショア口座という電子空間の中だけで、莫大な金額の資金移動が行われているのだ。

一見すれば、「島自体が発展しているようには見えない」と先に書いたが、私はどうやら大きな勘違いをしていたようだ。

考えてみれば金融経済と実体経済は全くの別モノであり、この島で暮らすローカルの人々にとっては無縁の世界の出来事なのだ。

というのも金融経済にとって、ラブアンの果たす役割は、ただの帳簿上を行き来する電子データの通過点にしかすぎず、
LANケーブル(ホース)の中を通過する電子データ(水)が島に潤いをもたらしてくれるわけではないからだ。

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出典:「Outdoor Conservation Tips 

タックスヘイブンは実体経済と金融経済の交差点であり、

しかしそれは皮肉にも、決して交わることのない立体交差点となっている。

両極が物理的に
最も近づくはずの場所は、決して交差することがないのだ。
 

*****
 

私はこの島に滞在して、「今までの自分の常識が間違っていたのではないか?」と考えるようになった。


多くの人々が行き交う大都会のオフィス街を歩いていると、ここが金融経済の中心地だと思うことがある。

だけど、もしかしたらそれは私の単なる錯覚だったのかもしれない。

私たちが
今まで中心だと思わされていた都会という場所は、単に労働者を効率的に囲い込むために用意された快適な収容所であり、一見すれば何の変哲もないような小さな島の一角に、本当の中心地があるのかもしれない。

おそらく、こんな話を誰かにしたところで「お前は気が狂った」と言われるだけだろうけど
...


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自転する地球の裏側まで領土を拡げることができれば、いつもどこかが太陽に照らされている「日の沈まない国」を創ることができる。

かつて世界屈指の海軍力と自由貿易主義政策のもと、地球上を
植民地として領土化し、ユニオンジャックを掲げさせた大英帝国。

彼らはかつての支配力は失ってしまったように見えるが、独立した多くの島国はその後タックスヘイブンとして姿形を変え、現代も金融経済に強い影響力を持ち続けているようだ。


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ラブアン島の夕暮れ。陽は沈み、またどこかの領土に陽が昇る

現在、タックスヘイブンと呼ばれる地域には数百兆円ともいわれる莫大な富が蓄えられていると聞く。

人口がわずか数万人、平均月収が
6万円程度の人々が暮らすこの小さな島で、日々いったいどれだけのお金が動いているのだろうか?

もっとも、ここでいうお金とは、
物理的な紙幣のことではなくて、帳簿の上にコンピュータが書いたり消したりしている数字の羅列データがあるだけの話だ。

実体経済と金融経済の立体交差点、いろいろ考えさせられる視察旅行だった。


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沖合に浮かぶ小さな島。

しばらくの間、ここに住んだらいろいろな発見があるかもしれない
...

居住地選択について考える


シンガポールは今日も暑い...


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ここは常夏の島国
...

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今年に入ってから面白そうな商売のお誘いが来たので、ジョインさせていただくことにした。

早速、今回のパートナーを組む投資家の
Kさんとミーティングをした。

私:「さぁて、何から始めましょうか?」

K:「まずは居住地決めようか」

私:「ええっ、引っ越しですか!?」

K:「そう、①税金が安くて、②治安が良くて、③交通インフラが整っていて、住みやすそうなとこ。まぁ、どこでもいいよ~」

私:「
OK、探してきます~」

人生はノリと勢いと少しばかりの運さえあれば何とでもなる。


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早速、行ってきた。



*****



ドバイ(アラブ首長国連邦)】(
2015.05.30~06.05


シンガポールから飛行機で約
7時間。

まずやって来たのは、近未来都市ドバイ。

チャンスがあれば住んでみたい憧れの場所だった。

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市街地へ

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現在、ドバイは建設ラッシュ真っ只中、世界中のクレーンの
1/3が結集しているとも言われている。

隣国アブダビは言わずと知れた世界有数の産油国、オイルマネーを猛烈な勢いで流し込み、イスラム金融の中心地として発展させる計画なのだろう。


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ブルジュハリファ、世界一の超高層ビル20155月現在)

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ドバイモール、世界最大のショッピングモール20155月現在)

ドバイの人々は世界一の○○という称号が好きなのだろうか?

オイルマネーで潤う金融都市ドバイだが、街を移動して思ったのは、何とも言えない無機質で不自然な計画都市という印象だ。

金の力にモノを言わせて、灼熱の
砂漠のど真ん中に豪華な建築物をひたすら並べているだけのように思うのは私だけだろうか?

さらにもう
1つ感じたのは、幹線道路であるシェイクザイード通りに沿ってドバイ国際空港~ジュベルアリ間を結ぶドバイメトロが並行して走っているものの、環状線がないために、交通の便が非常に悪く感じた。

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赤い線がドバイメトロ、空港とジュベルアリ間を結ぶ。アナウンスを聞いても駅名が聞き慣れない名前なので、現在地を点灯させるなどツーリストへの配慮が望まれる。

これだと車を持っていないと、郊外に移動する際は、タクシーで移動するか、歩いて街を移動するしかない(とてもじゃないが暑すぎて街を歩けないよ)。

実直な感想として、ドバイは観光するにはいいかもしれないが、住むには適さないかもしれない。

もっとも、ヘリコプターに乗ってトイレットペーパーを買いに行くようなお金持ちにとっては住みやすいかもしれないけれど。

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こちらはシンガポールのメトロ。現在地を点灯させ、次の駅が点滅表示されているため非常に親切だ。

だいぶ辛口評価ではあるが、東京や香港・シンガポールなどの交通インフラが発達した街に慣れてしまった人間にとっては、この街で生きて行くには慣れるまで非常に時間がかかると思われる。

さらに、自動車の移動について言えば、とにかく信号が少ない。これにより、信号待ちのストレスからは解放されるメリットがある一方で、ひとたび曲がる道を通り過ぎてしまうと、だいぶ遠くまで行かないと
Uターンして元の位置まで容易に戻ることができないというデメリットがある。レンタカーを借りて街を移動される方はこの点、注意が必要だ。

もっとも、悪い評価ばかりしてきたドバイではあるが、産油資源に乏しく、観光産業に力を入れている国だけあって、空から眺めは人工美に酔いしれる最高の街並みだったことを付け加えておきたい。

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パームジュメイラの幹を通ってヘリポートへ向かう

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離陸!

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アトランティス・ザ・パーム

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人工衛星からも目視できる人工島パームジュメイラ

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ブルジュ・アル・アラブ、海上に浮かぶ7つ星ホテル(アゴダで宿泊費を調べると1泊何と38万円!w

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300以上の人口島で構成されるザ・ワールド。まさにハンドメイドの世界地図であり、世界中の富裕層たちが別荘を建て、ヘリコプターやボートで遊びに行くらしい...

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どうでもいいが、ドバイはナスカの地上絵でも作るつもりなのだろうか(笑)


*****


さて、地上に戻り会社登記候補地のジュベル・アリへ向かう。


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フリーゾーンに到着

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おい

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何もないぞ


現地の人たちから「何もないから行くだけ無駄だよ」と言われていたのだが、本当に何もなかった。

メトロの駅を挟んだ向こう側は倉庫街になっていた(そちら側がメイン、休日で入れなかった)。


*****


ドバイの中心街を離れて、下町のデイラ地区を散策してみたが、治安の良さに驚いた。
リゾート気分は全く味わえないが。

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裏道に入っても特に身の危険を感じる場所はなかった

出稼ぎと思われるインドやパキスタン、スリランカ系の住人が多く見られ、物価も非常に安いので、食事やホテル代の
コストを抑えて滞在したい方にとってはおススメのエリアだ。

ドバイは全般的に
物価が非常に高いので、あっという間に財布からお金が出て行ってしまう。

おそらく今まで訪問した国の中ではスイスと同様か、あるいはそれ以上に物価が高い印象を受けた(もちろんシンガポールもかなり物価が高いが
...


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アブラと呼ばれる渡し船、アラブらしい雰囲気が残る

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夜のデイラ地区、ナイトクラブに行けば諸外国との下半身外交ができる(らしい
w

政府に頼らず、民間レベルでの国際交流はとても大切なことだ。

と思う。

なお、コーディネートしてくださったドバイ在住の日本人の方から「ドバイのジュベルアリよりも隣国にアジュマーンという国があるから、そちらで会社登記したほうが税制も緩いし物価も安く生活コストを抑えられるため、検討してはどうか?」とアドバイスをいただいた。

せっかくだから行ってみよう、タクシーでアジュマーンへ向かった。



アジュマーン(アラブ首長国連邦)2015.06.02~06.03



タクシーでドバイから
30分ほど北上すると、シャルジャ首長国を越えてアジュマーン首長国に入る。

アラブ首長国連邦は
7つの首長国が合併して1つの国家を形成しているが、アブダビの国土が全体の8割くらいを占めており、他の首長国は少しタクシーで移動すれば到着してしまうくらいの小さな国土だ。

しかも各首長国の間には出
国審査がないため、アメリカのように気軽に移動できる。この点は非常に便利。


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アジュマーン市街地

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ペルシャ湾沿いの倉庫街、世界中の貨物がこのフリーゾーンに集まる(ジュベルアリもこんな感じだった)

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フリーゾーンの受付、貿易商人が多いのだろうか。ここで金融業やコンサル業をやる人は少ないだろう。

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アラブの人たちは気さくな人たちが多い、写真撮ってるとみんな寄ってくるw

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ペルシャ湾沿いのビーチ、砂漠なのか砂浜なのかよくわからない。海に入るまでに熱中症で倒れてしまいそうだ。

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とにかく食料品全般の物価が非常に安く、生活コストを抑えられそうな街だ。


*****


余談だが、ここで手元の
UAEディルハムが底をついてしまったので両替所を探すことにした。

ところが、土地勘がないことに加え、両替所がそもそも少ないらしく、おまけに暑くて街を歩けないのでタクシーで両替所に連れて行ってもらうことにした。

結論から言うと、アラブはやはり遠い国だ。

ドバイから遠く離れたこの街では、日本円やシンガポールドルは超マイナー通貨であり、両替可能な場所を探すだけで
1時間近くかかってしまった。

マイナー通貨は当然、換金レートが悪いので、たかだか
2万円くらいの両替に手数料が8,000円近くもかかってしまった(為替手数料+タクシー代)

ドバイを離れて他の首長国に移動する方は、
USドルを持って行くか、ドバイ空港で事前に両替しておくことを強くお勧めしたい。

アラブはやはり遠い国だ。



ラアス・アル=ハイマ首長国(アラブ首長国連邦)2015.06.02~06.03



アジュマーンからドバイに引き返せばよかったものを、妙な冒険心が芽生えてしまい、さらに北上してラアス・アル=ハイマ首長国まで行ってみることにした。

ただでさえ日本人がいない場所、タクシーの運転手は
ラアス・アル=ハイマに向かうクレイジーな日本人を不思議そうな顔で見ていた...

タクシーは北へ北へと進む。

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どこまでも続く灼熱の砂漠地帯。

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砂漠...途中ラクダの親子が歩いていたような...

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砂漠...

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砂漠......

人間というのは想像力が働く生き物なので、ここに住んだ場合、自分のライフスタイルがどのように変化するのかイメージできる。

仮に、ドバイ在住の友人から「今からご飯でもどう?」と誘われた場合、この延々と続く砂漠の中をドバイまで遊びに行けるのかと想像してみたが、私はおそらくここには住めないだろう。

しばらく経ってからタクシーの運転手に告げた。

「もういいよ、戻ろう...


もしかしたら、この砂漠の先には美しい楽園があるのかもしれない。

ただ
...私にはこれ以上進む忍耐力がなかったようだ。

中心部にたどり着けず滞在先のホテルに戻った。

もうここへ来ることはないだろう。


*****


中東の視察から得たものは、とりあえず「中東は暑すぎて住むのには適さない」という確信だ。

さらに時差の問題もある(この点でヨーロッパとアメリカは選択肢から除外した。また、税率が高すぎるため東京も選択肢からは除外した)。

グローバル社会といえども、日本の顧客が過半数を超えるような商売をするのであれば、アジア圏内で居住地を探したほうが、電話対応などを考えれば大幅なメリットがある。

中東圏と日本の時差は5時間、アジア圏との時差は34時間なので許容範囲だと思っていたが、このあまりにも微妙すぎる時間のズレは後々大きなストレスになるように感じた。

もっとも、多言語のコールセンターを設置して、
24時間営業ができるくらいのスタッフを確保できる規模であれば、世界中で人件費が割安な国に拠点を構えればよいだろう。

ただ、単身で乗り込んでゼロベースから商売を始めるには、軌道に乗るまで自分一人で全ての業務をこなす必要があるので、このズレは大きな負担となりそうだ(仕組み作りから手探りで始める創業メンバーはこういうところが大変であり、同時にやりがいでもあるのだが)。

ちなみに、アジュマーン首長国は法人登記において現地で従業員を駐在させる義務はあるものの、帳簿作成不要・会計監査義務不要のため、タックスヘイブンと同様、規制に縛られることなく柔軟な経営を実現できそうである(
UAEは税金という概念は存在しないが、タックスヘイブンに分類されるかどうかは定かでない)。

アジア圏にもこういった場所があればよいのだが。

ひとまずシンガポールに戻ることにした。


*****


シンガポールから東京に調査を依頼したところ、アジア圏の中でも低税率国、あるいはほとんど無税国といったタックスヘイブンは多数存在しており、マレーシア直轄領のラブアン、パラオ、サモア、バヌアツなど、いくつか
UAEと同様のメリットを享受できる候補地があるようだ(香港・シンガポールは低税率国に含まれる。これらの国々は税率は存在するのでタックスヘイブンというよりもタックスプリファードといったほうが適切な表現かもしれない)。

この中で私が住めそうな場所はマレーシアくらいだろうか。マレーシアにはマレーシア法人とラブアン法人があり、ラブアン法人は就労ビザを確保できれば、取締役は非課税扱いとなり、マレーシア本土にも住めるらしい。

これはすごい話かもしれない

さっそくラブアン行きの航空券を確保して、ひとまずシンガポール海峡の向こう岸、ジョホールバルへ日帰り視察に行くことにした。



ジョーホールバル(マレーシア)2015.06.07



ジョホールバルへはバスかタクシーで行くのが便利だと思う。マレー鉄道でも移動できるようだが、
1日に23本しか運航していないので何かと不便だ。

今からちょうど
2年前、友人の車でご飯を食べに連れていってもらったことがあるが、発展著しいイスカンダルの地を視察したいこともあり、タクシーで国境を越えることにした。

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MRTブギス駅を降りて少し歩くとバス停の隣にタクシー乗り場がある。

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タクシーは相乗りで一人当たり
1,200円程度、所要時間は40分くらいだったと思う

ウッドランドのチェックポイントを越えてシンガポール海峡を越えるとマレーシアに入る。

なお、相乗りした華僑系のオジさんに「遅くても
17時くらいまでには帰ったほうがいいよ」とアドバイスをもらった。

後で、この発言が何を意味していたのかを身をもって体験することになる
...

人の話は最後まで聞かないといけないね...

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市街地へ向かう

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至る所にクレーンが見える、イスカンダル計画に向けての建設ラッシュ真っ只中だ。

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そうかと思えば、道路の反対側は集落が続いている。何だかアンバランスな街だな
...

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JBセントラル駅構内、マンション販売会社の勧誘がとにかくしつこかった。

イスカンダル計画の土地や物件は、果たして本当に売り手市場なのだろうか?(物件を売り捌くのに必死のように見えた...

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やっぱりマレー鉄道は本数が少ないみたい

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ケンタッキーのセットで
300円くらい、こりゃあ安い♪

ジョホールバルはシンガポールに比べて相当に物価が安いので(
6割くらいか)、JBセントラル駅前に住んでマレー鉄道に乗って必要な時だけシンガポールに移動できれば、かなりの生活コストが削減できるだろう。

と思ったが、マレー鉄道で移動することを考えると現実問題としては難しそうだ。本数が少なすぎる。

もっとも、2019年にシンガポールのMRTジョホールバルまで延伸予定なので、その後は住みやすい街になるのだろうか?

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JBセントラル駅前

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ショッピングモールも充実している、日本料理もあった


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なお、ジョホールバルには日系スーパーのジャスコがあり、現地の人たちで賑わっていた。

しかしこのショッピングモール、とてつもなくデカい。

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ジャスコがあるので日本の食料品が容易に調達できるのは居住地選択としては大幅なプラスだ。

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日系テナントが多数入居する
シンガポールのリャンコート

シンガポールにもリャンコートという明治屋など日系企業が多数入居するビルがあるが、ジョホールバルのほうが遥かに物価が安いのは魅力的だ。

しかし、マレー鉄道に乗れば国境を越えてシンガポールにも移動できるものの、本数が少ないのはマイナスだ。

もっとも、ジョホールバルは鉄道網がないため、車社会であるから、タクシーの移動がメインと考えると、
MRTが開通するまでは、私にはちょっと住めないかもしれない。

タクシーでグルグル街中を回ったが、自転車で食料品を買い出しに行くにはちょっと距離的に遠すぎるかな。

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シンガポールへ戻るため、国際タクシー乗り場へ向かう

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海岸沿いもクレーンの数がすごい!

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海峡の向こう岸がシンガポール、すぐに帰れるはずだったが...

旅にトラブルは付き物、帰り道にとんでもない目に遭うことになるとは夢にも思わなかった。

まず、国際タクシー乗り場に着いてタクシーを待つが、肝心のタクシーが来ない(日曜日の夜のせいなのか?)。


30分に一度くらいタクシーが来るが日本のパスポートを見せると、なぜか相乗りさせてくれない(シンガポールのパスポートを持っている人間が優先されていたように思う。これじゃあ順番待ちの意味がないじゃないかよ~)。

何人かのドライバーに「シンガポールに戻るなら乗せて行ってやる」と言われるが運賃が何と
100SGD9,000円くらいか)、果たしてボッタクリと言うべきなのか、市場原理による需要と供給が正しく作用していると言うべきなのか...

早く帰りたいので、仕方なくバスで帰ることにした。

ドライバーたちが
80SGDまで値切ってきたが無視!(正規料金は50SGD

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バス乗り場は反対側

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とんでもない行列
...

想定外はなおも続く。

バスに乗ったはいいが、シンガポールに戻るにはマレーシアの出国審査とシンガポールの入国審査を別々に受ける必要がある(タクシーであれば車内からパスポートを提示するだけ)。

以前、フランスからスイスにバスで国境越えをしたことがあるが、その時はバスに乗ったまま出入国管理官が一人一人のパスポートをチェックしていた記憶がある。

ところが、このバスはマレーシアの出国審査で全員が強制的に降ろされ、
バスのドアが開いた瞬間に、全員が猛ダッシュでゲートに向かう。ゆえに審査待ちの大渋滞が起こる。出国ゲートの出口で早い者順にバスに乗れるからだ(とんでもないローカルルールだ!)。

さらに、ゲートから出た順にバスに乗っていくため、ジョホールバルで乗ったバスとは違うバスに乗り込んでシンガポールの入国審査場に向かうことになる(ジョホールバルではキレイなバスに乗れたが、
出国ゲート~入国ゲートはボロいバスに乗るハメになった)。

同様にシンガポールの入国審査で全員が降ろされ、上記と同様のことが起こる。

こうして考えてみると、ヨーロッパとアジアの国境に対する概念の違いがよくわかる。

ヨーロッパの国境線の感覚とアジアの国境線の感覚では、ヨーロッパのほうが国境線は実線というよりも点線に近いのかもしれない。

今年
2015年は記念すべきASEAN統合の年、もう少し出入国審査の簡略化が望まれるところだ。

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ここはマレー鉄道のウッドランド駅だと思う

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ウッドランドチェックポイントからクランジ駅までローカルバスで移動、その後
MRTに乗り継ぎ、帰宅したのがAM2時前...

軽い気持ちで視察に行ったはいいが、帰りは
4時間以上もかかってしまった。

しかも、この22時間後に再度マレーシア出国が控えているw

郷に入りては何とやら、華僑系のオジさんのアドバイスに従うべきだった。


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海峡の向こう岸がシンガポール、マレーシアは近くて遠い国だった...


たしかに、イスカンダル計画の舞台となっているジョホールバルは膨大な数のクレーンが立ち並ぶ、まさに発展途上の街であり、強い熱気を感じる街だった

Singapore

しかし、その一方で、シンガポールのMRTが延伸された2019年以降のことを想像すると、国境線を跨ぐ以上は、出入国審査や税関手続きが必要となることから、手続を簡素化しないかぎり、ヒトやモノの移動はスムーズにはいかないのではないか?という印象を強く受けた。

Hong Kong

イスカンダル計画は香港とカオルーンをロールモデルにしていると言われているが、国境線の障壁があるため、個人的な印象としては経済圏の統合実現には懐疑的にならざるを得ない。

海峡を渡るのに
4時間...

もう行かねぇよ
...



ラブアン(マレーシア連邦直轄領)
2015.06.09~06.11


沖合に浮かぶ島ラブアン。

シンガポールからの直行便がないため、クアラルンプールを経由してやって来た。

おそらく、こんな事がなければ人生で来ることはなかったであろう場所。


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一見すると何の変哲もないこの小さな寂れた島は、私に「大きな衝撃」をもたらすことになる。

ラブアン島の訪問記は、後日改めて書くことにしたい。

※「沖合に浮かぶ小さな島~ラブアン訪問記~
2015.07.07追記

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ひとつだけ書いておきたい。

食事中、飛んでくるハエを手で払い除けながらあることに気付いた。

そういえば、ドバイには虫がいなかったように思う。

砂漠というのは、やはり動
物にとって生存には適さない場所なのだろう...



クアラルンプール(マレーシア)】(2015.06.15~06.19



シンガポールから飛行時間わずか
40分程度。

LCC(格安航空会社)を使ってクアラルンプールに視察に行くことにした。

ラブアンで、「ある」衝撃を受けた私は、この時点でマレーシアに移住する決意が固まりつつあった。

今にして思えば、ラブアンからシンガポールに戻らずに、そのままクアラルンプールに滞在するべきだったのかもしれない。


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LCC初体験だったが、近隣諸国を視察するには非常に便利な乗り物だ。

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ペトロナスツインタワー

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ブキット・ビンタン周辺、信号の存在意義について本気で考えさせられた...

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クアラルンプールは
交通機関が充実しているため、極めて移動がしやすい街だ。

さらに、日用品から、タクシー代、ホテル代に至るまで全般的に物価がとにかく安い。


日本人の海外移住ランキング上位に選ばれる理由がわかる気がする。

もしかしたら、シンガポールよりも住みやすい街かもしれない。

信号がもっとしっかりと動いてくれれば
...


*****


クアラルンプール郊外にも足を運んでみた。

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セガンバット駅より(KLコミュニケーター

クアラルンプールは少し電車で移動すれば、あっという間に郊外になる。

ASEAN諸国の首都に比べると、東京がいかに巨大な都市であるかということがわかる。

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打ち合わせのため、タクシーに乗って高級住宅地のモントキアラに向かう

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ここは何というか、クアラルンプールとは別物と考えたほうがいい

東京でいえば、田園調布とかそういう場所に該当するのだろうか。

モントキアラのような閑静な街は、家族持ちなどの落ち着いた方々が住むにはいい場所だと思う。

繁華街好きの私には退屈すぎて住めないかもしれないが
...

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インターナショナルスクールもある

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鯉が泳いでる♪

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夕方の移動は絶対に避けるべき、大渋滞に巻き込まれた
...

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夜のペトロナスツインタワー、メッチャきれい!

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ラジャチュラン付近でクラブ
ZOUK発見!

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もちろん入る
w

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マレーシアは戒律が緩いのだろうか、イスラム教国家の割にはナイトスポットが充実している

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ブキットビンタン駅近くのHSBC10...

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毎晩お世話になってしまった
...

賛否両論あれども、ゲイランのようなガス抜きの場所は男性にとっては必要だと思う。

下半身外交は世界を救うのだ
w

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参考までにシンガポールのゲイラン地区

ドバイ、マレーシア、そしてシンガポール。

夜の治安状況はとりあえず問題なし。

日本は風営法が改正(改悪)されて、ナイトスポットが非常につまらなくなってしまった。

クラブ営業を深夜
0時で閉店させてしまった今、若者たちはエネルギーを発散させる場所がなくて困っているのではないだろうか?

何でもかんでも規制をかけて
厳しくしてしまうのはいかがなものか...


*****


世界中どこの街でも言えることだが、観光スポットというのは通常、化粧をしたキレイな側面しか見ることができない。

街の本当の姿を知るためには、ありのままのスッピンの街も併せて視察したほうがよいと思う。

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プドゥ駅の駅前、環状線沿いとは思えないほど町並みが前近代的だ

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お分かりだろうか、インフラに対して街の再開発が追い付いていないということ

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アジアっぽいっすね~♪

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クアラルンプールは総合的に判断して、だいぶ住みやすい街だと思う。

治安も良く、②物価も非常に安い

おまけに、③交通インフラもしっかりと整備されている

ASEAN諸国全般について言えることは、日本と比べるとまだまだ発展途上の国であり、あらゆる点において粗い印象を受ける。

逆に言えば、それだけ日本という国が完成された成熟国家になっているということなのだろう。

人生は一度きり、上昇気流が吹く成長期の街でしばらく暮らしてみるのもいい経験になると思う。


最後に、④税制について調べてみたところ、マレーシアのラブアン島に法人を登記し、取締役である自分自身に就労ビザを発行することによって、以下2つのメリットが得られることがわかった。

ひとつは、取締役は所得税が免除される

もうひとつは、ラブアン法人から発行された就労ビザによって、マレーシア本土に居住することができる(ただし、マレーシア本土での商取引は不可)。

デメリットとしては、マレーシア本土に在住してラブアン法人の取引をネット上で遠隔操作してしまうと、マレーシア本土の租税を回避できなくなる可能性があるため、実体のあるビジネスオフィスをラブアン島内に構える必要があるかもしれない(ラブアンオフィスは設立業者であるトラストの住所がレジスタードアドレスとなるため、
ビジネスアドレスは任意となる)。これにより所得税が低税率どころか免税扱いになる。


*****


ラブアンに法人を登記し、取締役となって自分宛に就労ビザを発行し、税金コストを免除する。

就労ビザを使って、比較的治安が良く、物価の安いクアラルンプールに在住する。

システム開発は
BPOを通じて、人件費の割安なベトナムやタイに発注し、経費を節約する。

シンガポールへのミーティングは、必要に応じて
LCCを使えば片道40分程度、1万円もあれば往復できる。

夕食後に英会話を勉強したいと思えば、ネットから
アクセスをすればフィリピンの語学学校に通える。

休日はマッサージを受けにバリ島へ遊びに行く、等々。

ひと昔前なら夢のような世界が、ITインフラが整備され、LCCで気軽に国家間を移動できる今日のようなグローバル社会では、いとも簡単に実現させることが可能になった。

本当に便利な時代が来たものだ。


*****


何だかんだ言っても旅は楽しいし、人を成長させる。

もちろん辛い時もあるけれど。

まぁ、人生と一緒だな。


さて、冒険の準備をしようかな
...

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※今回は趣向を変えて写真をたくさん載せて書いてみた。

やってみてわかったけど、
これは書く側も読む側も相当疲れるよ...

誕生日


映画「デンバーに死す時」のなかで、こんなセリフが出てくる。


"人生は少年時代の夏休みよりも早く過ぎ去ってしまう..."



小学生の頃、夏休みがとても長く感じたと記憶している。

おそらく、「時間」という経験値が圧倒的に少なかったために、大人になった今よりも相対的に長く感じたのだろうと思う。

小学
1年生は5とか6歳くらいだから、生まれてからせいぜい2,000日くらいだろうか(365×6=2,190)。

ゆえに、彼ら/彼女たちにとって、人生に対する
1日の占有比率1/2,000くらいなので、1日はとても長く感じる。



ところが、
20代、30代になると、「時間」という経験値が増えるため、人生に対する1日の占有比率が相対的に短くなっていく。

20歳であれば、生まれてから7,300日となり人生に対する1日の占有比率は1/7,300になる365×20=7,300)。

30歳であれば、生まれてから10,950日となり人生に対する1日の占有比率は1/10,950になる365×30=10,950)。※私は今日で33歳になったので、生まれてから12,053日が経過した(らしい)。

同様に
40歳であれば1/14,60050歳であれば1/18,25060歳であれば1/21,900、と人生に対する1日の占有比率が短くなっていく。


つまり、
1日が過ぎる体感速度がどんどん加速して、歳を重ねるごとに短く感じていくということだ。

人生はあっという間というのはこういうことではないのかな。


子どもの頃の記憶は鮮明に残っているのに、近い過去の事はついつい忘れてしまうのも同じ原理だろう。

昨日の晩何食べたか覚えていないとか(笑)

「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもんだ。


*****


さて
...


誕生日が来るたびに思うことが
2つある。



ひとつは、「いったい子どもはいつになったら大人になるのだろうか」、と。

結局のところ、大人と呼ばれる存在になってみてわかったのは、子どもが歳を重ねていくだけのような気がする。

小学生になった頃、
6年生が大きく見えたけれど、6年生になってみると何も変わらず。

6年生になってみると、中学生が大きく見えたけれど、中学生になってみると何も変わらず。

同様に高校生になってみると、大学生になってみると、社会人になってみると、マネージャーになってみると...


結局、人間の本質は何も変わっていないような気がする(私だけだろうか
w) 

子どもたちに偉そうに説教している大人たちも、誰もが昔は子どもだったはず。

案外、今もそうかもしれないね。 


もうひとつは、「誕生日はいったい何をするための日なのだろうか」、と。


誕生日祝いのメールや
LINE返してたら、ほとんど1日が終わってしまったじゃないか...


*****


面白き こともなき世を 面白く
すみなすものは 心なりけり


高杉晋作


体調が悪くて学校を早退した少年時代、早く帰れたあまりの嬉しさに自転車で遠くの街まで出かけたように記憶している。

人生は何事も、心の持ちようということなのだろう。

先のことなんて誰にもわからないし、生きていることそのものがリスクオンの状態であるから、どんな状況下でも人生を楽しめるようにならないとね。

私自身、リスクをとることは大好きだし、リスクを取るのは悪いことではないと思っている。

むしろリスクを管理できないほうがよほどリスクが大きいのではないかな。

では、リスクから逃げられないならどうすればいいかって?

答えは簡単。















リターンを大きくすればいい。





さて、明日早いからハロウィーンでも聞いて寝ようかな。

Eagle fly free

Let people see

Just make it your own way 

んじゃまた



奪われることのない財産とは?


最近、教育業界で働く友人からの依頼があって、中高生・保護者の方々との討論会に呼ばれた。


おそらくこういった場所に、私のようなチンピラ野郎を放り込んだのは何か意図があるのだろう、と自分なりに演じる役割を考えてみた。

私の性格上、優等生的な建前だけの回答はつまらないので、事前に受け取った台本を完全に無視して、好き勝手にお話しさせていただいた。

(悪いオトナの見本です...)

予定調和を乱すのは、行儀が悪いとお叱りを受けることもあるが、それは一方において、硬直した思考パターンに柔軟性や刺激をもたらす。

以下、完全に私の主観的な価値観を書くので反論があるかもしれないが、まぁ、人それぞれいろんな考え方があるので、そのひとつだと思って真に受けないでほしい。

結論先行で言えば「教育こそが最大の財産になりうる」というお話。

そりゃそうだ、わざわざ教育の話をしに来たんだからさ(笑)


思想や価値観というのは多種多様であって、人それぞれ違うもの。

年齢、性別、生い立ち、職業などによっても個人差があるだろう。

そもそもこの世界に絶対の正解など存在しないし、いろんな考え方があっていいと思う。

自分と違う考え方だからといってすべてを否定してしまうと、途端に視野が狭くなり、やがて人間としての成長が止まってしまう。


まぁ、それもいいかもしれないね。

あなたがすでに老人であるならば...



【アリとキリギリス】


ある夏の日、
キリギリスがバイオリンを弾きながら歌を歌って過ごしていると、目の前をアリたちが通り過ぎて行く。

キリギリス:「おい、アリくんたち。そんなに汗をかいて何をしてるんだい?」

アリ:「これは、キリギリスさん。私たちは食べ物を運んでいるんですよ」

キリギリス:「ここには食べ物がいっぱいあるじゃないか。どうして、いちいち家に食べ物を運ぶんだい。お腹が空いたらその辺にある食べ物を食べて、あとは楽しく歌を歌ったり、遊んだりしていればいいじゃないか~♪」

アリ:「今は夏だから食べ物がたくさんあるけど、冬が来たら、ここも食べ物はなくなってしまいます。今のうちにたくさんの食べ物を集めておかないと、後で困りますよ!」

キリギリス:「まだ夏は始まったばかり。冬の事は冬が来てから考えればいいさ~♪」


アリとキリギリス(The Ants and the Grasshopper)
出典:「みんなが知ってる世界の有名な話(アリとキリギリス)

やがて寒い冬が来て、キリギリスは食べ物を探すが見つからず、途方に暮れる。

キリギリス:「ああ、お腹空いたー、困ったなー。どこかに食べ物はないかなあ。・・・あっ、そうだ!アリくんたちが、食べ物をたくさん集めていたっけ。よぉ~し、アリくんたちに何か食べさせてもらおう♪」

キリギリスは急いでアリの家にやって来たが、アリは家の中から答えた。

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出典:「みんなが知ってる世界の有名な話(アリとキリギリス)

アリ:「だから、食べ物がたくさんある夏の間に食べ物を集めておきなさいと言ったでしょう。家には家族分の食べ物しかないから、悪いけど、キリギリスさんにはあげる事ができませんよ!夏には歌っていたんだから、冬には踊ったらどうですか?

キリギリスはアリたちに食べ物を分けてもらおうとするが、アリは
食べ物を分けることを拒否し、キリギリスは飢え死にしてしまう...


イソップ寓話「アリとキリギリス」の物話の中で、作者が伝えたかったのは、

「キリギリスのように将来の危機への備えを怠ると、その将来が訪れた時に非常に困ることになるので、アリのように将来の危機の事を常に考え、行動し、準備をしておくのが良い」

Wikipediaアリとキリギリス」より 


という教えだ。この話の教訓は、「今、楽をしているなまけ者は、そのうち痛い目に遭う」という有名なお話[1]


*****


「そうそう、そのとおり。キリギリスの野郎、ざまぁみろ
と多くの人たちは思うかもしれない。

でも、少しだけ発想を変えて考えてみてほしい。


一方において、アリたちはやがて来る冬に備えるべく、せっせと働いて食糧を蓄えていた。人生は順調な時ほど油断せずに万が一の事態に備える、これは素晴らしいリスクマネジメントだし、堅実な生き方である。

他方において、キリギリスは、今この瞬間を精一杯楽しんでいた。明日には死んでしまうかもしれない、先のことなんて誰にもわからないのだから、好きなことを徹底的に貫く生き方である。

多くの人たちはアリの生き方こそが正しいと教えられ、キリギリスが社会不適格者のように叩かれる。


ここで、キリギリスの言い分を考えてみよう。

キリギリスは、精一杯バイオリンを弾きながら歌を歌っていたし、バイオリンの技術を身に着けるのはアリたちの見えないところでたくさん練習していたのかもしれない。

アリたちもキリギリスの演奏を聴きながら重労働をこなしていたし、ひょっとしたら、キリギリスの音楽が心の支えになっていたかもしれないではないか。

それにも関わらず、餌を運ぶアリは報われる一方、バイオリンを弾くキリギリスが報われないのは、なんとも不公平に思えてならない。


結局、何が言いたいかというと、「どちらの考え方も一理あって正しい」ということ。

決して快楽主義を進めているわけではなく、視野を広げて物事を柔軟に考えることの大切さの一例として捉えていただければ、と思う。

世の中に絶対の正解など存在しないのだから、差別や偏見を捨ててお互いのいい部分をバランス良く取り入れてみればいいではないか。

...とここまで書いたのは、アリはアリでいろいろ大変な人生を歩むことになるからだ。



【壮絶なアリ地獄】


朝から晩まで必死に働き、貯金をして、万が一の事態に備える。

アリとキリギリスの物語の中で、アリというのはサラリーマンの生き方を象徴している。

たしかに、アリの生き方は社会通念上、「最適化された生き方」のように見えるが、ここに「最適化のワナ」が潜んでいる。

長い間、終身雇用制度によって安定した生活を保証されてきたサラリーマンだったが、最近はこのシステムも崩れはじめ、不況ともなれば、社員の生活の維持よりも利潤追求を優先する資本主義の原則を思い知らされ、結局、自分たちは労働力を売ることしかできないプロレタリアートであることに気づくことになる。

一見すれば安泰に見えるサラリーマンの人生も、意外と不安定な柱に支えられていることがわかる。さらに、せっせと食料を蓄える堅実な彼ら/彼女たちの多くは、自らアリ地獄の罠にはまっていくのだ。

アーサー・ミラーによる戯曲『セールスマンの悲劇(Death of a Salesman)』の物語の中で、主人公であるウィリィ・ローマンは極めて経済的価値の本質を突いた捨てゼリフを吐いている。
 

「一生に一度でいいから、壊れないうちにローンを払い切って、自分の物にしてみたいよ!
これじゃあ、いつもゴミ捨て場と競争しているようなもんじゃないか。
支払いが終わりゃ、車はくたばる。払い切った途端、使い切るって仕掛けなんだ」


これは、観客席から眺めてみれば完全なる喜劇だが、当事者にとっては極めて残酷な悲劇である。

そして、さらに残酷なのは、多くの人たちは気が付かないうちに当事者になっているということだ。


*****


ローンで購入したマイホームや自動車。

一見すると、多くの物に囲まれて安定した生活を送る人たちを見ていると、羨ましく思うかもしれない。

それは、キリギリスにとってみれば、自分が手に入れられないものを手に入れたアリたちに対する「嫉妬」や「憎悪」、そして「憧れ」が交錯した複雑な感情をもたらすだろう。

俗にいう、「隣の芝生は青く見える」というやつだ。

しかし、彼ら/彼女たちの多くは人生のある時点で、自分の財産だと思っていたのは、実は錯覚にすぎないことに気付く。

彼ら/彼女たちはフラット35年ローンを組んで住宅を購入し、自動車もローンで手に入れることになるが、ローンの支払いに加えて、金利も負担することになる。

さらに、マンションであれば修繕積立費の負担が必要となり、自動車の修理代の支払いにも追われる人生を送るハメになる。

そして、晴れてローンの支払いが終わる頃になると、
はじめは新築でピカピカだったマンションも耐用年数の終わりに近づき「経済的価値」は消滅し、自動車はとっくに壊れて使い物にならなくなってしまう。


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出典:「SUUMO(マンション・一戸建てお金の面ではどう違う?)」より


これではまるでローンを支払うために働いたようなもので、払い終わるや、気が付いてみるとローンで買ったはずの商品の経済的価値はほとんど消滅してしまう。オプション取引のタイムディケイの概念と本質は同じことだ[2]。

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出典:「残存日数とオプションの価格(日本取引所グループホームページ)」より



冷静に考えてみると、私たちの多くは30年以上の年月、汗水垂らして働いたところで、本当に自分のものと呼べるような財産を何一つ手に入れることができない仕組みになっており、ローンの完済日とともに経済的価値はほとんど消失してしまうのだ。



*****


ここで、悲劇の本質を考えてみたい。

多くの人は長期のローンを組んで住宅や自動車を購入することになるが、ローンを完済するまでは、それを完全に自己の所有物とみなすわけにはいかない。

ローンを組んで住宅や自動車は、20年、30年、という長い年月をかけて、少しずつ私有する仕組みになっている。

そして、払い終わったときには使い切り「財産価値」が限りなくゼロに近づく。

これはもはや財産ではなくて、ただの高額な消耗品ではなかろうか?

こうして考えてみると、私たちが財産だと思っている多くの財産は、実は消耗品であることに気付くだろう。

そうだとすると、消耗品を所有することの意味は、少しずつ所有権を失っていることと同じことではなかろうか?

果たして、人間が一生涯にわたって所有し続け、使い続けられるものなどあるだろうか...?

「諸君は、我々が私的所有を廃止しようとしていると言うので、びっくり仰天する。だが、諸君のこの現在の社会では、社会の成員の10分の9にとって、私的所有はすでに廃止済みである」

「共産党宣言」より


そんなバカな!?勝手なことを言うなって?

だったら法務局に行って登記簿を見ながら抵当権設定を確認してみたらいい。

抵当権者の欄を見れば、「毎月口座から元金と金利を引き落とす資本家」=「あなたの私有財産の本当の所有者」の正体が書かれているはずだ。



〇〇銀行とね...。

 

【裸の王様】


ところで、私有財産とはいったいなんだろうか。


一般に、財産とは経済的価値を持つものをさしていて、
経済的価値を持つものとは売買できる値打ちがあるということである。

これを金で買えるものと考えれば、この世界に存在する多くの物質はこれに含まれることになる。

私有財産は、「生活手段としての財産」と
「生産手段としての財産」にわけて考えられる。

マルクスが
私有財産の廃止について唱える際に念頭に置いているのは、「生産手段としての財産」のことを指しているのであって、生活手段としての財産は私有財産とはみなしていない。。


それでは、プロレタリアが労働によって自分自身のために作り出すものは何かといえば、それは、労働力を再生産するための「生活手段」である。


自分の労働力を売れなくなったプロレタリアに未来はない。

年金制度によってある程度の生活は保証されてはいるが、最近はそれすらも不確実性が高いように思う。

要するに、多くの人たちは、「生活手段としての財産」を一時的に私有しているだけだ。

そう、すべては錯覚にすぎないのだ。


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出典:「みんなが知ってる世界の有名な話(裸の王様)


子どもたちは本当に正直者だ。

大人たちは愚か者には見えない服の存在を信じて声には出さないけれど、世の中を見渡せば、
意外と裸の王様だらけかもしれない。

どれだけ立派な衣服を身にまとっていても、裸の自分と向き合った時、私たちには一体何が残るだろうか?

中身が何も無いとすれば、自分自身がハンガーになってしまう...。


なぁ~んてね♪ 



【奪われることのない財産とは?】


少し長くなるが、シモン中村氏の「渡り鳥の子三羽の話(イスラエル寓話)」を引用したい。


渡り鳥が三羽のヒナを産みました。月日がたち、三羽とも大きくなりました。

ある日、母親が子供たちに空の飛び方を教えていると、突然その地に寒波が襲ってきたのです。これでは暖かい地に移動しなければなりません。

しかし、三羽ともまだ長い空の旅を続けることは不可能です。

母鳥は困り果てた末、一羽だけを背中に乗せて旅たつことに決めました。
三羽はそれぞれ次のように言いました。

一羽目「お母さん、もしぼくを連れていってくださったら、ぼくは一生懸命に働いて、お母さんのために宮殿を建て、ぜいたくな生活ができることを保証してみせます」。

二羽目「ぼくも一生懸命働きます。もちろんお母さんには不自由な生活はさせません。老後には亡くなるまで心を尽くし、責任をもって面倒をみます」。

三羽目「ぼくは努力をしますが、お母さんにどれほどのことをしてあげられるかわかりません。ただ、結婚して子供が生まれたら、お母さんに教わったことを子供には伝えたいと思っています」。

そして、母鳥は三羽目を選びました。

シモン中村「ユダヤ人に見る人間の知恵 たくましい心を育てるために」より



上記の寓話は何とも生々しい話ではあるが、当時のユダヤ人の母親にとってはそれだけ過酷な判断が求められてきたのだろう。

日本のような平和な国に住む母親の感覚では、「子ども全員を抱えて逃げる」というのが当然の選択肢だろう。

ここで、私たちがこの寓話から学ぶべきは、「いつ何があっても持って逃げられる財産を大切にする」、という教訓だ。


“人が生きている限り、奪うことが出来ないものがある。
それは知識である”

ユダヤ教の聖典「タルムード」より


戦争やテロはともかく、地震や津波などの自然災害は日本人とは切り離せないリスクだ。

ある日突然、着の身着のまま逃げる必要に迫られたとき、あなたは何を持って逃げるだろうか?

両手で持てるものはせいぜい、ボストンバック
2つがいいところだろう。

多くの人たちは家や車などの「有形の財産」を大切にする風潮にあるが、それ以上に「無形の財産」も大切にするべきでは?、と個人的には思う。

ということで、冒頭にも述べたように、
教育こそが最大の財産になりうる」というお話。



本当の意味で国家を守るのは「軍隊」ではなく、「学校」なのかもしれないね。


[1]アリとキリギリスのもうひとつの教訓は、アリのようにせこせこと貯めこんでいる者は、「餓死寸前の困窮者にさえ助けの手を差し伸べないほど冷酷で独善的なけちであるのが常だ」、という側面もあるようだ。日本人は優しい人が多いと言われるが、どういうわけか寄付や慈善の文化は根付いていないように思う。
[2]一般にオプションのプレミアムは、「本質的価値」と「時間的価値」から構成される。時間的価値は、最初は緩やかに減少していき、満期日の直前になると急激に減少するという特色がある。この点、新築のマンションは「デベロッパーの開発費」と「新築物件という名の訳のわからないプレミアム分」が上乗せされるため、最初の買い手がもっとも「本質的価値」と「時間的価値」の損失を被る仕組みになっているので、減少角度がオプションとは異なる。投資目的のオーナーは、減少角度が緩やかになり始める築20年±2年くらいの物件を購入されている方が多いように思う。かなり皮肉っぽい表現ではあるが、プレミアムの時間的価値がゼロになる満期日には、本質的価値のみが残ることになり、鉄とセメントの塊=紙屑だけ残るのは新築マンションもオプションも同じこと(笑)

[3]以前書いた記事は、客観性に乏しい内容であったように思う。これは世代の傾向というよりも、単に物欲の無い人間の考え方だったように思う(参考:「モノを買わない人たち」)。ただし、客観的に書くことが必ずしも正しいとは限らないし、多くの人たちが正しいと信じていることが必ずしも正しいとは限らないので、今回はさらに刺激的な発想で書いた。


(参考: 伊藤氏貴 (著)『Like a KIRIGIRISU“保障のない人生”を安心して生きる方法KADOKAWA/エンターブレイン、2013年)
(参考: 木原武一 (著)『ぼくたちのマルクス』筑摩書房、1995年)
(参考: シモン中村 (著)『ユダヤ人に見る人間の知恵 たくましい心を育てるために』マネジメント社、1991年)

オトコとオンナ


オトコとオンナは別の生き物なので、お互いを理解し合うのは難しいといわれる。

データの検証をしながらふと気づいたのだが、①全く同じ条件で、②全く同じ作業をしても、リスクの取り方に男女間では差異があることがわかり、男女の本質を詳しく調べてみることにした。

ここでは、哺乳類の「オス」と「メス」という動物の本質から「オトコ」と「オンナ」についてストレートに書いてみようと思う。

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画像:「Matters of the brain : Why Men  and women  Are so Different


オトコとオンナ、遠くから眺めてみた
――



1.【根本的な違い】

2.【生存戦略】

3.【浄化メカニズム】

4.【銘柄選択の難しさ】

5.【男女不平等社会】

6.おわりに


♀・
♀・♀・♀・



【根本的な違い】


以前、ブログに書いたのだが、


男性は生まれ持った本能から、「少しでも多くの畑に種をばら蒔く」こと、

女性は「畑にどの種を蒔かせるか」ということが
DNAに深く刻み込まれているようだ。

出典:「
永久保有銘柄について考える」より


このことについて文献やネット上の記事を読んでみたところ、おそらくオス(男性)とメス(女性)の動物としての根本的な違いから来ているのだろうと思う。

つまり、

オスは少ないエネルギーでほぼ遺伝子のみを含む配偶子(精子=種)を一度に大量に生産することができる。

メスは配偶子(卵子=畑)を作るためには多くのエネルギーが必要となるため一度に大量に生産することができない。

ゆえに、

オスは多くのメスと交配をすることで、遺伝子を残すという生存戦略をとることができる。

メスは貴重な卵子を使って遺伝子を残すためにはオスと同様の戦略をとることができない。

そこで、メスはどうするかというと、

周囲のかぎられた標本データ(オスたち)の中から相対的に豊富な資源を有するオスの精子を卵子に取り込むことにより、生存戦略の最適化を図る

ことになる。


♀・♀・♀・♀・


【生存戦略】


オスとメスの「生存戦略」について詳しく考えてみたい。

人間も哺乳類に分類される動物にすぎないわけだから、当然ながら子孫を残す本能が
DNAに深く刻み込まれている。

遥か遠い昔、原始の時代から男と女が数々の交配機会を重ねていくうちに、遺伝子獲得のための最適化が行われていった。異性同士を
最適に結びつける脳内回路が進化し、人間の恋愛感情を生み出したという。

その結果、特定の相手を選択し、熱心に追い求め、繁殖のために求愛の「時間」と「エネルギー」を効率的に集中させることができるようになった。

これを
「時間」と「エネルギー」による費用対効果の観点から見ると、少なくともオスとメスの生殖機能は真逆の性質を持っており、子孫(子ども)をつくるコスト(負担)も大きく異なっていることがわかる。


*****


まず、人間のオスについて考える。


人間のオスの場合、精子の放出(射精行為)にはほとんど負担がかからないため、より多くの子孫を残そうとすれば、できるだけ多くのメスと交配する「乱交」こそが進化の最適戦略となりうる。

多くの方々が忌み嫌う「乱交」というのは、
実はオスにとっては極めて効率的な配偶子の分配行為だということになる。

つまり男性は、「交配する女性の人数」×「交配の回数」が多ければ多いほど子孫を残せる確率が高くなるため、
」を重視する戦略を採るのが最適と考えられ本能レベルで考えれば浮気しやすい生き物といえるのかもしれない。

心理学者のクリストファー・ライアンは、先史時代、我々の祖先は「乱交」「乱婚」が中心となる社会
を築いていたと主張する。彼らは、男、女、子どもが混ざったグループで移動する生活を営み、狩猟・採集で得た食料を仲間同士で仲良く分け合うように、「女性」も部族内で分け合っていたという。

彼らは、集団内で複数の性的関係を継続的に結び、親密な血縁集団を形成することで、部族内の全てのメンバーが食欲も性欲も満たされるようにしていたのだという。

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出典:「
Visual News


これは、人間の持つ闘争本能を血縁という仲間意識によってコントロールし、理性によるパワーバランスを保っていたと考えられる


人類皆兄弟とは言うものの、
性的な独占欲求には人類の「動物」としての長い進化の歴史がある。そもそも「恋愛」が人間の心理的な欲求であり、特定の交配相手を勝ち取るための人間の本能であることを考えると、大多数の恋人たちは、特定の相手を独占したがる傾向にある。

動物は、自分の子孫を残すため、本能的に相手を独占しようとするし、
多くの動物は繁殖期が過ぎるまで、交配相手を他の求愛者から嫉妬深く守ろうとする。動物がライバルを蹴落とし、見込みのありそうな相手にのみ求愛し繁殖する自然界では、独占欲はごく正常な行動心理とされている。

さらに、独占欲の強い性の支配者―男性たち―は、女性に対しては「性」を抑圧し、罪の意識を刷り込んでいったと考えられる。「食欲」・「性欲」・「睡眠欲」は動物の三大欲求であるが、唯一、性行為だけは
しなくても死に至ることはない。

たしかに、性欲を抑えて禁欲生活を続けられる聖人君子も世の中には例外的に存在するが、ほとんどの人間にとっては
快楽に負けて性の衝動を抑えることはできない。意志が強ければ我慢できるはずの衝動が、それを我慢できないというのは、人間の罪の意識をさらに強める効果を持つ。

これは、
性の支配者にとってみれば、性的欲求は女性に罪の意識を刷り込み、恐怖心を植え付ける目的として利用するには好都合だったといえるだろう(あるいは、男性は子どもを生産できない運命ゆえ、女性に対するせめてもの抵抗なのかもしれない



さて、先に述べた
「乱交」「乱婚」制度は、先史時代のような「原始共産制」から私有財産制」の時代、すなわち所有権が明確化する時代まで続いていたとされる。

ライアンの説が正しければ、「原始共産制」の社会では「乱婚制度」が築かれていたものの、「
私有財産制」の社会になってから、「一夫一婦制」が築かれたことになる。

なお、
「原始共産制」の時代から「一夫一婦制」の現代に至るまで、私たちには生物学的趣向として、異性の標本データの中から、より均整のとれた相手を無意識に選択したがる傾向があるという。

多くの人たちが均整が取れた相手に魅力を感じるのは、優秀な交配相手を選ぶために進化してきた動物のメカニズムであり、私たちの脳は生まれつき、美しい顔に魅力を感じるようにできているようだ。

均整バランスがとれて最適化された端正な顔だちは、神経伝達物質であるドーパミンを多く分泌させ、性的な反応を強く刺激する。ゆえに容姿端麗な人間は、男女間における交配ゲームで勝ち残る確率が高くなる。

とくに男性について言えば、若くて美しい女性を無意識に好む理由は、卵子の質も良く、量も豊富なため、繁殖時の費用対効果が高いと考えられるからだ。

このように、若くて美しい
女性を目の前にしたとき、男性は恋に落ちるように進化を遂げた。それゆえ、男性には視覚によって恋愛感情を芽生えさせる本能が備わっていると考えられる。

長い狩猟採集生活を通じて、若くて健康的な女性を獲得した男性は、繁殖によって多くの子孫を生産した。その結果、健康的な赤ん坊は古代の厳しい環境下でも生き残ることができたからだ。

上記のような、若くて美しい女性を求める風潮は
現代社会にも残っているようだ――。


*****


次に、人間のメスについて考える。


人間のメスは、オスと違い、配偶子(卵子)が大量生産できない上に、受精から出産までに
10ヵ月以上もかかり、無事に子どもが生まれてもさらに1年程度の授乳期間が必要となる。

これはきわめて大きな負担となるため、交配の相手を慎重に選び、子育て期間も含めて長期的な関係をつくるのが進化の最適戦略となる(
交配だけして子孫を残したまま捨てられてしまうと、食料が調達できずに母子ともに飢え死にしてしまうため)。

また、そういった理不尽極まりない「やり逃げリスク」を回避し、市場価値の低下を防ぐ必要があるため、女性の恋愛感情には「長期安定志向」により男性の乱交の欲望をコントロールするための制御効果の役割を担っているとされる。

女性は生涯に生産できる子どもの数には限界があり、セックスを「貴重品」としてできるだけ有効活用しようとする(※
男性の精子が毎日生産されるのに対して、女性の卵子の基となる細胞(原子卵胞)の数は生まれた時から増えることがないため、出生時に約200万個あった原始卵胞は、思春期には約2030万個まで減少してしまうその後、1回の月経周期につき数百~千個が減少するといわれている。これを、日に換算すると、1日当たり数十個が減り続け、やがて閉経を迎えることになる)。


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出典:「生命の環境研究所(卵子の老化)」


つまり女性は、「交配する男性の人数」×「交配の回数」が多くても残せる子孫の数には限界があるため、」を重視する戦略を採るのが最適と考えられ本能レベルで考えれば浮気しにくい生き物といえるのかもしれない。

女性は
特定の選ばれた男性」×「交配の回数」を選択したほうが長期的な関係を築ける確率が高くなるためだ。

繁殖のために求愛の「時間」と「エネルギー」を効率的に注ぐことができるように
人間の恋愛感情を生み出したと書いたが、男女間の愛着を生み出す脳内回路は、子どもが一人立ちできるまで男女が協力して育児をするために発達した進化の産物ということになる。とくに、女性にとっての恋愛感情は、性欲と愛着とが密接に絡みあっており、恋愛感情は時間の経過とともに安心、落ち着き、そして愛着へと変化していく。

進化論の説明では、人類に訪れた大きな変化は、木から降りて二足歩行で大地を歩き始めたときから始まったとされる。危険な大地を歩くとき、メスには重大な危険が生じた。子どもを腕に抱えながら、野獣に襲われる危険が急激に増大したからだ。そこで、メスを危険から守ってくれるオスがどうしても必要となった。

これは先に述べた心理学者のライアンとは異なる脳科学者
ヘレン・フィッシャーの説だが、進化論の説明では、人類は子どもを育てるために、「一夫一婦制」が必要不可欠となったという仮説が導きだされる。


さて、独占欲の強い性の支配者―男性―から罪の意識を植え付けられている女性にとっては、
特定の男性以外との交配(不貞行為)は恐怖心を植え付けられた状態だ。

性行為には多少なりとも快楽が伴うため、性的欲求を、汚らわしく罪深いものと思い込ませることができれば、
女性はセックスのたびに恐怖心が芽生え、罪の意識に捕らわられるようになる(これは宗教などの不安産業が罪の意識を利用して人々を巻き込んでいく論理パターンと同様だ)。

聖母マリアの時代から、
処女を神聖化し崇拝する風潮が現代社会でも根強く残っているのは、女性には性の快楽を封印し、自分だけの女として独占したいという男性の支配欲求の顕れなのだろう。

男性は「最初の男でありたい」、女性は「最後の女でありたい」と言われるのは、男性の支配欲求と女性の長期安定志向の本質の違いを見事に突いた名言であろう。

思うに、「貞操観念」という発想は一夫一婦制という文化による産物にすぎず、本能的な要素は非常に薄いのではないだろうか。
というのも、種の保存のみを性交の目的であるとすれば、女性にとっては多くの男性との交配が望ましいことになる(極論をいえば、どの男性の種でもかまわないということ)。

ところが、男性からすれば、(本能レベルにかぎって言えば)
一夫一婦制のもとで自分の遺伝子かわからない種を無条件に保存するのは費用対効果に見合わないため、女性は操を立てることで信用を担保し、「養育」という名の債務を男性にも連帯責任で負わせると考えるのが本能的な行動心理ではなかろうか(DNA鑑定技術が進歩する以前、子どもの本当の父親は女性にしかわからず、情報の非対称性が存在していたため)。

それゆえ、
男性の貞操観念については積極的に議論されず、女性の貞操について偏重して議論がなされる風潮があるのは、こういった背景が一因であるように思う。

このような観点からも、女性にとっては特定の男性を選ぶという行為は、性の抑圧から解放され、快楽の追及を正当化できる建前が出来上がる。


*****


こうして考えてみると、男性に比べて女性に結婚志向が強いのは、「生存」と「繁殖」、さらには「性の抑圧からの解放」と「快楽の追及の正当化」を同時に実現できる効果的な手段だからなのだろう。
こういった実用的な目的達成のために、女性は結婚に対して慎重であると考えられる。

女性は男性の外見だけでは、交配相手としての価値があるかどうかを判断することは極めて困難だ。なぜならば、相手が自分をどれくらい守ってくれるのか、すぐには判断できないからだ。

狩猟採集生活という危険な環境下において
、子育ては現代よりも非常に過酷なものであっただろうし、男性の査定基準は、自分と子どもを守ってもらう際、どれだけ頼りになるのか決定的な意味を持っていたからだろう。

それゆえ、女性は、
男性よりも実用性を求め、男性よりも現実的な生き物に進化した。

こうした進化の背景があるため、女性は男性に比べて恋に落ちるのに時間がかかる
――
 

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画像:「
The K2P Blog


なお、興味深いことに、「長期安定志向」
DNAに深く刻み込まれている女性の身体は、自分自身でさえ気付いていないような非常に複雑なメカニズムを進化させたという。

メスにとって生殖行為で最も大事なことは「優秀なオスの精子をより元気な状態で、少しでも多く膣内に射精してもらうこと」だろう。そのため、女性の性器は、自分が愛する男性の性器の形状を記憶してしまうそうだ。

自らの性器の形状を、自分が愛する男性の性器の形状に最適化する
ことにより、性器を完全に受け入れ、より多くの性的快感を与えて射精を促すことにより、少しでも多く射精してもらうことができるからだ。

ゆえに、女性の性器は、愛する男性の性器の形状に最適化される性質があるため、女性が別の男性を好きになった場合、今度はその新しい男性の性器に合わせて形状を変形させることが可能になるわけだ
(男性のみなさん、挿入時に違和感があったら手遅れかもしれない...)。


このように、オスとメスという本質から人間の男性と女性を考えてみれば、男性の性欲は本能に忠実である一方、女性の性欲は学習能力によって快楽を覚えるメカニズムに進化したと考えられる。

多くの男性は最初の射精の段階から快楽を感じる一方で、女性の場合、最初のセックスで快楽を感じる女性は少ないと思う。
女性は学習経験を重ねるうちに、次第にセックスの快楽を覚えていくのだろう。

上記の快楽メカニズムの違いは、男性の恋愛感情が「電子レンジ」のように一気にピークレベルまで到達するのに対し、女性の
恋愛感情が「オーブン」のようにじっくりと温まっていく現象と似ている(※陰陽道では、男性の性エネルギーは「陽」であり、素早く燃え上がる「火のエネルギー」である一方、女性の性エネルギーは「陰」であり、徐々に沸点があがる「水のエネルギー」と説明されている)。

「男は心と身体が別の生き物」と言われるが、これは射精機会×回数を増やすという男性の生存戦略から来ているのだろう。

「心」と「身体」の
相関性(連動性)を数値化したデータが存在するかわからないが、明らかに女性のほうが相関性は高いだろう、と個人的には思う。

 

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【浄化メカニズム】


こうして考えてみると、特に女性にとっての「恋愛」は進化論としてきわめて合理的な産物といえる。

「身体」では、本能によって愛する男性の性器の形状を記憶するという説を書いたが、恋愛が女性の「長期安定志向」によるものであるならば、新しい恋人ができれば性器の形状も変わることになる。

では、以前の恋人の存在は「心」ではどのように処理されるのだろうか?

恋愛においては、女は「上書き保存」で、男は「別名にして保存」。女は別れた相手をすぐに忘れて次の相手に切り替えるが、男はいつまでも昔の相手を忘れない――。

出典:「PRESIDENT Onlineなぜ女は、別れた男をスパッと忘れられるのか 」より


男性は、
交配する女性の人数」×「交配の回数」という「」を重視することにより、「心」と「身体」を切り離すという生存戦略が最適であると考えられる、と先に述べた。

男性が昔の恋人と
何かの拍子にセックスした場合、彼女の妊娠の可能性は、確率的に0%ではない(避妊をしたとしても100%の妊娠を防ぐことはできないため、性行為自体がリスクオンの状態である)。

」を重視する戦略が最適である男性にとっては、昔の恋人を別名にして保存」し、再会の機会を待ったほうが、遺伝子を残せる機会が増えるメリットがあるため、合理性がある。

そのため、男性の脳は昔の恋人を覚えているように進化したと考えられる。

なお、この説が正しいとすれば、男性にとっては極めて致命的な問題が発生する。

男性の場合、失恋して自暴自棄になり、知らない女性と腹いせに一夜限りの関係をたくさん持ったと考えてみよう。
これは一時的な憂さ晴らしにはなっても、心の傷を修復するという根本の解決にはならないことになってしまう。

皮肉にも
「心」と「身体」を切り離すことができてしまうからだ。

ゆえに、男性のほうが立ち直るのに時間がかかることになる。


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出典:「Lumine Magazine

一方、女性の場合は、別れた恋人とセックスをしたところで何のメリットもないことがわかる。

女性は、
特定の選ばれた男性」×「交配の回数」という「」を重視することにより、「心」と「身体」を切り離さないという生存戦略が最適であると考えられる、と先に述べた。

男性に比べて女性に結婚志向が強いのは、「生存」と「繁殖」
、さらには「性の抑圧からの解放」と「快楽の追及の正当化」を同時に実現できる効果的な手段だと書いたが、昔の恋人と再会し、セックスによって妊娠し出産した場合、昔の恋人が自分と子どもを守ってくれる確率は限りなく0%に近い(中絶した場合でも母体に負担がかかるためデメリットが大きい。責任をとって結婚してくれる可能性もあるかもしれないが)。


いずれにせよ、「生存」と「繁殖」
、さらには「性の抑圧からの解放」と「快楽の追及の正当化」の実現が女性にとっては最適な戦略なため、女性にとっては「繁殖」だけを実現させる可能性のある昔の恋人と再会するメリットはない。

」を重視する戦略が最適である女性にとっては、昔の恋人を
上書き保存」し、「生存」と「繁殖」を同時に実現できるよう、新たな恋人をさっさと探すほうが合理的だ。

そのため、女性の脳は昔の恋人を
素早く忘れてしまうように進化したと考えられる。

女性がスッパリと昔の恋人を忘れられるのは、「心」と「身体」が同一の存在だからだ。女性が本能レベルで別れた男性を忘れるためには、新しい恋をし、寝室で愛を育む。

こうして
「心」と「身体」の連動作用が働くことにより「上書き保存」が可能になる。

先ほど、女性の性器は「形状記憶」と書いたが、もし、女性の「心」と「身体」が高い相関関係で同様の動きをしているという仮説が正しければ、脳の「
上書き保存」と身体の「形状記憶」の理論がぴったりと一致することになり「心」も「身体」も新しい恋人に最適化されることになる。

さらには
「生存」と「繁殖」、「性の抑圧からの解放」と「快楽の追及の正当化」さえも同時に実現できる可能性も高くなるのだ。

 

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画像:「
A Future Without War
 

もちろん、男性がこう、女性がこう、とステレオタイプ的に言っているわけではない。男性にも女性的な部分があるし、女性にも男性的な部分があるわけだから、あくまでもそういった傾向にあるということ。

現に、過去の恋愛を引きずる女性もたくさんいるし、私のように機械的に記憶から消し去ってしまう男性もいるだろう

思うに、これは生物学的な差異というよりも、教育観、生まれ育った環境、職業など、社会的要因の影響も大きいのではなかろうか。


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【銘柄選択の難しさ】

「女は上書き・男は別名保存説」はあくまでも仮説のようだが、個人的な実体験や数々の男女の修羅場に巻き込まれた私としては十分にあり得る話だと思う。

今の時代、初恋の異性と結婚するケースは非常に稀だと思うし、その意味ではほとんどの人たちが一度や二度くらいは少なくとも失恋を経験していることになるのだろうか。

適度な恋愛は良い刺激にもなるし、人間の本質と真正面から向き合える貴重な糧となり、人間力の向上につながるが、あまりにも愛が深過ぎてしまうと失恋した時のダメージが大きすぎて心の傷は深いものになる。


*****


恋愛経験を比率換算すれば、恋人の数が増えれば増えるほど、一人当たりの占有比率は相対的に小さくなっていく。

まず、最初の恋人に振られると
100%のダメージをモロに受けるため、心の傷は相当深いものになる。株式投資でいえば、1銘柄に集中投資をしているため、変動リスクボラティリティリスク)が極端に高すぎてしまうからだ(このように考えれば、初恋の人が忘れられないのは標本数が1つしか存在しなかったからだろう、と思う)。

次の恋人に振られるとダメージは単純換算で脳内の記憶比率は
50%(上書き保存不可の場合)、人間には学習能力が備わっているため防衛本能が働き、ダメージの受け方が軽減する。株式投資のポートフォリオ理論と同じで、個別銘柄(異性)に分散効果が働くためだ。

3番目の恋人に振られるとダメージは33.3%、さらにダメージが逓減していく。つまり慣れていくということ。このあたりから個別銘柄(異性)の占有比率にバラツキが出始める。

以降、
単純比率換算でも5番目が20%、10番目が10%、50番目が2%、100番目が1...と経験則が働くため、防衛能力が上がり、ダメージを受けにくくなる(さすがに100人も恋愛経験があるような方は、それはもはや「恋愛」というより「色情狂」のレベルだと思うので、心療内科に行ったほうがよいと思う。株式投資のポートフォリオ理論でも、組み込む銘柄数が増えすぎると指数平均の取引をするのと同じことになってしまうため、変動リスクが小さくなりダメージは受けにくくなるが、その一方で刺激などのリターンがどんどん失われていく。


*****


初恋の異性と結婚し、その後の人生に不貞行為がなかったとすれば、標本データが
1つしか存在せず、比較対象が存在しないため、恋愛とセックスに対しては「絶対概念」となる。

それに対して、失恋と恋愛を繰り返していくと、
標本データが複数に増えていくため、比較対象が存在することになり、恋愛とセックスに対しては「相対概念」となる。

どちらが幸せな人生なのかは人それぞれだろうけれども、極論を言えば、
「相対概念」が適用される男女関係は、リベラルな私からすれば、―それが純粋な恋愛であっても―、極論をいえば「乱交」しているのと変わらないような気もするのだが...(昔の恋人×昔の恋人の昔の恋人×昔の恋人の昔の恋人の昔の恋人...、べき乗計算で凄まじい人数×交配回数になる。ソーシャルネットワークでビジュアル化できたら壮大な乱交パーティーが行われていたことに嫉妬どころか性的興奮を覚えてしまいそうだ)。

別に
... 私は乱交愛好家ではないし、そういった趣味の方を否定するつもりはないのだけど(ちなみに未経験です)、統計分析の観点から考えれば、ある程度の標本データは必要になる。


つまり、標本データが
1つしか存在しないと、偶然の発生確率が高すぎてしまうため、恋愛はギャンブル性が極めて高いゲームになりうる。

その意味では、限られた人生の中で、物理的に
限られた範囲内で最適な標本(相手)を見つけていく恋愛ゲームは、どうがんばっても標本数が少ないので運や偶然に左右されるところが大きいだろう。

リスクオフの姿勢で慎重になりすぎると皮肉にもハイリスクハイリターンになってしまうし、逆にリスクオンの姿勢で大胆すぎると今度は
ローリスクローリターンになってしまう(場合によってはハイリスクローリターン、これは性病などの感染リスクを考慮した場合)。

何とも皮肉なトレードオフの関係だが、
これが恋愛ゲームの本質だろう。


もっとも、人間の本能は驚くべきことに異性という銘柄の査定(スクリーニング)を行う際、自分の所属する環境の中から相手を選択する傾向が高いという。

 

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出典:「
Woman Insight


この現象は、
不確実性の高い変動リスクを回避するために、異性を同じ学校、同じ職場、同じ趣味など、ある程度は自分と高い連動性があり、バラツキが抑えられる標本データの中から無意識に選択する本能が備わっているのだろう、と個人的には思う(路上ナンパや飲み屋のオネエさんは属性や変動リスクが未知数となる)。

とはいえ、
最近はお見合いの新形態であるネット上の婚活も認知されてきているようだし、自由恋愛市場のような不確実性の高いリスクオンのマーケットよりも、はじめから意図的にバラツキが抑えられている人工的な恋愛マーケットも相対的にはリスクオフな選択肢かもしれない、と思うことがある(もちろん一定の確率で想定外の人物がいるためリスクオンの場合もあるが...)。

もちろん人工的な恋愛マーケットの場合、最初からある程度バラつきが統一化された標本データが揃うと思うのでドキドキ感はなくなってしまうというデメリットがあるが、一方で、最適化された標本データの中から効率的に相手を見つけられるメリットもある(あるのかな
...?)。

しかし、そうなると
ドキドキ感を求める人は結局、こっそりと別の属性を持つパートナーを探すことになるのだろうか。


うーん、どの市場を選んでも銘柄選択は難しいところだ

※余談だが、婚活中の女性たちにどんな男性と結婚したいかと質問してみたところ、「私のこと『だけ』を愛してくれる人」、「私のことを『1番に』愛してくれる人」といった返答があったが、後者の言い回しのほうが、男性の本質を理解している大人の女性だなぁと感じる(前者が「絶対概念」、後者が「相対概念」である。もっとも本音は前者だろうけれども)。



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【男女不平等社会】


女性の失恋相談に乗っていると、心の傷を慰めているうちに情が湧いてしまい、手を差し伸べた結果、身体も慰めてしまう男性も少なからずいると思う(
たいていの場合、下心があるが...)。

そして、「弱っているオンナの心の隙間にツケ込むなんて悪いオトコ、最低よっ!」と周囲から非難を浴びることになる。
たとえ...それが男性の善意から来る優しさであったとしても、周囲から一定の理解を得ることは難しいだろうし、私の経験上、どういうわけか女性側に非難が集中することが多い...

 

ある男性は、失恋して情緒不安定な女性に対して「スキがあれば一夜の情交を楽しみたい」という本音(下心)を隠しつつ、「慰めるふり」をしながら愚痴を聞き、お酒を飲み交わす。女性もまた、「男性の優しさがその場かぎりのものであること(建前)」をわかっていながらも、ひとときの安心を求めたいという甘えと同時に、軽い女と思われないような建前(言い訳)を考える必要に迫られる。そこで、男性は女性に対して「お酒を勧める」「あたかも終電に乗り遅れてしまい、外部要因により帰れなくなった」などの口実(建前)を提供し、女性に非難が集中することを事前に回避するような配慮が求められている。

出典:「本音と建前」より


ここまで、人間の本能についてかなりストレートにまとめてきたが、やはり「性」の話題というのは、多くの人々―特に女性たち―にとっては、表立っては「口にしてはならない」という貞操観念が存在しているようだ。
 

われわれはどうして、人間にとっては大変に必要かつ自然にして、正しきものである生殖行為を恥じることなく堂々と口にすることはなく、マジメできちんとした話から除外するのだろうか?殺す、盗む、裏切るといったことばは、臆面もなく口にするくせに、このことだけは、ぼそぼそむにゃむにゃとしかいわないではないか。これはつまり、あまり口に出して発しないことは、それだけ、頭のなかでそれへの思いを肥大させてよろしいということなのだろうか?

もっとも使われず、もっとも書かれず、もっとも口にされないことばが、実際はもっともよく知られ、広く一般的に理解されているとは愉快である。年齢がどうであれ、人となりがどうであれ、パンと同じく、このことを知らない者などいない。このことばは、各人のなかに、表現されることなく、声も形もなく刻みこまれているのだ。そして、この行為にもっとも励む性(女性)が、それについては口をつむぐ債務を負っている。これは、われわれが沈黙という聖域にかくまったところの行為であるから、それを強引に引き出すのは罪悪ともなる。それを告発し、裁くためでも罪となるのだ。そして、あえて非難するとしても、遠回しで、婉曲的なものでしかない。

出典:「モンテーニュ『エセ―
6(ウェルギリウスの詩句について)』」より


男性が、沈黙という聖域にかくまってしまった女性は、性の快楽を封印された状態だ。「性」は罪悪と刷り込まれている女性にとっては、快楽のためにセックスを求める女は言語道断、きわめて許しがたい罪人として映ることだろう。

それは裏を返せば、自分が手に入れることのできない快楽を手に入れてしまった女性への嫉妬心が潜んでいるのかもしれない。

そのため、女性たちは―
男性と一緒になって―、この罪深い女性に向かって、「やりまん」、「淫乱」、「尻軽」、「あばずれ」といった罵声を浴びせることになる。

「出る杭は打たれる」、これは大衆心理とまったく同じ原理だ。

性の支配者―独占欲の強い男性―は、女性の「心」と「身体」を独占するために、性の意識を抑圧すること、さらにそこから生まれる罪の意識や恐怖心は、極めて都合の良い道具として利用される。

性の快楽が罪深い事であると刷り込ませることができれば、女性の浮気を防ぐための抑制効果を持つことになるのだから、
男女間において、女性が性の快楽を封印された状態は、男性にとってはきわめて都合がよいからだ


ところが、ここで男性にとっては身勝手なジレンマが生じる。

男性からすれば、性の快楽を
女性と一緒に味わえるほうが、自身の快感は増していくだろう。

しかしその一方で
自分が独占したい本命の女性には性の悦びを覚えて欲しくない、と。

それゆえ、男性は本命の恋人や配偶者とは別に、快楽を共有できる相手を探すことになる。


果たして
...


どういうわけか、ほとんどの
社会では性に対するダブルスタンダード(二重基準)が存在しているため、女性の性欲は厳しく抑圧される一方、男性の性欲は黙認されているようだ。

男性向けの射精産業が存在していたり、男性の浮気が正当化される風潮があるのは、こういった男性の
身勝手なダブルスタンダードがまかり通っているからなのだろう。

女性に対する性の抑圧が現代でも弱まっていない風潮は、男性の支配欲求にあるのだろうと思うし、男性がこうした既得権を手放さないかぎり、真の男女平等社会の実現は不可能だと思う。


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おわりに


かなり親しい男女間であっても、
性についての話題はなかなか表立っては言えないものだ。

ここでは、「男から見た女」「女から見た男」という視点ではなくて、「男と女」を遠くから眺めてみた。

私自身、
性の話題についてはかなりオープンに議論するほうだと思うのだが(TPOは最低限の常識として弁えているつもり)、目の前の話し相手が変わっても、話している内容はたいして変わらないので、この機会に頭の中をすっきりと整理してみることにした。

*****

結局のところ、頭を
整理してみてわかったのは、人間という生き物は「進化」しているのか「退化」しているのか、何だかよくわからなくなってしまったということだ。

もはや「一夫一婦制」から「原始共産制」に原点回帰しているようにも感じるのは気のせいだろうか(笑)

「原始共産制」が人間、特に男性の本能に忠実である一方、「一夫一婦制」が人間の理性によって後から作られた仕組みであることを考えると、現代社会の「一夫一婦制」は動物園の檻のような
不自然な最適化がなされた仕組みだということになる。

そして皮肉なことに、大多数の人々が理想的だと思っている
「一夫一婦制」の仕組みこそが、本能抑制効果という作用をもたらす一方、副作用として不自然な歪みを生じさせてしまい、さらには多くの男女間において、このような不均衡状態を解消する工夫が十分になされていないように思う。 


人間は理性を持った高等生物であるとされているが、本質を考えればしょせんは獣にすぎない。パンツを脱いで丸裸になれば、品行方正な紳士淑女もしょせんはただの動物だ。

だからこそ、「理性」という建前だけではなく、ときには「本能」にもしっかりと向き合って動物らしく生きる時間も必要なのではなかろうか?

情熱は長くは続かない――。

結婚当初は情熱的なカップルも、時間の経過とともに空気のような存在に変わっていく。

刺激的な恋愛感情は時間の経過とともに安心、落ち着き、そして愛着へと変化していく。

やがて、「情熱>愛着」の不等号が「情熱<愛着」に変わるとマンネリ化を引き起こし、それは安定感をもたらす一方で、新しい刺激を求めるようになる。

その刺激を配偶者にではなく、外の世界に求めて不倫に走る男女を多く見てきた私にとっては、もはや婚姻制度そのもののあり方を根底から見つめなおす時代になったのでは?と考えてしまうことがある。


以前も書いたように、結婚相手を選択する際、「
学歴」、「職歴」、「年収」といった世間体(ベンチマーク)を重視しすぎてしまい、「性的幸福を満たしあう」という、食欲・睡眠欲と並ぶ動物本来の基本的な欲求が軽視されがちになっており、本能レベルでの歪みが理性レベルでの不均衡を生み出し、結果として離婚率や不倫率を上昇させているひとつの要因になっているのだろうと思う(参考:「永久保有銘柄の選択について考える」)。

結婚は「相手」とではなく、「条件」でするものだ、ともいわれる。

とはいえ、人間は愛だけでは生きられない、かといってパンだけでは不十分だ。


理性を重視して慎重になりすぎてもよくないし、本能の赴くままに突き進むのもよくない。

何事もバランスを取るのは難しいものだ。

あくまでも私個人の考え方ではあるが、貞操について自由奔放すぎるのは賛否両論あるにせよ、少なくとも
食べ物の好みの話と同じくらい気軽に性の話ができるようなリベラルな環境であってほしい。

「産めよ、増えよ、地に満ちよ」と聖書の一節にもあるように、セックスは本来「陰」としての暗い側面だけではなく、「陽」としての明るい側面も持っているわけであり、決して汚らわしいものではない、と私自身は思っている。

恋人間、夫婦間、多くの方が大切な相手と寝室で真摯に向き合ってもらえたらと思う。

恥を忍びつつも恥と向き合いながら
...


*****


この記事はプロップファーム(自己勘定取引会社)に所属する女性トレーダーたちのパラメータ設定を検証していたところ、男性トレーダーたちと比較してリスクの取り方に僅かな差異があることがわかり、男女の本質の違いについて整理したものだ。本当はプロスペクト理論について詳しく書くつもりだったのだが、いつの間にか性的な内容に趣旨が変わってしまったようだ(笑)パソコンのローカルに保存しておくのも何だかもったいないのでブログに投稿することにした。

証券取引の基本原理は、
損失を抑えて利潤を最大化する「損小利大」の考え方が極めて重要な概念であると考えているが、男性トレーダーと女性トレーダーの「利益確定ライン」と「損切りライン」を比較したところ、以下のような結果となった。

「利益確定ライン」「損切りライン」
 男性  女性  男性  女性

女性のほうが、利益が出ていても粘り強く持ち続けられ、逆に損が出た時は損切りをするのが早い

具体的な数値等は業務上非公開とさせていただくが、「利益確定」については、男性よりも女性のほうが利益が出ている状況でも焦らずにポジションを持ち続けることができる傾向にあった。また、
「損切り(いわゆるロスカット)」については、男性がなかなか負けを認めようとしないのに対して、女性は早い段階で見切りをつけてポジションをクローズしてしまう傾向にあった。標本データが男性が8、女性が3しかないので統計データとしては不十分だが、女性のほうがプロスペクト理論に当てはまっていたため、「脳の上書き保存説」はまんざらではないのかと思った次第である...



(参考: 
ヘレン・フィッシャー(著)大野 晶子(翻訳)『人はなぜ恋に落ちるのか?―恋と愛情と性欲の脳科学』ヴィレッジブックス、2007年)
参考: 「クリストファー・ライアン(著)、カシルダ・ジェタ(著)、山本 規雄(翻訳)『性の進化論――女性のオルガスムは、なぜ霊長類にだけ発達したか?作品社、2014
参考: Steven Pinker(著)、椋田 直子(翻訳)『心の仕組み 上・下』筑摩書房 、2013
(参考: ゆうきゆう(著)たったひと言で心をつかむ技術』徳間書店、2007
(参考: 驚きの「性の進化論」のヒミツ」ダ・ヴィンチニュース)
参考: 実は本能のせいじゃない?男が浮気する真の理由を解明」中田綾美
参考: 男と女はなぜわかり合えないのか 週刊プレイボーイ連載(51)」橘玲
参考: 男女で見る恋愛&結婚観の違い 男の恋は「電子レンジ型」、女の恋は「オーブン型」TrinityWEB)
参考: なぜ女は、別れた男をスパっと忘れられるのかPRESIDENT Online)
参考: 「性について(本論)」カフェ・リザン)
参考: 「在庫はあといくつ?「卵子減少」を加速させる意外な理由」喜田直江)

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